企業の動向を知ることでエンジニアとして自分に合った活躍先が見えてくる
いま企業が求める「一緒に働きたいITエンジニア」とは? 【2021年:企業の採用担当者インタビュー企画・第3弾】
2021年11月17日 19時00分更新
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進があらゆる業界や企業において、かつてないレベルで必要とされている2021年。これまでの業務や商習慣をデジタル化させていくという不可逆と言ってもいい流れが進行するなかで、同時に発生する問題が「人材の不足」である。本年ASCII編集部ではIT人材不足という日本社会共通の課題へ注目し、実際問題として企業がどういう人材を欲しているのかを記事として取り上げている。
【連載第1回・第2回はこちらから】https://ascii.jp/serialarticles/3000834/
今回はその第3回として連載形式で、企業各社のエンジニア職採用担当者へITエンジニア人材の採用について尋ねたインタビューレポートをお届けする。それぞれ異なる特徴や魅力を持つ各社の考えや姿勢を、ITスキルやエンジニア経験を生かした就職・転職を考える方には是非お読みいただき、ご自身に合った企業選びや将来設計に活用いただきたい。
【取材先企業一覧】※掲載は取材順
株式会社セールスフォース・ドットコム:カスタマーサクセスに情熱を持てる方が自由にキャリアを築けることが魅力
セールスフォース・ドットコム(以下、セールスフォース)は、顧客管理ソリューションを中心としたクラウドアプリケーションやクラウドプラットフォームを提供する、米国に本社を置く企業。
現在は人材が足りていない状況で、新卒・中途どちらも積極的に採用を行っている。募集職種も幅広く、幅広いスキルセットで様々な人材を探している。企業のコアバリューとして、信頼・カスタマーサクセス・イノベーション・平等、を掲げており、こうしたマインドセットを持った人材がセールスフォースにあてはまる人材なのだという。
コロナ禍になって以降、経営者にとってのDXは「5年以内に選択して導入すればよいといった認識から、自社に今すぐ必須な存在へと意識が変わってきている」と、いわゆるポストセールス部門である同社のカスタマーサクセスグループでプロフェッショナルサービスを統括する李氏は言う。こうした意識の変化によってセールスフォースへの顧客の期待値は高くなり、DXやそれ以上に会社を変えていくことが求めてられている。このような状況下で、李氏が統括している部門では、コアバリューのなかでも、とくにカスタマーサクセスにパッションを持っている人材を特に求めているとのことだ。
ただDXという言葉も「顧客によってその単語の意味が若干変わってくる」と採用担当の古瀬氏。つまり顧客のニーズをきちんと理解し、どうアドバイスするか、アドバイザー的なコミュニケーションができるかどうかが、非常に重要になってくるとのこと。単純にテクノロジーだけではなく、ビジネスを理解した上で、顧客とコミュニケーションができる人材が必要。こうした職務をセールスフォースで担うための知識がたとえ入社時点でそこまでなくても、学ぶことに対してポジティブで、自分からプロアクティブに動ける人材であれば活躍できるとのことだ。
エンジニア希望の新卒採用者は、大学やインターンシップなどでプログラミングなどを経験した学生が多いようだ。ただ、入社してから学ぶことも可能なので、そこまでテクニカル面のスキルがないといけないわけではないとのこと。実際、取材時にオンラインで実施中だったインターンシップには、学生からの積極的な参加があると伺った。
中途採用者に向けては、定期的に採用ウェビナーを実施している。李氏によると、現在主流のクラウドで新しいテクノロジーを学んで、自分のキャリアアップにつなげたいといった志望を持つ人や、顧客にもっと近いところで仕事をしたいという人が、モチベーションを持って多く転職しているという。ぜひ採用ウェビナーに参加して、キャリアの選択肢としてセールスフォースを検討してほしいとのことだ。
新卒でも中途でも、IT業界では比較的少ないとされる女性でも、自由に自分のキャリアを作っていけるのがセールスフォースの魅力。希望があれば職種を変更することも可能で、国内だけではなく海外で活躍の場を得られるチャンスもある。「英語やその国の言葉が話せるのであれば、幅広くキャリアを描くことができる」と古瀬氏は語った。
