2021年3月24日、NVIDIAはvGPUの導入によるテレワークの効率化について説明するプレスブリーフィングを開催した。登壇したエヌビディアの後藤 祐一郎氏は、一般のオフィスユーザーのワークロードにおいてもグラフィックの負荷がかかっている現状とvGPUのメリットについて説明。また、ニッセイ情報テクノロジーとNTTデータが自社での活用事例を披露した。
テレワークの課題を解決するサーバー仮想化とvGPUテクノロジー
冒頭、登壇したエヌビディア エンタープライズ事業本部 vGPUビジネス開発マネージャー 後藤 祐一郎氏は、新型コロナウイルスの影響で拡大したテレワークの課題として、「環境が未整備」「キャパシティ不足」「生産性の低下」「セキュリティの懸念」「業務環境の欠乏」などを挙げる。具体的にはビデオ会議や動画再生が遅かったり、テレワーク用PCのスペックが足りないといった事態に陥っていると指摘する。
こうした課題を解消するのがサーバー仮想化とNVIDIAのvGPUテクノロジーになる。前者のサーバー仮想化は、ハイパーバイザーによって物理的なハードウェアを抽象化し、仮想マシンとして提供する技術。現在のコンピューティングの基盤ともなっている。一方、NVIDIAのvGPUテクノロジーは対応の物理GPUを論理的に分割して、複数のユーザーで共用することが可能だ。
現在vGPUは、仮想アプリ、仮想PC、仮想ワークステーション、仮想コンピュートの4つの利用形態がある。エンドユーザー向けのコンピューティングにおいては、画面をネットワーク経由で配信するVDI(仮想デスクトップ)の技術を用いることで、さまざまな業務における効率的なテレワークを実現するという。
テレワークとWindows 10で重くなるグラフィック負荷
こうしたvGPUはNVIDIAのハードウェアとソフトウェアの組み合わせで実現されており、ワークロードによってさまざまな選択肢があるのが特徴だという。たとえば、16GBのグラフィックメモリを持つNVIDA T4の場合、OfficeやWeb会議でオフィス業務を担うビジネスユーザーであれば1GBメモリ搭載の仮想PCを16台、CADやヘビーなグラフィック処理を行なうワークステーションの用途では、2GBメモリ搭載の仮想ワークステーションを8台用意すればよい。
そして、今までvGPUを用いたVDIはCADやグラフィック処理を担うワークステーションユーザーを救うどちらかといえばニッチなソリューションだったが、デジタルを前提とした現在のオフィスワークロードはグラフィックの負荷がどんどん重くなっているという。作業効率を向上するマルチモニター、日常的に利用するOfficeアプリ、コミュニケーションの中心となったWeb会議、セミナーや学習で利用するストリーミングなど、テレワーク下で利用するアプリケーションはどれもグラフィックが重要だ。快適なテレワークのためには、こうしたグラフィック処理をGPUにオフロードし、CPUの負荷を軽減する必要がある。
OSという観点からしても、CPUの負荷はWindows 10はWindows 7に比べてアプリケーションで2倍、OSでも1.3倍となっているという(Lakeside調べ)。当然、CPUを高速化したり、コア数を増やすという選択肢もあるが、画像描画やデータ変換、圧縮などは専用のGPUに任せた方が効率的というのがNVIDIAの主張。後藤氏は、「CPU負荷を約20~60%削減し、Windows 10の操作感は平均で34%向上できる」とアピール。GPUによるオフロードは、特にMicrosoft TeamsやZoomなどのWeb会議、WebブラウジングやGoogleマップ、YouTubeの動画視聴、Web GLなどで効果を発揮するという。
vGPUの導入で動画活用が進み、Teamsは快適に
こうしたNVIDIA vGPUを活用して、全社員のスマートワークを推進しているのが、日本生命グループのIT基盤を担うニッセイ情報テクノロジーになる。同社は2012年から稼働していたVDI基盤のリニューアルをきっかけに、現場の声を取り入れた新しいVDI基盤の開発に着手。新型コロナウイルスの影響でテレワーク同時利用者の要件が大幅に上がったが、「劣化しないVDIを作る」を目標に開発を進め、マルチメディアを前提としたレンダリングが重くなっても劣化しないNVIDIAを採用した。
具体的には、vGPU搭載サーバーへのユーザーの集約率を上げるため、GPU(M10)を3枚搭載できるサーバーを調達。当然、電力も大きくなったため、データセンターのラック配置や熱対策も工夫したという。また、一部のシンクライアントでは、vGPUのプロファイルで表示できる解像度が限定的という課題もあったが、タイミングよくNVIDIAのソフトウェアがバージョンアップし、問題も解消された。導入後は動画活用が一気に進んだほか、Microsoft TeamsによるチャットやWeb会議が本格利用されるようになったという。
一方、NTTデータは新しい働き方を実現する「デジタルワークスペース」として「BizXaas Office」を展開しており、vGPU搭載VDIとしてNVIDIAを採用している。もともとは3Dグラフィックスを利用するプロフェッショナルユーザー向けのサービスだったが、コロナの影響でテレワークが一気に進み、一般ユーザー向けを想定した「NVIDIA T4」を採用したvGPU搭載VDIを構築し、2021年1月から社内向けサービスとして提供している。現在、vGPU搭載VDIのユーザーは数千名にのぼっており、「4K動画やVRをスムーズに再生できた」「Teamsなどのビデオ会議が快適になった」「Excel、Word、PowePointの作業のみで利用しても明らかに性能がよく、生産性が高くなった」といった声が聞かれたという。
NVIDIAでは「テレワーク推進時代!NVIDIA vGPUソリューションで生産性を向上させたITトップ企業の成功秘話」というブログも公開している。