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ビジネスの現場でPDFが使われる理由を改めて考える

100年先でも読めるデジタル文書を目指したPDFのすごさ再発見

2021年03月02日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

提供: アドビ

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 ビジネスを効率化するPDFとAcrobatの強みを再発見すべく、アドビ マーケティング本部 キャンペーンマーケティングマネージャーの立川太郎氏にインタビュー。デジタルドキュメントの課題から生まれたPDFの背景やAcrobatの役割を聞くとともに、「変更できない」というPDF最大の誤解を解いていく。

アドビ マーケティング本部 キャンペーンマーケティングマネージャー 立川太郎氏

異なるコンピューター環境でも同じように読めるドキュメントを

 デジタルドキュメントとしてすっかり身近になったPDF。誕生したのは実は1993年にまでさかのぼる。アドビ創業者であるコンピューター技術者のジョン・ワーノック氏が自身が仕事をする中で、「コンピューター環境が異なると同じドキュメントが違って見えてしまう」と課題にぶち当たっていた。さまざまなOSやアプリケーション、バージョンが存在していた当時、アプリケーションが違うとドキュメントを開くことができず、開けても見た目や体裁が異なってしまうのは大きな問題だった。

 この課題を解決すべく、ワーノック氏は自身が立ち上げた「The Camelot Project(キャメロット プロジェクト)」のホワイトペーパーの中で、「ドキュメントは、いかなるディスプレイでも閲覧でき、最新のプリンターであれば機器の種類を問わず印刷できるべきである。この問題を解決できれば、人々の働き方は根本から変わるだろう。」と述べている。

 そして、ワーノック氏とエンジニアチームによって作られたのが、元文書の制作者が意図したレイアウトとフォントを、OSやバージョン、デバイス問わず、忠実に再現できるPDF(Portable Document Format)とPDFを扱うアプリケーションのAcrobatになる。1993年に発表されたファーストバージョンのAcrobatは、PDFの作成ソフトの「Acrobat Exchange」、閲覧ソフトの「Acrobat Reader」、PostScriptファイルをPDFに変換する「Adobe PDF」の3つで構成されていた。

 その後、PDFとAcrobatはデジタルドキュメントの事実上のスタンダードとして広まっていく。2008年、アドビ独自のテクノロジーであったこのPDFは、国際規格としてISOに標準化された。オープンな規格なので、さまざまなアプリケーションから扱うことができ、50年、100年経っても、同じようにファイルを開くことが保障されるわけだ。

元文書と同じ体裁とフォントで確実に再現できるフォーマット

 PDFが生まれて四半世紀あまり、クライアント/サーバーからWebシステムへ、オンプレミスからクラウドへと、ITシステムは大きな変化を遂げてきた。しかし、PDFはシステムやアプリケーションのトレンドに左右されることなく、今もオリジナルのドキュメントを再現できる。これってけっこうすごいことではないだろうか。

「PDF=変更できない」という誤解

 PDFというファイル形式をオープンにし、PDFを扱えるアプリケーションも増えたが、PDFを知り尽くしたアドビのAdobe Acrobatの地位はますます高まる一方だ。Acrobatユーザーは世界で1億にのぼっており、有償版のAdobe Document Cloudもすでに500万以上の企業や組織が利用している。そして、過去1年Acrobatで開かれたPDFのファイルは約2000億回にのぼっているという。

 PDFは制作者の意図を忠実に再現するという特徴から、「PDF=変更できない」と誤解するユーザーは多いという。「元文書を変更されないようPDFに変換するという方もいますが、実際は編集可能なフォーマット。だから、PDFにもセキュリティをかけないとリスクにつながります」と立川氏は指摘する。

「PDF=変更できない」は誤解

 多くのユーザーは表層上のPDFのテキストや画像しか見ていないが、PDFはさまざまな情報を格納できる情報コンテナとしての役割がある。たとえば、テキスト以外にも画像や動画、3Dデータのほか、注釈やフォーム、メタデータ、セキュリティやアクセス制御の設定、電子署名やタイムスタンプなどが階層(レイヤー)構造で埋め込まれている。Acrobatはこれらのレイヤーの情報を編集することで、PDF自体を変更するわけだ。

 では、編集できるデジタル文書ということであれば、Wordとどこが異なるのだろうか?「一言で言えば、コンセプトが違います。Word文書はそもそもイチから文書を作るためのフォーマット、PDFは元文書を変換するのが前提のフォーマット」と立川氏は語る。つまり、元文書をオリジナルの体裁で伝えられる汎用フォーマットがPDF。ワーノック氏の描いた設計思想は、今でも有効に機能しているということだ。

ファイル自体にセキュリティをかけてしまうPDFのユニークさ

 編集できるPDFだが、もちろんファイル自体にセキュリティをかけることも可能だ。Acrobatでは「保護」というツールを使うと、パスワードの保護により、閲覧や編集、印刷などの操作を詳細に制御することができる。また、PDFに格納されているさまざまな情報が外部に漏れないよう、Acrobat側でこれらの情報をまとめて削除することも可能になっている。

 ファイル単位でセキュリティをかけてしまうPDFのアプローチはユニークだ。アプリケーションが変わろうが、PDFにセキュリティ設定が施されているため、パスワードがわからない限りはファイルを見ることもできないし、閲覧や編集なども制作者が意図通りコントロールできる。

 「100年経っても読めるデジタル文書を目指して開発された」「編集できないは誤解」「さまざまなセキュリティをファイルに埋め込める」など、PDFの特徴を理解してもらえただろうか? 後編ではPDFの強みを最大に活かすことができるAcrobatについて再発見していこう。

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