他者の視野が自分に入ってくる
ソニーによる次世代クリエイターとのアイデア共創プログラム「U24 CO-CHALLENGE」若者のアイデアを”体験”してみた
2021年04月30日 20時15分更新
実証実験は、巨大倉庫内で実施した
準グランプリ受賞者の実証実験に参加した！
U24 CO-CHALLENGEは今年で2回目の開催。昨年の「U24 CO-CHALLENGE 2020」での受賞者は、すでにソニーのメンタリングを受け、アイディアを次の活動につなげている。
さてこうなれば、これまでにどんなアイディアが集まってきて、プロジェクトを通して、どのような成果物が生まれているのかが気になるところ。今回、U24 CO-CHALLENGE 2020で準グランプリを受賞した「Inertia（イナーティア）」の実証実験を取材する機会を得たので、その模様をレポートする。
Inertiaは、村本 剛毅氏、武田 朋也氏、福林 開氏からなるチームで、3名は仲の良い友人関係だそう。3名が普段から色々な映像作品を制作している様子を見た共通の友人が、U24 CO-CHALLENGEへの参加を勧め、見事に準グランプリを受賞した。
彼らのプロジェクトは「IAItographer（作品名：Lived Montage）」という名称だ。
彼らの説明を借りると、「『同じものを見た複数の人間の視野が随時共有（モンタージュ）される』という、種としてのヒトに将来技術的にインストール可能であるこのルール自体が作品」であり、取材時の実証実験は「それを実験的に垣間見、楽しむことを目的とした」ものだという。
実験の模様が以下の動画で確認できるので、合わせて参照してほしい。
他人の視界が共有されることの面白さ
実証実験は、数人の参加者が、カメラを搭載したVRヘッドマウントディスプレーを装着して行なわれた。参加者は、VRヘッドマウントディスプレーを通じて、カメラ越しの映像を見ることになるが、時折ランダムに、他者のカメラの映像が、流れ込んでくる。
参加者は、カメラとライトがついた、専用のVRヘッドマウントディスプレーを装着する
また、壁面には常に大スクリーンで参加者たちの視線を映し出しており、シーンによっては、『自分と同じ対象を見ている、他者の視点が、自分に流れ込んでくる』という不思議な状況にもなる。また時折、他者が見ている自分を見ることにもなる。
参加者は、倉庫内を自由に歩き回れた
ここに、ダンサーによるパフォーマンスと、複数のオブジェクト（台に設置された花など）、音響を組み合わせることで、これまでに体験したことのない空間ができあがっていた。
誰の視点かもわからない映像が、自分の意図とは無関係に視界に入ってくるという現象は面白く、同時に不気味である。
左から福林 開氏、村本 剛毅氏、武田 朋也氏、
チームの村本 剛毅氏は「斬新な映像を作って商業的なものに流用させたいという意図はなく、自分と同じものを見ている他人の視野を、自分の中に入れるという状況を構築することに興味があった」と話す。
動画の模様や彼の姿勢からも、U24 CO-CHALLENGEというプロジェクトが、商業的に何をどうするという話ではなく、「どうすれば新しいアイディアを具現化できるか」にテーマを絞って実施されていることが、よくわかる。
Inertiaの実証実験に参加して感じたのは「アイディアを純粋なアイディアのまま実現すること」の持つエネルギーだ。
ビジネスの世界にどっぷり浸かると、何かを作ろうと考えたときに、必ず「どのくらいのコストとリソースがかかって、経済的にはどのくらいの価値を生むのか」という思考が入ってくると思う。アイディアをアイディアのまま実現させることは、より根源的な「作りたい」「試したい」という欲求に基づくものだが、歴史を振り返ると、次の世代で世の中を変革するテクノロジーは、そのような、根源的な欲求から生まれているようにも思える。
「ソニーは君と組みたい。」のキャッチで実施されているU24 CO-CHALLENGE。今後の展開にも興味が生まれたし、将来的には、このプロジェクトから生まれたクリエイターや起業家が、大きな活躍を見せるかもしれない。