都築電気株式会社:長い歴史を持つ企業だからこそノウハウや技術を学ぶことができる
都築電気は創業から89年という長い歴史を持つICT企業。現在、中期経営計画において「Innovation2023」を掲げている。顧客のDX対応や競争力強化を実現する「イノベーション・サービス・プロパイダー」を目指しており、エンジニア職の採用ニーズも高いのだそうだ。
求める人物像としては新卒・キャリアどちらの採用においても「7Actions」を体現できる人材。この「7Actions」とは「1.向き合う」「2.築く」「3.つなぐ」「4.挑む」「5.楽しむ」「6.支援する」「7.やり抜く」という、都築電気にとって大切な考えをまとめたバリュー(価値観・行動指針)なのだそうだ。
都築電気は顧客とのコミュニケーションを大事にしてきた企業で、顧客からの信頼はひとつの強みになっていると採用担当の堀田氏は言う。そのため人材採用の際もコミュニケーション能力や人間性を重要視。顧客以上に顧客のことを知り、本当のニーズまでしっかりと汲み取って、それを技術力によって提供できる人材であることを求めているとのことだ。
また顧客からの信頼を得るためには、任された仕事に対して最後まで責任を持って取り組めるかどうかも非常に重要であるとし、選考の際は是非アピールしてほしいとのこと。また技術に関しては、新技術に対して興味を持てるかが非常に重要な要素だとしており、堀田氏は「ICT業界は技術の進歩が非常に激しいため、新しい技術がどんどん生まれてくる。その新技術が世の中にもたらす影響力について、考えを持っていてほしい」と志望者への期待を述べた。
新卒採用では、春から冬まですべての時期にインターンシップを実施している。特に理系の学生に向けた技術職の回では、現場社員も説明に加わるため、会社や事業への理解をより深めることが可能だ。近年ではオンラインでの実施になった影響もあり、地方からの参加も増えてきているという。
キャリア採用では、システム系とネットワーク系のエンジニアを募集強化している。これら職種は常に現場から求人を求める声があるため、ほぼ通年で採用活動を実施しているとのことだ。
都築電気では、創業89年という長い歴史とこれまで培ってきたノウハウや経験があるからこそ、既存の技術から最新の技術まで幅広い技術を学ぶことができる。上流から下流まで幅広く対応するので、顧客との企画立案から構築や施工、メンテナンスまでワンストップでひとつの案件に携わることができるのも、技術者としては魅力を感じる要素になると言えそうだ。
NTTコミュニケーションズ株式会社:プロダクトで社会に貢献していくためにビジネスへと結びつけて考えられる人材を求めたい
NTTコミュニケーションズは、ICTサービスやソリューションを提供する通信系のシステムインテグレーター。創立20周年にあたる2019年に、企業理念を刷新した。それと同時に技術顧問を迎え、「世の中に価値を届けられるプロダクトを創造するには、ビジョンが何よりも大事だ」という考えを社内に浸透させているところだという。そのような中エンジニア人材のニーズは年々増しているとのことだ。
毎年実施している新卒採用については、採用者の多くは職種別ではない総合職として採用しているが、そのうち一定数の人材を専門コースで採用するように。専門コースとは今年入社の社員から設置された、入社後の初期配属が確約している選考コースのこと。今年入社の社員はエンジニア系の職種がメインだが、来年入社の社員は財務分野や法務分野にも拡大しているのだそうだ。
中途採用は幅広い職種で募集しており、採用計画数は直近3年で約3倍に伸びたという。採用コースとしてはスペシャリスト採用と第二新卒的な採用と2つ設けられており、大半の中途採用はスペシャリスト採用。その中でも採用に力を入れているのは、デザイナー系とデータサイエンティストなのだという。
新卒同様、第二新卒に関しては、ポテンシャルを見る。一定期間他社での就業経験があり、社会人として必要な基礎知識を持っているため、ITスキルさえ習得すればNTTコミュニケーションズで活躍できるという人材を基本的に採用している。スペシャリスト採用は、即戦力として活躍できる人材というのが基本だ。求めるスキルを明確に記載して募集している。
