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空間オーディオでApple Musicの何が変わるのか〜All About Apple Music

アップルがハイレゾより空間オーディオを推す理由

2021年06月10日 12時00分更新

文● 本田雅一 編集●飯島恵里子

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空間オーディオを楽しむために用意された仕掛け

 さて、ではApple Musicで配信が開始された空間オーディオを楽しむためには、どんな環境が必要だろうか。音楽コンテンツなのだから、あれこれ考えるよりも、実際に体験する方が手早いだろう。

 Apple Musicで配信されている空間オーディオはドルビーアトモス形式であるため、この形式を直接再生できる環境を持っている人は、アップルデバイスを再生装置に接続することで楽しめる。

●ドルビーアトモス対応機器を持っているなら
 具体的にはMacやApple TVのHDMI端子からケーブルでドルビーアトモス対応AVレシーバやATMOS対応サウンドバーなどに接続すれば、空間オーディオを再生可能だ。

 ちなみに手元にあったUSB-CからHDMIへの変換アダプタで接続すれば、Macからのドルビーアトモス出力はできたが、iPad ProのUSB-C端子からはステレオ音声しか出力できなかった。これがiPadの制約なのかどうかは現時点では不明だ。

 実際に筆者のAVシステムに接続すると、空間オーディオで配信されている楽曲をATMOSの7.1.2システムで楽しむことができた。既存システムのオーナーにとっては、追加コストなしに立体的に作り込まれた楽曲を、Apple TVかMacを接続するだけで追加料金なしに楽しめるのだから、かなりお得な印象だ。

 しかしほとんどのリスナーは、ドルビーアトモスに対応したサラウンド再生環境を持っていないだろう。

●アップル製品+アップル技術の入ったワイヤレスイヤホン/ヘッドホン
 昨年秋に、空間オーディオがAppleTV Plus向けに登場した際にはAirPods Pro、AirPods Maxのみで空間オーディオを楽しめていたが、この仮想立体音響の技術を用いてアップル製品(Mac、iPhone、iPad、Apple TV)とアップル製チップを内蔵するヘッドホンやイヤフォンを使って空間オーディオで製作された音楽を楽しめるようになった。

 Apple Musicの配信開始に合わせて、アップルのW1、H1(それぞれワイヤレスイヤホン、ヘッドホン向けチップ)を使ったアップルおよびBeatsブランドのイヤホンに対応機種が拡大されたのだ。

対応している曲を聴いている場合、コントロールセンターから空間オーディオのオン/オフを変更できる

 オン/オフはコントロールセンターから簡単にできるので、聴こえ方の違いを楽しんでみるといいだろう。ただし、当然ながら再現性や音質はそれぞれのヘッドホン、イヤホン次第。アップルではAirPods Maxを推奨しているが、筆者が所有している製品の範囲内では、AirPods、AirPods Pro、Powerbeats Proでも十分な効果を感じられた。

 ただし、ひとつ違和感を覚えた点がある。

 それは音楽を聴く際にも、インテルプロセッサ搭載Mac以外ではヘッドトラッキングが働いてしまうことだ(Apple TVでもヘッドトラッキングは効くが、歩いているときには機能が自動的にオフになる)。

 ヘッドトラッキングは映像を楽しむ際には良いのだが、音楽を楽しむ際には問題になる。例えば再生しているiPhoneを机の脇に置くと、そちらからボーカルが聴こえてしまう。お尻のポケットに入れて散歩しながら楽しむ際にも違和感を覚えるだろう。音楽再生時にはヘッドトラッキングが無効になるなどのオプションが欲しいところだ。

●アップル製品+他社製イヤホン/ヘッドホン
 アップル製以外のイヤホン、ヘッドホンの場合、どのような特性なのかが把握できないため、自動では空間オーディオが再生されない。しかし強制的にオンにすることはできる。機能設定で「ミュージック」を選び「ドルビーアトモス」を「常にオン」に切り替えることで、アップル製以外のイヤホンでも空間オーディオを試すことができた。

 ソニーのWH-1000XM3、WF-1000XM3、ノーブルオーディオFalon 2、Falcon Proなどで試したところ、違和感なく空間オーディオを体験できている。厳密には想定外の音場になってる可能性もあるが、手元の機材でいえば想像以上にアップル製イヤホンとの違いは感じない。

 なお、他社製イヤホンではヘッドトラッキングは行われないので、デバイスを正面に置いておく必要はない。アップル製イヤホンを持っていない場合、まずはこの方法で試してみるといい。確認のため、有線イヤホンを使ってみようと外部DACに接続してみた。OPPOのHA-2SEにカスタムIEMのFitEar Titaniumという組み合わせで聴いてみたが、アップル純正の組み合わせを凌ぐ音質とサウンドステージの広さ。特に空間オーディオに最適化したイヤホンではなくとも、高品位な製品であればさらに良い体験が得られるようだ。

 Macからハイエンドヘッドホンアンプに接続し、高級ヘッドホンで聴くとさらに良くなりそうな予感だ。ヘッドホン好きの方はぜひ試して欲しい。ストイックなハイレゾオーディオの世界とは異なる価値観で生み出される世界を感じられるはずだ。

●Mac内蔵スピーカー
 イヤホンでの空間オーディオ再生の扱いはiPhoneなどと同じだが、内蔵スピーカーでの空間オーディオ再生は例外を除いて次期macOSからの対応になる。またハードウェアも限定されており、2018年以降に発売されたMacの内蔵スピーカーのみだ(モノラルのMac miniはサポート対象外と考えていいだろう)。

 唯一の例外は24インチiMacで、こちらは発売した時点で空間オーディオに対応しているため、そのまま再生すればいいだけだ。

 なお音楽再生時だけではなく、Apple TV+のドルビーアトモス音声も空間オーディオで再現されるがヘッドトラッキングが機能するのはM1搭載Macのみとなる。

 2018年以降といえば、アップルがMacにT2チップを内蔵させた時期と重なる。T2チップにはスピーカーの音響調整機能が盛り込まれていたため、このDSPを使って仮想立体音響を実現しているのかもしれない。

●Android端末
 Android向けApple Musicアプリにもロスレス配信は開始されているが、空間オーディオの配信は行われていない。前述したような仮想立体音源を実現するための仕組みがAndroid向けには提供できないためだが、アップルは「まもなく」Android版でも空間オーディオが再生可能になるとアナウンスしている。ただし現在のところ、どのようにして実現するのかは明らかではない。

 アップルの仮想立体音響技術は、おそらくある世代以降のiPhoneで使われているDSPの上で動いていると予想している(Macでのサポートが2018年以降ということとも符合する)が当然、そうした信号処理回路は他社端末には内蔵されていない。

再生方法としては
 ・Android端末に接続されているドルビーアトモス対応機器に出力
 ・Android版Apple Musicアプリに仮想立体音響技術を移植する(ただし電力消費などの問題はありそうだが)
 ・他社の仮想立体音響技術に対応する(例えばソニーの360 Reality Audio)
 などが可能性としてはあり得るだろう。

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