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新機能のリンクカードや多彩なビューで「情報の整理」に磨きをかけた

新しい働き方を支えるチームのタスク管理ツール「Trello」の次のステップ

2021年03月15日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 クラウド型タスク管理ツールとして多くのユーザーに親しまれている「Trello(トレロ)」は、ニューノーマルにおける新しい働き方を支えるべく、さまざまな新機能を追加している。Trelloの共同創業者であり、製品のトップであるマイケル・プライアー氏に新機能の詳細やTrelloの最新動向を聞いた(インタビュアー 大谷イビサ 以下、敬称略)。

Trello共同創業者 マイケル・プライアー氏

情報を1つにまとめ、探しやすくしようと考えた

――全世界的なリモートワークの需要の拡大でユーザーは増えましたか?

プライアー:2020年は、新型コロナウイルスの影響で、世界中のあらゆる人が仕事のやり方を変えることを余儀なくされました。Trelloのチームは創業時からリモートワークでしたが、アトラシアンもリモートワークに突入することになりました。その中でTrelloがある意味「デジタルのオフィス」になったと言えます。

多くの企業も同じです。実際、昨年の3月中旬以降、サインアップは対前年で73%も伸びました。リモートワークの普及でMicrosoft TeamsやZoom、Slackなどさまざまなツールが利用されるようになりましたが、Trelloもそういったツールの一端を担えたと思います。

――コロナ渦のおけるリモートワークで、個人的にもとても役になっています。

プライアー:ありがとうございます。Trelloをスタートして今年で10周年になりますが、その間私たちのチームはずっとリモートワークでビジネスを進めてきました。5年前には、こうしたリモートワークの経験、どのように分散した環境で仕事を進めればよいのかを書いたガイドも作っています。

Trelloが提供している機能は、こうしたリモートワークの経験や知識をベースに作られています。どのようにすれば、対面でなくても、よりよくコミュニケーションできるのか? チームワークがうまく進むのか? を念頭に機能を考えています。

――今回リンクカードやさまざまなビューなどの新機能が追加されましたが、その背景にある課題について教えてください。

プライアー:新しい働き方を志向する中で、多くの組織はさまざまなツールを使うことになりました。Oktaの調査では、この期間で平均129のツールを採用したという結果が出ています。

一方で、IDCの調査によると、多くのビジネスマンは1日の時間の約1/3(36%)をツールをまたいで情報を探すことに費やしています。しかも、そのうち半分(44%)は必要な情報にたどり着けていません。 たくさんのツールを入れたために、とにかく情報がいろいろなところに散らばってしまう。私たちはこの課題に対して、Trelloで情報を1つにまとめ、探しやすくしようと考えました。

リンクカードはTrelloの見方を変えるはじめの一歩かもしれない

――新機能について具体的に紹介してください。

プライアー:たとえば、リンクカードはJiraのリンクをTrelloに貼り付ければ、それはJiraのイシューになりますし、Google Docのリンクを貼り付ければ、ドキュメントになります。今まではいろいろなツールで直接操作していたと思うのですが、これからはTrelloの中から編集したり、リストを動かすことができます。

――これはカードに表示されたプレビューからジャンプするようなイメージですか?

プライアー:いいえ。リンクされたカードはTrelloのカードではなく、Jiraのイシュー、Google Docのドックそのものになります。私たちとしてはシンプルに作っているつもりなので、画面を見てもらえば理解してもらえると思います。

リンクカードはTrelloや他のツールの情報を整理整頓し、チームを連携させるハブとして発展してく上で基盤となる機能です。Trelloに対する見方を抜本的に変えるはじめの一歩になるかもしれません。

他のサービスがボードに表示されるリンクカード

 

――Slackのようなツールもアプリケーションのハブを指向していますが、Trelloも似たような方向性を目指しているようです。

プライアー:確かにSlackはメッセージ分野で、こうしたアプリケーションのハブになろうとしています。他のツールのいろいろな通知をSlackでまとめて管理して、コミュニケーションを円滑にするという役割です。

たとえてみれば、Slackは森で迷ったときに使う無線機の役割です。迷ったときに無線機を使えば、元に戻れる可能性は上がります。でも、実際は迷子の時には、無線機だけではなく、地図も必要だし、GPSも必要ですよね。Trelloもそういう存在です。Slackと補完的な関係ですし、私たちも実際にSlackといっしょに使っており、とてもうまく機能しています。

――なるほど。新しいビューも増えましたね。私はいつものボードビューが使いやすくて、ほかに移れそうにないのですが、なにか使い方のヒントをいただけますか?

