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佐々木喜洋のポータブルオーディオトレンド 第63回

360 Reality Audioについて考える

2021年03月29日 13時00分更新

文● 佐々木喜洋 編集●ASCII

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標準化されたMPEG-H 3D Audioを利用している

 前述のサービスで360 Reality Audioを楽しむための必要条件を見てみると、Amazon MusicではHDサブスクリプションが必要であり、TIDALやnugs.netではHIFIサブスクリプションが必要とされている。ちなみにドルビーアトモス配信でも同じ条件となる。

 360 Reality Audioは、オブジェクトベースと呼ばれる仕組みを採用しているのが特徴だ。メタデータとして音の位置情報を持たせ、音楽そのもののデータと一緒にコード化して送る形式だ。ここはドルビーアトモスでも同様だ。

 ただし、360 Reality Audioの実体は、ソニーの独自エンコーディングではなく、MP3やLC3の開発などで知られるドイツのフラウンフォーファー研究所が手掛けた「MPEG-H 3D Audio」である。同社にサイトにも、360 Reality AudioがMPEG-Hを採用した技術であることが解説されている。これは標準技術であるため応用範囲は広い。

 360 Reality Audioをストリーミングで楽しむための再生機器は一般的なものを使用できる(ソニー製の最新ヘッドホンでは最適化できる)。また、社外製でも認証制度を行っていて、このサービスを楽しむための推奨機器認定をするとしている。すでにいくつかのメーカーが名乗りを上げているようだが、これは最近発表された「Snapdragon Sound」のようなゆるい囲い込み戦略(バッジ認定戦略)を感じさせる。

使用するヘッドホンは問わない、ワイヤレスでもOK

 実際に一般的なヘッドホンでも再生が可能かどうか。ag「WHP01K」を用いて、「Artist Connection」アプリで試してみた。いまスマホやタブレットで360 Reality Audioを楽しむには、「Headphones Connect」アプリとこのArtist Connectionアプリを使うといい。再生はArtist Connectionアプリを使い、Headphones Connectアプリはソニー製ヘッドホン用に最適化処理をするために必要となる。アプリはiOS用もAndroid用も用意されている。

 ワイヤレスヘッドホンで使うBluetoothはロッシーの伝送だが、スマホまでがロスレス伝送(オブジェクト情報を保持したデータ)になっていれば、デコード自体はスマホで行うので、スマホとヘッドホンの接続にBluetoothを使っても問題ないのだろう。360 Reality Audioはオブジェクトベースという最新の技術を使ってコンテンツ制作やエンコーディングをしているが、一般的なヘッドホンで再生する際には一度2chのPCMにデコードしたものを再生し、さらにBluetoothで伝送する際はこのデータをSBCやAACなどのコーデックに再変換するのだと考えられる。

 さて、ヘッドホンをスマートフォンに接続し、Artist Connectionアプリを立ち上げて「360 Reality Audio」を選択すると専用の画面が現れる(画像1)。この5番目が通常の2chステレオ音源であり、6番目が同じ音源を360 Reality Audioで再生できる音源なので比較がしやすい。

画像1

 実際に聞いてみると、通常の2chステレオ音源では左右(水平方向)に分かれていた楽器の音が、右斜め上など音の位置がわかるように(立体的に)再生される。一般的な機材を使用しても効果はあると感じた。そのため、WHP01Kのような立体感がわかりやすいヘッドホンにも向いていると思える。こうしたオーディオ的に立体感のある機器と、認定機器のどちらが、結局、360 Reality Audioコンテンツをよりよく楽しめるかを評価するのも、オーディオ的に面白いテーマのひとつになっていくかもしれない。

オブジェクトベースのオーディオとは、座標軸を指定し、空間の自由な位置に音を配置できる技術だ。

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