Googleマップ拡張から見える「現実とネットの導線」強化
最後が「マップ」だ。前出のMUMも、地域に関する情報を呼び出すためにとても重要な要素だが、それに加え、地図情報はやはり、移動するための一つの起点である。Googleマップについては、3月に今後の方向性についての取材記事「グーグルが語る「2021年のGoogleマップ」屋内ナビや3Dマップなど新機能」をASCII.jpに掲載しているが、その延長線上としてさらにいくつかの発表が追加されている。
よりエコなルートを表示する「エコフレンドリー・ルート検索」や「屋内でのライブビュー」導入などは予定通りだが、新しく、面白い要素はそれ以外にもいくつもある。どれも今後数カ月以内にiOSとAndroidのGoogleマップに導入される予定だ。
例えば「事故の危険性を下げるマップルート表示」。過去に強くブレーキが踏まれた状況を機械学習し、それをマップに反映することで、できる限り急ブレーキの可能性が減るマップが提示されるようになる。
また、特定のエリアがどのくらい混んでいるかを表示する機能も登場する。これは、いわゆる「密」を防止するには重要なものと言えるだろう。
追加機能の中でも「ライブビューの拡張」は、特に今後への影響が大きい変更だ。ライブビューはこれまで、ナビで「歩き始めるときの方向を確認する」のが主な用途だった。だが、今回その機能が拡張され、周囲にある店舗やホテルなどを認識するようになる。そしてそこをタップすると、Googleマップのローカルガイドに蓄積された情報が表示されるようになるのだ。
これによって、ショッピングなどのために「店の情報にアクセスする」ための導線が変わる。目の前に見えているあの店がどんな店でどんな評判なのか、ということを、「目の前の店をタップする」ことで確認できるようになるからだ。
現在、Googleマップの店舗情報は広告連動が始まっている。新しい店舗発見の導線は新しい広告導線にもなりうるわけで、そこにはビジネスチャンスもある。一方で、画面を通じて見る街中が広告に影響される可能性もあるので、その点は慎重に考える必要があるだろう。
どちらにしろ、こうした機能は「店舗への導線」を増やすものだ。グーグルはEコマースにおいて、検索を「売り場への導線」とすることをビジネス化した。多数の広告代理店とEコマースサイトがタッグを組み、広告としてマネジメントしていくことが大きなビジネスになった。
リアル店舗への導線をグーグルがサポートし始めていることには大きな意味がある。今後、ARグラスなどの環境が整っていくならば、現実とネットの間で導線を作ることには大きなビジネス価値が生まれるからだ。
画面を見ることなく検索価値を高めていくLaMDAやMUMも、ライブビュー機能の拡張も、「現実とネットの間の導線拡大」という意味では方向性が同じである。グーグルの次の方向性が、まさにそこにあることを示してはいないだろうか。