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Intel MacとM1 Macで内蔵SSDやThunderbolt 3の転送速度に差があるかを検証してみた

文●平澤寿康 編集●北村/ASCII

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本体内蔵SSDとの間でのファイル転送では
内蔵SSDの速度が足を引っ張ることも

 次に、実際のファイルを転送する場合のパフォーマンスをチェックしてみよう。容量が約50.5GB(ディスク上のサイズ54,280,585,216バイト)の動画ファイル(Apple ProRes 422 HQ 59.94fps 4096×2160 10bit)を、MacBook Airの内蔵ストレージとSSD X5、RAIDボックスとの間で転送する時間を計測した。

 また、MacBook Airに用意されている2つのTB3ポートに、SSD X5とRAIDボックスを同時に接続した状態で、SSD X5とRAIDボックスの間での転送時間も計測した。

MacBook Airに用意されている2つのTB3ポートに、SSD X5とRAIDボックスを接続

 転送時間の計測はストップウォッチを利用し、5回計測の平均値を出している。結果は以下に示したとおりだ。

50.5GBの動画ファイル転送時間(カッコ内は転送速度)
  Intel M1
MacBook Air→RAIDボックス 35秒95(1440MB/s) 21秒75(2380MB/s)
MacBook Air→SSD X5 35秒90(1442MB/s) 24秒91(2078MB/s)
RAIDボックス→MacBook Air 2分03秒46 (419MB/s) 28秒96(1788MB/s)
SSD X5→MacBook Air 2分03秒26 (420MB/s) 26秒71(1938MB/s)
RAIDボックス→SSD X5 26秒20(1976MB/s) 25秒92(1997MB/s)
SSD X5→RAIDボックス 23秒60(2193MB/s) 24秒33(2128MB/s)

 まず、MacBook Airの内蔵ストレージから、外付けストレージへの転送時間の結果を見ると、Intel MacBook AirよりもM1 MacBook Airのほうが高速だった。これは、内蔵SSDのリード速度の差が大きく影響しているためで、より高速なM1 MacBook Airのほうが速くファイルを転送できている形だ。

50.5GBの動画ファイル転送時間

 ところで、M1 MacBook Airからの転送で、RAIDボックスのほうが速く、SSD X5はやや遅くなっている。これは、SSD X5に大容量のファイルを書き込むと、時間経過でどうしても内部の温度が高くなり、速度が低下している可能性が考えられる。

 もちろんテスト時には熱の影響が発生しないように配慮していたが、時間がかかる大容量ファイルの転送時には、熱の影響が発生しやすくなるのは仕方のない部分だ。とはいえ極端な速度低下ではないため、そこまで気にする必要はないだろう。

 次に、外付けストレージからMacBook Airの内蔵ストレージへのファイル転送時間だ。M1 MacBook Airでは、SSD X5のほうがRAIDボックスよりもわずかに速かったが、これはそれぞれのベンチマークテスト結果でのリード速度の差がそのまま時間差に表れていると考えられる。とはいえ、いずれもほぼ最高速と言っていい速度だ。

50.5GBの動画ファイル転送時間

 それに対しIntel MacBook Airでは、外付けストレージから内蔵ストレージへの転送時間が極端に遅くなっている。実際の挙動を見ると、転送開始直後はなかなかのスピードで転送できているものの、途中から速度が大きく低下していた。これは、TLC SSDやQLC SSDなどで見られる、ライトキャッシュが尽きて書き込み速度が遅くなるのと同じような現象と感じる。大容量ファイルを頻繁に扱う場合には、この遅さがかなり気になるはずだ。

 一方、TB3に接続したSSD X5とRAIDボックスの間でのファイル転送については、Intel MacBook Air、M1 MacBook Airともにほぼ差がなかった。Intel MacBook Airで転送速度が大きく低下する場面がなかったのは、内蔵SSDを介さずにファイルを転送するため、内蔵SSDの速度が影響しないためだ。

50.5GBの動画ファイル転送時間

 このことから、Intel MacBook Airでは、大容量ファイルを扱う作業を行なう場合には、内蔵SSDを介さず、すべてTB3接続の外付け高速ストレージで完結する使い方のほうが快適になると言える。

 ところで、先に紹介したベンチマークアプリを使ったテストでは、M1 MacBook Airで外付けストレージへの書き込み速度が遅くなる傾向が見られたものの、実ファイルの転送ではそういった傾向は見られなかった。そのことから、先ほど利用した2種類のベンチマークアプリでは、M1 MacBook AirでTB3経由の速度を計測する場合に何らかのボトルネックが発生していると考えた方が自然だろう。

Intel MacBook Airで大容量データを扱うなら
TB3接続の外付けストレージの利用が最適

 M1 MacBook Airは、内蔵SSDはもちろん、今回利用したSSD X5やRAIDボックスのようなTB3の外付け高速ストレージを利用する場面でも、ほぼ最大限の速度が引き出せ、快適に利用できることが確認できた。

 M1 MacBook Airは内蔵SSDがオンボード搭載となるため、購入後の増設や交換が不可能だが、TB3接続の外付けSSDやRAIDボックスを利用すれば、内蔵SSDの増設と同等の環境が得られると考えていい。合わせて、検証での実ファイル転送時間を見る限り、ベンチマークアプリで一部速度が低下する傾向についてもほぼ気にする必要はないだろう。

M1 Macでは、TB3接続の外付けストレージを利用すれば、内蔵SSDの増設と同等の環境が得られる。Intel Macでは、TB3接続の外付けストレージを活用したほうが快適に利用できる

 対するIntel MacBook Airは、せっかくTB3の外付け高速ストレージを利用するとしても、データ転送に内蔵SSDが介在すると、内蔵SSDの遅さが足を引っ張り、外付け高速ストレージの性能を最大限引き出せなくなる場合があることも確認できた。

 ただ、TB3接続の外付けストレージの性能は問題なく引き出せるため、速度の遅い内蔵ストレージはシステムドライブとしての利用のみに割り切り、データを置いて作業するのはTB3接続の外付け高速ストレージ、というのがIntel MacBook Airで最大限の快適度を得るための最適解と言える。

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