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空間オーディオでApple Musicの何が変わるのか〜All About Apple Music

アップルがハイレゾより空間オーディオを推す理由

2021年06月10日 12時00分更新

文● 本田雅一 編集●飯島恵里子

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かつてのマルチチャンネルオーディオとの違い

 立体音響技術を音楽コンテンツで活用する試みは、これまでも幾度となく行われてきた。古くはアナログレコードで4チャンネル再生を実現する技術が流行ったことがあり、またSACDやDVD-Audioには5.1チャンネルオーディオの規格があった。ブルーレイをオーディオ向けに応用する試みもあった。

 しかし、どれも長続きしないか、あるいは小さな市場にとどまった。理由は製作コストなどの問題もあったが、聴ける環境が限られていることに加えて、肝心のアーティストや製作関係者の意欲を高めるほどの魅力がなかったというのが大きいだろう。

 だが、今回はある程度、普及するのではないかと期待している。

 空間オーディオと同様のアプローチをソニーが360 Reality Audioで数年にわたって培ってきた下地もあるのだろうが、サラウンドにミックスするというよりも、録音トラックやサウンドエフェクトを三次元空間に配置しながら、アーティスト自身が音場デザインを作品の一部としていく方向なのが新しい。

 実際に配信されている楽曲も、ヘッドホンでの視聴を意識しているためだろう。無理に音場を広く聴かせるのではなく、自分自身が演奏チームの中に入り込んで体感するようなアレンジや、さまざまな音が自分を取り囲み、左右の広がりだけではなく、音源への距離や上下の角度を工夫しながらデザインされている楽曲が多かった。

 またクラシック音源では、オーケストラの指揮者の位置に立っているように感じさせるものもある。スピーカーでの視聴だけでなく、ヘッドホンでの視聴が増えている昨今のトレンドを考えれば、新しい表現方法としてどこまでアーティストが関心を持つのか。しばらく様子を見ながら楽しんでいきたい。 なにしろ追加料金は無料なのだから。

 

筆者紹介――本田雅一
 ジャーナリスト、コラムニスト。ネット社会、スマホなどテック製品のトレンドを分析、コラムを執筆するネット/デジタルトレンド分析家。ネットやテックデバイスの普及を背景にした、現代のさまざまな社会問題やトレンドについて、テクノロジ、ビジネス、コンシューマなど多様な視点から森羅万象さまざまなジャンルを分析する。

 

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