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PCなしで驚愕の5K/90Hz!「VIVE Focus 3」はスタンドアローン型VR HMDの超進化系

2021年06月15日 11時00分更新

文● 高橋佑司 編集● ASCII

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 HTCは5月12日、「VIVE Pro 2」および「VIVE Focus 3」という2種類の新型VRヘッドマウントディスプレー(VR HMD)を発表した。VIVE Pro 2は、PCに接続して使用する、いわゆるPC VRのVR HMD。初代VIVEの頃から一般的な、グラフィック描画などの処理をPC側で行なうモデルだ。

 一方のVIVE Focus 3は、VR HMD単体で使用できるスタンドアローン型のモデルとなる。スタンドアローン型のVR HMDは、PCに接続しなくてもVRコンテンツが楽しめるため、高価なゲーミングPCを用意しなくてもいいほか、セットアップが簡単といった利点がある。

 HTCが2018年に発売した最初のスタンドアローン型VR HMDである初代VIVE Focusや、その後に発売した後継機のVIVE Focus Plusは、当初ビジネス用途のエンタープライズ向け製品として発売した。しかしVIVE Focus Plusでは後にコンシューマー向けのセットモデルが発売されることとなり、HTC製のスタンドアローン型VR HMDが一般消費者の手に届くようになった。

 今回のVIVE Focus 3は、基本はエンタープライズ向けに展開しており、主にビジネス向けのアプリを展開しているが、一般のコンシューマーでも購入は可能。今回、そんなVIVE Focus 3を体験することができたので、どういった製品なのか紹介していこう。

スタンドアローンとしては破格の5K/90Hz

 まず取り上げるべきVIVE Focus 3の大きな特徴といえば、やはりディスプレー解像度とリフレッシュレートだろう。前世代のVIVE Focus Plusは、片目あたり1440×1600ドット(両目2880×1600ドット)、リフレッシュレート75Hzというスペック。

 対するVIVE Focus 3は、片目2448×2448ドット(両目4896×2448ドット)と、5K相当の解像度を実現している。リフレッシュレートも90Hzと向上しており、スタンドアローン型としては最高峰のスペックを誇っている。ライバルとなるOculus Quest 2が、両目3664×1920ドット、通常リフレッシュレート72Hzであることを考えると、かなりのハイスペックであることがわかる。

 ちなみに、VIVE Pro 2も同様の5K解像度のため若干見劣りするように感じるかもしれないが、PC VRであるVIVE Pro 2はPCに搭載されたハイパフォーマンスのCPU+GPUでレンダリングを行なう分、小型のSoCだけでレンダリングするスタンドアローン型のVIVE Focus 3よりも3Dモデルの描画クオリティーを高く保てるとともに、120Hzというより高いリフレッシュレートに対応する。そのほか、VIVEトラッカーなどのアクセサリーを使用できるといった部分に利点がある。

スタンドアローン型で5K/90Hzという、PC VR用のVR HMDと比較してもハイスペックな内蔵ディスプレー

 VR HMDでは、解像度が低い場合にディスプレーのドット間の隙間が格子状に見えてしまうスクリーンドア効果などがあるが、5Kともなるとそうした映像面の不満はほぼ感じられない。

 視野角は120度。VIVE Pro 2の体験レポートでも紹介したが、一般的に人間の両目で見られる視野角が120度ほどとされる。つまり、普段自分が見ている景色との違和感が小さくなっていることで、より没入感を感じられるつくりになっていると言えるだろう。

 搭載されるSoCは、QualcommのXR向けプラットフォーム「Snapdragon XR2」を搭載。5Gや、8K 360度動画の再生などにも対応可能とされているモデルだ。高性能なSoCではあるが、その分発生する熱も大きいため、VIVE Focus 3ではクーリングシステムを一新。

 内部に独自のヒートシンクを搭載するとともに、エアフロ―を循環させるファンも搭載することで、冷却性能を高めている。

上下に通気口があり、内部のファンでエアフロ―を作り出して冷却している

 なお、Snapdragon XR2のRAMは8GBだが、SDカードスロットを搭載しているため、ストレージは最大2TBまで拡張できる。

取り外し可能なフェイスパッドの下に、SDカードスロットを備えている

 コントローラーも含めて6DoF(自由度)対応のため、上下左右、回転、奥行きを外部センサーに頼らず認識でき、さまざまなアプリで快適な操作が可能。なお、リリース当初は対応していないが、今後ハンドトラッキング(コントローラーを使用せず、手の動作だけで操作)にも対応予定とのこと。

コントローラーは6DoF対応。形状はOculus Quest 2のものとほぼ同じ

バッテリーを取り替え式に

 VIVE Focus 3はVR HMDとして純粋なパワーアップを遂げていることがわかるが、それだけでなく、着用時の快適性や性能を安定させるための設計にも大いに工夫が凝らされている。

 まず快適性の面で見ると、後頭部の位置に搭載されたバッテリーの進化が特徴的だ。従来のスタンドアローン型VR HMDは、ディスプレーやSoCを含めたほぼすべてのパーツを前部に搭載しているものが多かった。こうした製品の場合、重さが前に集中して重心が傾いてしまい、長時間着用するとフェイスパッドが当たる頬骨のあたりが圧迫されて、痛みを感じるような場合があった。

 VIVE Focus 3は、バッテリーを後頭部側に設置することで、重さを前後に分散し、重心が一方に傾かないように設計している。これにより、顔に痛みを感じにくく、前後の負荷が一定になることで首への負担も少ない。長時間の着用も、ほかのVR HMDに比べて苦にならないデザインだ。

バッテリーを後ろに持ってくることで、重心を中央部に保ち、装着時のバランスがいい

 また、バッテリーが取り替え可能になったのも大きなポイントだ。スタンドアローン型VR HMDは、重量の兼ね合いで大型のバッテリーを搭載するのが難しいにも関わらず、ゲームを動作させて映像を出力するので消費電力はそれなりに大きくなってしまう。そのため駆動時間は決して長くはなく、前世代のVIVE Focus Plusではフル充電で最大3時間程度だった。

 バッテリーが切れるたびにいちいち充電するのはコンテンツを遊ぶ上ではストレスだし、かといって常に充電ケーブルをつないでおくというのはせっかくのスタンドアローン型の動きやすさを妨害してしまう。

 そこでVIVE Focus 3では、バッテリーを交換できるようにデザインされた。VRコンテンツプレイ中、ほかのバッテリーを充電しておくことで、バッテリーが切れても瞬時に交換できるというわけだ。

後ろのクッションを外すと、バッテリーを取り外して交換できる

 バッテリーを内蔵する後頭部のクッション部分はマグネット式で簡単に取り外せるようになっており、交換は非常に簡単。1つあたり2時間程度の持続時間とのことだが、複数のバッテリーを用意しておけば、スタンドアローン型VR HMDでも、VRコンテンツを絶え間なくプレイできる。バッテリーは、急速充電なら30分で50%充電が可能とのこと。

バッテリーの残量は、右上のインジケーターで確認可能

なお、ヘッドセットに装着したままでも、直接ACプラグを差し込んでバッテリーを充電できる

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