今のWindows PCには、サウンド機能が標準で搭載されているのが一般的だ。デスクトップPCの場合は、サウンド用に複数のコネクター(ミニ端子)があることが多いが、ノートPCやタブレットでは、「ヘッドセット」端子1つだけというのが主流である。
これはスマートフォン普及以降の傾向で、昔はノートPCにもヘッドホン端子とマイク端子が並んでいるものが多かった。今回はこのヘッドセット端子について少し調べた。結論から言うと、ヘッドセット端子には、ヘッドホンまたはヘッドセットおよび同等の機器しか接続できず、単体マイクは同じ3.5mmのミニ端子を持っていても(そのままでは)接続ができない。
ヘッドセット端子は3.5mmの4極ミニプラグ
2極のところからステレオやマイク対応で進化していった
一般的なヘッドセットは、3.5mmの4極ミニプラグを使って接続する。これを受ける側をジャック(あるいはミニプラグに対応する意味でミニジャックとも)とも言う。「ミニ」プラグと呼ばれるのは、元々は6.3mmの「フォーンプラグ」(標準プラグ)が先にあったためだ。
これを小型化したものがミニプラグで、テレビやテープレコーダーの「イヤホン端子」に使われていた。当初は、モノラル用として接点が2つの2極のものだった。その後、ステレオ対応の機器が登場すると、ミニプラグもステレオ化した3極のものが登場する。
さらに小型機器向けに2.5mmのもの(俗にミニミニプラグなどと呼ぶ)も登場したが、電気的には3.5mmと同じ方式となっている。この2.5mmのプラグは、PDC方式の携帯電話(movaなど)でヘッドセットに使われた。ただし当時は、ヘッドセットを「イヤホンマイク」と呼ぶことが多かった。
携帯電話用ヘッドセットは、EUと米国では3.5mmのミニプラグで標準化されたため、4極のミニプラグが普及した。ただし、EUと米国では、同じ3.5mm/4極のミニプラグであっても、信号の配置が異なり互換性がない(ジャック側で判別して対応できる機器は存在する)。
端子の形状は同じでも極数や繋がる機器は異なる
こうした背景があるため、3.5mmのミニプラグを持つ機器は多数ある。汎用のケーブルなどが安価に手に入るため、オーディオのライン入出力や特殊な信号の伝達などにも使われることがある。なので、ここでPCに繋がりそうな3.5mmのミニプラグを持つ機器を整理しておこう。
機器 | チャンネル | 極数 | 概要 |
---|---|---|---|
ヘッドホン | ステレオ | 3 | 再生のみ |
モノラル | 3 | ||
ヘッドセット | ステレオ | 4 | ヘッドホン+マイク |
モノラル | 3 | ||
マイク | モノラル | 2 or 3 | マイクのみ |
ステレオ | 3 |
大きく、ヘッドホンとヘッドセット、マイクがあり、それぞれにモノラルとステレオと分かれる。ただし、モノラルのヘッドホンは現在では絶滅状態。ステレオマイクも接続できる機器は極端に少ない。また、ヘッドセットにもかつてはモノラルがあったが、現在ではヘッドセットといえば再生側はステレオであることが普通だ。
複数の信号をジャック側と接続するため、ミニプラグは水平に分割されていて、複数の接点(極)を持つ。この分割は、ミニプラグの元になった2極のフォーンプラグの分割方法を踏襲している。フォーンプラグは2極で先端部分を「ティップ(Tip)」、その下の部分を「スリーブ(Sleeve)」と呼んだ。
ステレオヘッドホン用になるとき、3極が必要になり、スリーブを2つに分割した。この2つのうち、先端(ティップ)に近い部分は「リング(Ring)」と呼ばれた。
そのため、ステレオ用の3極プラグを「TRS」フォーンプラグなどと呼ぶことがある。ミニプラグもこの分割方法と名称をそのまま引き継いでいる。さらにヘッドセットで4つの信号を伝達するとき、スリーブを3つに分割した。リングが2つになったことから、TRRSという表記をする場合がある。
前述のように、このとき米国とEU圏では異なった方式が標準化された。米国では、CTIA(旧Cellular Telecommunications Industry Association。現在はCTIAは略称ではなくなっている)が、EU圏ではOMTP(Open Mobile Terminal Platform。現在はGSM Associationが後継組織)が標準化を進めた。
違いは、マイクの信号を2つ目のリングにするか、スリーブにするかだ。CTIAはマイクをスリーブとして2つ目のリングをグランドにしたが、OMTPは2つ目のリングをマイクに、スリーブを従来どおりにグランドにした。
このような違いが生じたのは考え方の差である。CTIA方式では、リングのすぐ下にスリーブ用の接点があるからここはグランドのままがよいと考え、OMTPはスリーブの根本が金属であることを想定して根本側をグランドにした。この勝負は、米国企業のスマートフォン(iPhoneやAndroid)がCTIAを採用したことで、現在ではCTIA方式が普及する結果となった。
ただ、旧ソニーエリクソンのXperiaシリーズの初期モデルなどの古い端末では、OMTP方式を採用しているものもあり、OMTP方式のヘッドセットが付属していた。かなり古いヘッドセットを見つけたときには注意したほうがよい。
このほか、マイクプラグとヘッドホンプラグの二股プラグになっている古いPC用ヘッドセットもある。ただし、利用できるのはマイク端子とヘッドホン端子を個別に持つデスクトップマシンのみだ。
なお、スマートフォン付属のヘッドセットには、着信・終話といった操作ボタンを装備するものがある。これは、マイク信号(CTIAならスリーブ)とグランド(同第2リング)の間を抵抗で接続することで信号を伝える。Androidでは、最大4つのボタンを装備できるようになっている。マイク信号を使うのは、マイク電源のために電圧がかかっているからだ。ただしWindowsでは、ヘッドセットのボタンを検出できないようである。
つづいてモノラルマイク。これは当初は2極のものが普通だった。というのも、磁石による起電力を使い電源供給が不要なダイナミック型マイクが広く使われていたからだ。ダイナミック型は、PCや一般消費者向けオーディオ製品では、もうほとんど見かけなくなったが、音楽ライブやカラオケ店などでは今でも使われている(ただし接続はミニプラグではない)。
最近のマイクは、ほとんどが電源が必要なコンデンサー型である。過去にはマイク側に電池を内蔵していたが、今はマイクジャック側から電源を供給できるプラグインパワー対応のものがほとんどだ。
電源供給が可能なモノラルマイクのミニプラグには、3極(TRS)のものがある。ただし、2極のミニプラグでプラグインパワー対応のマイクも存在している。さらにステレオマイクでも3極のミニプラグを使う。つまり、プラグとジャックに「2極/3極」「プラグインパワーの有/無」「モノラル/ステレオ」の組み合わせがある。こうした混乱があったため、かつてのPCオーディオデバイスでは、マイク端子でトラブルが多かったわけだ。
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