引き続きエンジン周りをバラしていきます
地面にできていたシミを見つけたのをきっかけに、オイル漏れが判明したハンヴィー。いつもメンテナンスでお世話になっている埼玉のスカイオートに駆け込み、ボンネットフードを外してチェックしてもらった結果、エンジンオイルだけでなくエンジンを冷やすためのクーラント(冷却水)と燃料も漏れていることがわかりました。
ハンヴィーのエンジンは後半がキャビンの中に食い込むほど後ろにオフセットされていて、手前にはデカいラジエーターがあります。エンジンのメンテナンスをしようと思ったらこのラジエーターが超邪魔。
ということで、前回(第282回「米軍車両ハンヴィー、過去最大の重整備のためドック入りに」)はそのあたりにあるラジエーターやパワステオイルクーラー、風をクーリング・ファンに送るシュラウドなどを外し、見えてきたエンジンからさらにファンとファンを固定するカップリング、プーリーを取り外しました。
今回はその続き。ファンの後ろにあるウォーターポンプを外していきます。
クーラントをバイパスさせるホース
ウォーターポンプはクーラントを循環させるポンプで、オーバーヒートを防ぐ重要なパーツです。上部に2本のホースがつながっているので、まずはこれを外します。
向かって右のホースはサーモスタットバイパスホースというもので、サーモスタットが閉じている時にクーラントが通るホースです。
サーモスタットは温度によって開いたり閉じたりするバルブで、クーラントの水温が低い時には閉じるようになっています。エンジンの熱を奪って温度が上がったクーラントはラジエーターで冷却されてまたエンジンへと向かいますが、サーモスタットが閉じていると、このラジエーターに行く水路が遮断されます。
それで行き場のなくなったクーラントがどうなるかというと、このサーモスタットバイパスホースを通ってエンジンに戻っていくのです。つまりクーラントは温度が高いまま循環するということに。
なぜそんな仕組みになっているかというと、エンジンはとにかく冷やせばいいという物ではなく、冷え過ぎても正常に動作してくれないためです。
クーラントには適正温度があって、ハンヴィーの場合は190-230°F(88-110度)。エンジンが冷えている=クーラントが冷えている時はできるだけ早くその温度まで上げる必要があるので、ラジエーターを使わないようになっているのです。
ハンヴィーのサーモスタットは、エンジンが温まってきてクーラントが190°F(88度)になると開き始め、212°F(100度)に達すると全開となるように設計されています。
ヒーターにつながるホースも外します
もう1本、左側にあるのはヒーターホース。暖房のヒーターコアから戻ってくるクーラントが通るホースです。
ヒーターコアというのは小さいラジエーターのような機器。エンジンで熱せられたクーラントが中を通っていて、ここにブロアー・ファンというファンの風があたり、温められた空気が車内に送られるようになっています。エンジンの動作中にラジエーターの後ろ側から熱風が出てくるのと同じですね。
本来は捨てられる熱を再利用するという頭のいいシステムです。一般的なクルマのエアコンも暖房はヒーターコアを使っていて、冷房装置を組み合わせてエアコンとしています。
ヒーターコアを通ることで冷やされたクーラントはラジエーターからのクーラントと合流してウォーターポンプへと戻っていきます。
このあとの作業でこのサーモスタットバイパスホースとヒーターホースが邪魔になるので、固定しているバンドを緩めて外します。
カバーを外すとギヤが出てきます
次はエンジンオイルの注油口。ウォーターポンプの上にある黒いパイプが注油口で、これも邪魔なので取り外します。
注油口が取り付けられていた所にポッカリと穴が開きました。この部分はアダプタープレートという部品で、燃料ポンプを駆動する燃料噴射ポンプギヤのカバーになっています。ウォーターポンプはこのプレートに取り付けられているので、ウォーターポンプごとアダプタープレートを外します。
アダプタープレートを外すと2つのギヤが見えます。上にあるのは燃料噴射ポンプギヤで、下にあるのはそれを回転させるためのギヤ。ポンプドライブギヤといいます。
ポンプドライブギヤの後ろにはタイミングギヤというギヤがあって、2つ一緒にカムシャフトにはめ込まれています。さらにタイミングギヤはクランクシャフトにチェーンでつながっているため、燃料噴射ポンプとカムシャフト、クランクシャフトは連動して動きます。
カムシャフトは吸排気のバルブを開閉するためのカムで、クランクシャフトはピストンの上下運動を回転運動に変えているもの。つまり燃料噴射とバルブの開閉、ピストンの上下運動はタイミングを合わせて動作していて、その伝達を行なっているのがこの部分ということになります。
ここから漏れていました
ギヤが入っているケースはタイミングギヤカバーと呼ばれます。各ギヤの動作タイミングがズレていると異常燃焼を起こしてしまうことがありますが、今回の修理はそこではありません。問題は中身ではなく外側。アダプタープレートとタイミングギヤカバーの方です。
アダプタープレートを外すと、タイミングギヤカバーの下の方が変色していました。特にヤバそうなのは左下。穴の右下に向かって変色が広がっているのがわかります。
これはクーラントとオイルが流れた跡です。ここから漏れていたということですね。アダプタープレートとタイミングギヤカバーの間のシールは専用品ではなく液体ガスケットを塗るようになっているんですが、経年劣化で隙間ができてしまったのが原因のようです。幸い、アダプタープレートやタイミングギヤカバーが歪んだり欠けたりといったことはなさそうでした。
外したアダプタープレートはこびりついた古い液体ガスケットを剥がして洗浄します。あとは合わせ目に液体ガスケットを塗って元どおり組み直せば完了なのですが、せっかくここまでバラしたので、この状態じゃないと確認できないポイントをチェックしてもらいました。
また、派手に漏れてはいないものの、燃料が染み出している燃料タンクもなんとかしたいところです。次回はそのあたりを!
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