データ分析を“PoCで終わり”にさせないためのカスタマーサクセス部門も新設
「Teradata Vantage」で顧客ビジネスに貢献を、日本テラデータ事業戦略
2021年03月05日 07時00分更新
日本テラデータは2021年2月16日、国内報道関係者に向けて2021年度事業戦略説明会を開催した。2020年には新CEOにスティーブ・マクラミン(Steve McMilan)氏が就任するなどグローバルの経営体制が刷新され、パブリッククラウド/サブスクリプションビジネスへのシフトが加速した。日本法人もクラウドビジネスが好調に推移しており、継続した2ケタ成長を達成している。
会見に臨んだ日本テラデータ 代表取締役社長 髙橋倫二氏は「コロナ禍にあってもビジネスを大きく成長させることができたのは、クラウドシフトという市場のトレンドを的確に捉えつつ、顧客のビジネスにマッチした製品/サービスを提供できたからだと思っている。2021年もデータの必要性や重要性を訴えながら、顧客のビジネスをサポートしていきたい」と語っており、クラウド/サブスクリプションビジネスのさらなる拡充を図る。
米Teradataが発表した2020年第4四半期および通年の決算は、年間経常収益(ARR)が前年同期から11%増加。さらに、パブリッククラウドのARRは1億600万ドルに増加しており、パブリッククラウドを中心とするサブスクリプションビジネスへの注力が奏効したことを裏付けている。とくに第4四半期の成長を牽引したのが日本を含むアジア太平洋地域(APJ)で、前年度の4000万ドルから5400万ドルへと大きく売上を伸ばしている。
グローバルの“クラウドファースト”戦略は日本市場においてもひろく受け入れられつつある。髙橋社長は、「金融、EC/流通サービス、製造、運輸、通信など幅広い業種で成長を遂げることができたが、その背景にはポストコロナを見据えてクラウドやデータへの投資を継続する企業が増えたことが大きい。こうしたトレンドに対して主力製品であるTeradata Vantageを最適なかたちで顧客に提供することができた」と好業績の要因を語る。
2020年の好業績達成を受け、2021年もさらに日本市場のビジネスを拡大していくための施策として、髙橋社長は以下の事業戦略を打ち出した。
●1. 「Teradata Vantage」の最新製品のタイムリーな市場投入 … 2021年1月に「Teradata Vantage 2.2」をリリースし、外部オブジェクトストレージ(パブリッククラウド/オンプレミス)のサポートを強化
●2. 既存顧客の活用促進を支援する「カスタマーサクセス部門」の設立 … データ分析への投資がリターンを生むための戦略の策定からソリューションの実装/運用までを5つのステップでサポート
●3. 新規顧客の導入を支援するトライアルの提供 … エンジニアがサポートするTeradata Vantageの30日間無償トライアル(https://www.teradata.jp/Vantage/Trial)
●4. CxO向けデータ活用推進支援 … CDOやCIOなど企業のデータ活用を担うエグゼクティブを対象に、5社前後のユーザが参加するラウンドテーブルを四半期に1回程度開催(2021年第2四半期に第1回を開催予定)
●5. パートナーとの連携強化 … 新規パートナーの開拓、パートナーとの共同事業/共同マーケティングの推進(CxOラウンドテーブルやVantageトライアルなどでも協力)
このなかでももっとも重要な施策は、やはりフラグシップ製品であるTeradata Vantageのアップデートだろう。Teradata Vantage 2.2では、パブリッククラウドおよびオンプレミスを含めたすべてのデプロイ環境において、よりシームレスなオブジェクトストレージへのアクセスを提供する「Native Object Store(NOS)」機能の強化を図っている。
パブリッククラウドの普及により、データレイクをオブジェクトストレージ上に構築する企業は多いが、VantageではこれまでAWSの「Amazon S3」とMicrosoft Azureの「Azure Blob」に追加費用なしの透過的なアクセスを提供してきた。今回のアップデートでは、ここに「Google Cloud Storage」が追加され、さらにDell EMCやNetAppのオンプレミスオブジェクトストレージにも対応する。
NOSの強化について、日本テラデータ テクノロジセールス事業部 事業部長 小永井崇氏は「たとえば価値のわからないデータをデータベースに取り込むことに抵抗がある場合でも、データをオブジェクトストアに置いたままでアドホックにクエリを実行することが可能になる。またコールドデータ(アクセス頻度の低いデータ)をRDBMSにオフロードしたあとも、SQLクエリでアクセス可能なアーカイブとして扱うこともできる。さらにさまざまなオブジェクトストレージをサポートしていることから、複数のサードパーティとのデータ共有も実現しやすくなる」と語り、Vantageを介したネイティブなマルチクラウド環境が実現するメリットを強調する。
Vantageに関してはこのほかにも、データサイエンス向けサポートの拡張(Vantage Analytics Libraryのリリース、R/PythonおよびJupyterHubのサポート拡張)や、AzureおよびGoogle Cloudのマーケットプレイスでの提供(AWSではすでに提供済み)などもあわせて発表されている。近い将来には、データサイエンティストが好みのツールを使ってモデルをトレーニングできるBYOM(Bring Your Own Model)や主要なクラウドプロバイダとのAPI連携強化が予定されているという。
また、髙橋社長が「他社のコンサル部門とは異なる」と自信を見せるのが、新設されるカスタマーサクセス部門だ。日本ではまだ、データ分析に対して戦略的に投資する企業は多くないが、同社では5つのステップで「投資に対してリターンが生まれるよう、理想と現実のギャップの明確化、問題特定、ロードマップ策定、実装/実運用までエンジニアが関わってサポートしていく」(髙橋社長)ことを謳っている。データ分析の取り組みをPoCで終わらせないためにも、グローバルで多くの成功事例をもつ日本テラデータがその知見と経験で、国内顧客を最初から最後までサポートする点が特徴だ。
新型コロナウイルスの感染拡大により、日本企業の多くがデジタル化の重要性を認識し、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みを加速させてきたこの1年だったが、DXの起点となるデータの扱いに関しては「まだその重要性や必要性を十分に理解していない企業も多く、その結果、(データ分析システムの)PoCや部分導入にとどまっている」と髙橋社長は指摘する。「データを企業の最大資産とする」を掲げる日本テラデータだが、クラウドファースト/マルチクラウドをコアとする新たな戦略が顧客のデータ活用スタイルにどう影響するのか、引き続き注目したい。