NTTコミュニケーションズは社会貢献性の高い企業であり、新卒・中途いずれでもその点に共感して応募する人が多いのだという。また企業側としても社会貢献という視点を持った人材を求めているとのことで、採用担当の野村氏は求める人物像について「黙々と作業をしていくことが好きだとか、自分の成長だけができればよいとか、そういうマインドだと当社にはあまり合わないのではないか」と言う。また、さまざまな働き方ができる企業であるという点に、中途採用では魅力を感じて転職してくるケースも多いとのことだ。
ただ、社会貢献は確かに重要でNTTコミュニケーションズにとってのキーワードではあるものの、あくまでそれをビジネスとして結び付けて、売上や収益を生むことへつなげられるかどうかが企業としては必要なことだと、採用担当の野村氏は語る。また、高い専門性や技術力を持っていることも重要だが、それが世の中でどう役に立つのかという発想を志望者には持っていてほしいとのこと。育成担当の川端氏は「社会貢献的なビジョンに加え、未知のことへの興味や、経験から学び取ろうとする力があれば、即戦力としてのスキルや技術力を持っていなかったとしても、入社してから学べる環境は十分にある」とコメント。世の中に価値を届けていくということに共感してもらえる人材に是非来てほしいとのことだ。
三井情報株式会社:ICT技術への関心から中長期的のスパンで幅広くキャリア形成していけるチャンスに恵まれた企業
三井情報は、親会社である三井物産以外にも幅広くITサービスを提供している企業。そのため事業領域が広く、キャリアの選択肢も多い。現在、事業を拡大中で、新卒採用・キャリア採用ともに、多くの仲間を増やすべく、採用活動を行っているとのこと。
毎年コンスタントに採用している新卒枠に加え、現在はキャリア採用へ特に力を入れており、今年度も多くの採用人数を計画している。近年、地方拠点のエンジニア不足が課題となっているが、コロナ禍により、採用活動もオンライン化したため、全国からの応募が増えているのだという。
新卒採用では、スキルや技術よりも、人物像を重視。大学時点で何ができるかということよりも、学んでいく姿勢や、今後どう成長していきたいかという考え方の方が重要だと新卒採用担当の荻久保氏は言う。スキルや技術に関しては、入社後しっかり育成していく風土があるという。ただし、近年力を入れているバイオインフォマティクスに関しては、入社後新たに学ぶのは難しく、専門領域の知見が必要なので、職種採用ということで枠を設けて、2023年4月からの採用活動をしていく予定だ。
キャリア採用では、求める人材は多様そのもの。ネットワーク系エンジニアを始め、先述のバイオやIoT、ERP、音声、アプリケーション、サーバなど、様々な領域でエンジニアを求めている。また配属先や企業風土とのフィット感を高めるため、複数部門で面接をし、複数の視点でマッチングをはかる工夫もしているとのこと。応募者にとっては、チャンスがひとつの求人につき一度だけではないということでもあるようだ。
求める人物像は新卒・キャリア共に「最新の技術に興味関心を持って、自分で積極的にアンテナ張って取り込んでいくような人」であると人材開発室室長の小松氏は語る。三井情報では「自律的なキャリアを作っていこう」というのがひとつのキーワードになっており、自分のコアスキルは何で、入社後どうなっていきたいのかをしっかりと持った人材が、キャリアを磨いていくことができるのだという。さらに、VUCA時代、急速に進化し続ける技術に対応するため「今のスキルだけではなく、その先の10年後、20年後に向けた成長意欲やマインドも大事にしている」とキャリア採用担当の工藤氏。そのための環境として育成制度やワークスタイルなども充実させているそうだ。コミュニケーション力は大前提として採用時に確認しているが、技術部門ではフロント・ミドル・バックの三領域になっており、領域によって求められるコミュニケーション力も変わってくるので、それぞれの人材に合った部門への配属をするということだ。
即戦力とよく言うが、三井情報では短期的な活躍だけ見ず、長期的に会社の中で活躍できる人材を採用し、長期的に活躍できるよう育成の環境も整えていると小松氏は言う。三井物産が親会社であることで、世界を舞台にさまざまなチャンスがあるので、それを使ってやろうという気概で入社してきてほしいとのことだ。
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