マツダ「ロードスター」のオーナーにとって、毎年恒例の一大イベントが「軽井沢ミーティング」です。名前の通り、軽井沢の地に全国からロードスターのオーナーが集うイベントで、例年は5月末の週末に開催されましたが、今年はコロナ禍の影響もあって10月24日に日程を変更。参加台数も約800台に絞っての開催となりました。しかし、そんな軽井沢ミーティングで、ロードスター・ファンを喜ばせるサプライズがあったのです!
それが特別仕様車「990S」です。
いきなり登場した超軽量ロードスター
これは年末に正式発表が予定される特別仕様車ですが、ロードスター・ファンのためにマツダが特別に展示したというもの。もちろん、ただ現物があるだけでなく、ロードスターを開発する主査、斎藤茂樹氏による説明もありました。
そこでわかったのは、ベースとなったのは現行モデル(ND型)の中で、最も軽量な「S」グレードということ。それを、さらに軽量化して、名称のとおり「990kg」にしたというのが、この特別仕様車「990S」です。
「やはり、ロードスターの本質は軽さです。これは歴代の主査も開発する上で肝心かなめなところだと言っていました。その軽さをもう一度、スポーツカーファンのみなさんに確認してもらいたいなという意味を込めています。本当に運転していてピュアに楽しいクルマを提供したいと思って、これを開発しました」と斎藤主査は説明します。
ベースグレードと異なる部分は、エクステリアやインテリアだけでなく、足回りまで幅広いものとなります。
エクステリアで目に付くのが、落ち着いたネイビーの幌の色。これが「990S」の専用のカラーとなります。これと同じブルーが、室内のエアコンルーバーの差し色やフロアマットの柄と文字に使われています。
バネ下重量を徹底的に軽量化した
軽量化として実施された変更は、ホイールとブレーキです。ホイールはレイズ製の鍛造品で1本あたり約800g軽くなり、合計で約3.2kgの軽量化となります。ブレーキはブレンボ製に。キャリパーは黒くなって、ブレンボの文字も幌と同じブルーになっています。ブレンボのブレーキにするとキャリパーとローターが大きなモノとなります。ただし、キャリパーの素材が鋳鉄からアルミになるため、ブレーキ・トータルでは約0.7kgの軽量化となります。つまり、軽量化されたのは、ホイールとブレーキ、いわゆるバネ下と言われる部品です。一般的に「バネ下の軽量化は、バネ上の10倍の効果が運動性能に及ぼす」とも言われます。つまり、「990S」の軽量化の数値は、それほど大きなものではありませんが、運動性能に関して言えば、相当に良い効果が期待できるというわけです。
また、「990S」は、バネ下の軽量化にあわせて、パワーステアリング、サスペンションのスプリングとダンパーの減衰力も専用に調整されています。さらに新規に「車両姿勢安定化制御」も導入されているのも特徴です。これは、ロードスターがもともと持っている「アンチジオメトリーサスペンション(リヤブレーキを効かせると、車体が沈み込むようなサスペンション配置)」という特性を利用したもの。コーナーリングで0.3Gを超えるGがかかると、リヤの内輪のブレーキをわずかに作動させて、車体を引き下げます。これにより、コーナーリング中の後輪の接地性が高まり、安定して走行ができるというのです。
ちなみに、このクルマにはLSDは装着されていません。
「オープンデフがいいんです。LSD付きとなしを乗り比べると明らかにフィーリングが違います。オープンデフは特にコーナーリングの進入が自然なんです。とにかく、このクルマは家の周りを普通に乗って楽しいというのが最大のコンセプトで、ターンインのフィーリングを非常に大切にチューニングしています」と斎藤主査。
街中では軽快な走りが楽しめ、ワインディングでは車両姿勢安定化制御があるので、安心して走れるというのが「990S」のようです。
価格などは年末の正式発表まで不明ですが、実のところディーラーに行けば価格もわかって、なんと予約もできるとか。気になる人は最寄のディーラーに問い合わせてみるのが良いのではないでしょうか。