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夢の技術! 自動運転の世界 第32回

自動運転の基礎 その26

オーナーの利便性を高め自動運転に必須とされる「OTA」

2021年04月17日 10時00分更新

文● 鈴木ケンイチ 編集●ASCII

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OTAとは何を意味するのか

 今、スマートフォンやパソコンに使われているソフトウェアは、アップデートすることが常識だ。ソフトウェアの開発時にミスによるバグを修正しなくてはならないこともある。また、通信機能を備えてインターネットで外界と繋がっていれば、悪意あるアクセスや攻撃の可能性があるため、それを防ぐためのアップデートも必要となる。そのため、現在では多くのIoT機器が無線機能を利用したソフトウェアのアップデートを実施している。これが「無線経由」ということで「OTA(Over The Air)」と呼ばれている。

※イメージです

 この問題をクルマのソフトウェアで考えてみたい。クルマには、非常に数多くのソフトウェアが搭載されているが、これまで無線機能がほとんどなかった。クルマの事故は乗員や周囲の人々の命の問題に直結するため、ソフトウェアの開発は慎重に時間をかけて実施されてきた。そのためバグも少なく、ソフトウェアのアップデートは、それほど頻繁ではなかった。そうした背景もあり、クルマのソフトウェアのアップデートは、新車を販売するディーラーにクルマを持ち込み、有線で器材をつないで行なわれていた。

OTAと自動運転との関係

 しかし、近年になってクルマを巡る環境が大きく変化した。CASEと呼ばれるクルマの新たな動きが出てきたのだ。CASEのCはコネクテッドの通信機能、Aがオートノマスの自動運転機能、Sがサービス&シェアという新たな使われ方、そしてEがエレクトリックの電動化だ。

 この中で、コネクテッド機能と自動運転機能はOTAと密接に関係がある。コネクテッド機能があるということは、悪意あるハッキング対策が必要になることを意味する。また、高度な自動運転機能には精細な地図が必要であり、その地図も常に最新であることが求められる。そうした地図の更新には、当然ディーラー店舗での作業では不便極まりなく、OTAが望ましい。つまりCASEが進めば、当然クルマへのOTA導入も避けられないのだ。

トヨタのプレスリリースより

 特に日本は、自動運転技術の入口となる先進運転支援システムが、恐るべきスピードで普及した。衝突被害軽減自動ブレーキなどを装着する日本車は、2019年末の時点で、すでに新型車の9割前後にまで高まっているのだ。同時に、トヨタをはじめ多くの日系メーカーは、熱心に車載通信機器の採用を進めている。ただし、現在のところこれらの通信機能は、万一の交通事故時の通報やエンターテイメント、カーナビゲーション機能の充実に使われているが、日本におけるOTA導入の準備は整いつつあることがわかる。

日本におけるOTAの許可制がスタート

 そんな状況で、ついに国も動いた。国土交通省は、2020年8月に「自動車の特定改造等の許可制度を本年11月より開始します」と発表した。これはクルマのOTAを許可制として、2020年11月からスタートさせるというものだ。許可するための要件は「適切なアップデートおよびサイバーセキュリティーを確保するための管理能力を有すること」「アップデートに起因した不具合の是正を実施できる体制があること」「アップデートされた自動車が保安基準に適合すること」となる。

国土交通省プレスリリースより

 こうした制度の発足にあわせ、さっそくトヨタや日産などがOTA機能を搭載した新型車を2021年には発売させるのでは、という報道が見受けられることになったのだ。

 適切なOTAは、ユーザーにとっては大きなメリットとなる。ソフトウェアのアップデートのためにディーラーへクルマを持ち込む手間がなくなるからだ。また、バグの修正やセキュリティーの対処だけでなく、先進運転支援システムなどの機能向上も期待できる。

 たとえばトヨタは、2020年9月に販売済みの先進運転支援システムであるトヨタ・セーフティ・センスの機能アップグレードを実施しているが、これはディーラー店舗での実作業で行なわれた。これがOTAで実施できれば、ユーザーもディーラーも手間が大幅に緩和される。コネクテッド機能の本来的なメリットはOTA導入によって、ようやく万全に発揮できるとも言えるだろう。

 スマートフォンと同様にクルマのOTAも、すぐに当たり前のものとなるはずだ。

筆者紹介:鈴木ケンイチ

 

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


 

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