本連載は、マイクロソフトの「Microsoft 365」に含まれるSaaS型デスクトップ&Webアプリケーション(以下、アプリ)「Microsoft 365 Apps(Office 365)」について、仕事の生産性を高める便利機能や新機能、チームコラボレーションを促進する使い方などのTipsを紹介する。今回はオンライン動画編集ツール企業の買収に注目した。
すべてのインフォメーションワーカーに必要な動画編集能力
Microsoftは現地時間2021年9月7日、Clipchamp(クリップチャンプ)の買収を発表した。Clipchampは2013年にオーストラリアで創業した同名企業のオンライン動画編集ツールである。同社が発表したデータによれば、全世界で1400万人以上のユーザー登録数を数えるという。2021年4月にはChromebookアプリ版の提供を開始し、Googleも「Chrome OSでサポートしているドラッグ&ドロップ機能は、ファイルアップロードを20秒/1ユーザーあたり節約できる」とプラットフォームとしての優位性を強調している。
ClipchampはスマートフォンやPCのカメラで撮影した映像や録音した音声、楽曲をアップロードし、各トラックに配置することで動画編集を行うSaaS型の一般的な動画編集ツールだ。10万を超えるストック映像&楽曲を配置することで、動画の品質を高められる。有償アカウントに切り替えれば、OneDriveなどのローカルはもちろん、クラウドストレージに動画ファイルを出力することも可能だ。正直に述べれば、動画編集はパワフルなローカルPCで実行するのが常、だと思い込んでいた筆者からすれば隔世の感があるものの、クラウドからOSを実行するWindows 365のような存在を踏まえると、Clipchampのようなサービスが成立するのも至極当然なのだろう。
Microsoftは先の公式ブログで「あらゆるタイプのインフォメーションワーカーは、最小限の労力で素晴らしいビデオを作る能力を必要としている。10秒のソーシャルメディア広告、製品の(概要を紹介する)2分間のピッチ、または20分の説明ビデオでも、ClipchampとMicrosoftは必要なツールとエクスペリエンスを提供する」と述べている。現在のWindows 10で動画編集を行う術は「フォト」しかなく、充実しているとはいいがたい。ClipchampをMicrosoft 365の一機能とすることで、機能強化を図る手段を選択したのだろう。
Clipchamp CEO兼共同創業者のAlexander Dreiling氏は今回の買収に関して、「エグジットイベントはスタートアップ企業の『旅の終わり』だが、同時に『新しい旅の始まり』である。Microsoftほどレガシー(遺産)とリーチ(伝達範囲)を持つ企業はいない」と公式ブログで歓迎の意を表している。現時点でMicrosoftは、ClipchampとMicrosoft 365 Appsの連携方法を明らかにしていないが、たとえばPowerPointであれば「メディア」セクションを拡張し、「ビデオ」から選択可能な項目として追加されるのだろう。本件に関してはOffice Insiderで利用可能になった時点で改めてご報告する。
この連載の記事
-
第61回
Team Leaders
「Copilot for Microsoft 365」のダッシュボードが登場 -
第60回
Team Leaders
生成AIに“本気”なMSが進める「Copilot for Microsoft 365」のアップデート -
第59回
Team Leaders
中小企業にも開放されたMicrosoft Copilot for Microsoft 365 -
第58回
Team Leaders
ハイブリッドワーク時代にデータ漏えいを防ぐ「アイドルセッションタイムアウト」 -
第57回
Team Leaders
ファイル共有ハブへと進化するOneDrive 3.0 -
第56回
Team Leaders
ExcelとPythonが融合! 「Excel in Python」 -
第55回
Team Leaders
プレビュー版でも使えるBing Chat Enterprise -
第54回
Team Leaders
Microsoft 365から特定アプリ(コンポーネント)を除外する -
第53回
Team Leaders
Microsoft 365に加わった新配信チャネルの役割は新機能検証用? -
第52回
Team Leaders
Build 2023で発表されたMicrosoft 365の新機能 -
第51回
Team Leaders
AIによる支援が加わったMicrosoft DesignerはSNS向けソリューション? - この連載の一覧へ