プライアー:まず「タイムラインビュー」ですが、これはみなさんになじみ深いガントチャートのように感じで使えます。開始と終了を明確にできますし、全体を俯瞰したときに、どこに障害があるのか、どのチームメンバーに仕事が偏っているかも見ることができます。「ワークロード管理」のような形で使えます。

ガントチャートのようなタイムラインビュー

 

また、「テーブルビュー」は、Trelloで初めて複数のボードを1画面で見ることができるビューです。今まではスプレッドシートで管理していたと思うのですが、テーブルビューであれば、ボードに変更をかければリアルタイムに反映されるし、誰がプロジェクトにアサインされているのかもわかります。複数のプロジェクトにまたがって調整を行ないたい場合に使いやすいビューだと思います。

――用途にあわせて情報をいろいろな形で見られるんですね。

プライアー:あと、ロケーションベースの「マップビュー」は場所とタスクをひも付けることができます。たとえば不動産会社やフィールドセールスにおいて、どのロケーションの仕事がどこまで進んでいるかをトラッキングできるようになっています。モバイルでも利用できるので、現場で直接入力することも容易です。
 

場所とタスクをひも付けられるマップビュー

生産性向上のツールに「壁紙を変えられる」なんて不要だと思われていた

――次にTrelloの製品開発で重視しているポイントを教えてください。

プライアー:私たちがTrelloで目指しているのは、ビジュアル化、使いやすさ、そして楽しいことです。 この方向性は功を奏していると思います。Trelloに5000万人のユーザーがサインアップしてくれていますし、熱狂的なファンも多いです。

ユーザーに個人での利用か、会社での利用かを聞くと、個人での利用は1割以下で、両方で使っているという方が9割以上です。最初は個人で利用していたけど、便利なので仕事でも使っていて、チームのコラボレーションに活用しているというユーザーが多いのです。

――「楽しい」というのは重要ですよね。私はTaco(キャラクターのシベリアンハスキー)が大好きです!

プライアー:たとえば、パーティハットの絵文字をリスト名に入れておくと、カードを移動させるとコンフェッティ(紙吹雪)が舞います。そういう遊び心も親近感を醸成するのに役立ってるはずです。

特にわかりやすいのはボードのバックグラウンド(壁紙)を変えられる機能でしょう。いまZoomを使っている人からすれば「壁紙変えられるなんて当たり前では?」と思うかもしれませんが、私たちがTrelloをラウンチした頃は、そんな機能を持ったツールはありませんでした。生産性向上を実現するツールに、壁紙を変えられる機能なんて要らないと思われていたからです。

――なぜそういった機能を追加しようと思ったのですか? ビジネスツールですよね。

プライアー:みなさん、自分の家に帰ればやはり落ち着きますよね。好きな家具やアートに囲まれた、自分の好みの環境になっていると思います。私たちはTrelloの中に同じような感じをなんとか醸成したいと考えています。絵文字やスタンプ、コンフェッティも用意しています。ボードのバックグラウンドを好みのものにしたり、レイアウトも自由に決めて、使いやすいものにしてもらいたいんです。

10周年を迎えてロゴとイラストも刷新

 

――ファンの一人として全面的に賛成します。無償版でもさまざまな機能が使えますよね。正直、サービスしすぎではと思うのですが(笑)。

プライアー:私たちがTrelloを立ち上げたとき、スタートアップのピッチでアピールしていたのは、「情報を整理できるツールを作り、1億人に使ってもらいたい」ということでした。1億人の1%が年間100ドル払ってくれたら、1億ドルのビジネスができるというのが当初のもくろみだったのです。

それ以降、無償版と有償版にそれぞれどのような機能を入れるかは私たちの戦略になりました。とにかく多くの人に、いろいろな使い方をしてもらおうというのが基本となる考え方です。

「あらゆるチームの可能性を解き放つ」というミッションとTrello

――2017年にジョインしたアトラシアンとのシナジーについて教えてください。

プライアー:アトラシアンのミッションは「あらゆるチームの可能性を解き放つ」というものです。ここでは「あらゆる」というところが重要です。 Trelloのチームは、創業以来、多くのチームにリーチできています。ですから、オーディエンスを拡げるという役割を果たしてきたと思います。

――アトラシアンのツールはどちらかというと開発者やエンジニア向けのツールです。それに対してTrelloは幅広いビジネスユーザーを指向している印象です。

プライアー:その通りです。Trelloは技術者含めてナレッジワーカー全体に使われています。シンプルに表現すれば「ビジュアルランゲージ」ということになるので、幅広い人に使ってもらえますし、ユースケースも豊富です。

――最後に日本での展開を教えてください。

プライアー:2018年に日本でTrelloをラウンチし、製品だけではなく、ブログもすでに日本語化されています。ブログにはTrelloの使い方だけではなく、どのようにコミュニケーションをとっているか、チームワークをどのように醸成するか、といったトピックも掲出しています。

――ありがとうございます! これからも応援しています。
 

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