2021年最初の連載記事ということで、今年1年の格安SIM界の予想をしていきたい。新型コロナウイルスの影響で予測できない事態が続くが、そのなかでも「20GB+2980円」の割安サービスの開始と一般への浸透、5Gの普及などはじわじわ進んでいくと思われる。
ユーザーは新サービスにうまく乗り換えていけば、今までより割安にスマートフォンが利用できるケースが増えると思われるが、逆に巨大通信会社のサービスの中に囲いこまれていく可能性も予想している。
今までにない安いプランへの移行がはじまる
まず、なんといっても「20GB+2980円」というサービスの登場と普及が2021年前半の大きなイベントとなりそうだ。ドコモ「ahamo」とソフトバンク「SoftBank on LINE」、そしてKDDIからも対抗上なんらかのサービスが出る可能性がある。ahamoはサブブランドとしての展開を検討していた痕跡が多数見受けられるが、政府の方針で“新料金プラン”という名目になったことで、むしろ追い風になる。
これまでUQ mobileやY!mobileは、サブブランドとして存在しており、実際に契約したことがある人ならわかると思うが、メインブランドのサービスと遜色ない通信品質が提供されている。料金も今ではMVNOの格安SIMと同水準で、長期契約などの縛りもない。しかもY!mobileでは、本来は有料(月462円)のYahoo!プレミアムが無料になるなど、+αのメリットもあって、使い方次第ではMVNOの格安SIMよりも割安という計算もできる。
それでも現実には、サブブランドへのユーザーの移行はそれほど進んではいない。家族割引などメインブランドから離れられない状況の人もいるが、メインブランドによる恩恵をまったく受けてない場合でも、安価な料金への警戒心や単に面倒といった要素もあってサブブランドの料金の方が適しているのに留まっていた人も多いはずだ。
前述のようにahamoは実質的にはサブブランドと言ってもよく、しかもネット加入オンリーの扱いなら、Y!mobileやUQ mobileよりも簡素なサービスのはず。“安かろう悪かろう”と警戒する人も多くなっていたはずだった。
ところが、政府の意向もあって「メインブランドの新料金プラン」として提供した形になったため、移行への心理ハードルはかなり下がると思われる。この見事なまで追い風が揃ったため、これまでにない移行があると思われる。
そして、同時に料金見直しの機運が高まれば、サブブランドやMVNOの格安SIMへのユーザーの流れも一定数あると思われる。
それでもメインブランドに留まるユーザーは多い
とはいっても、大半のユーザーがぞろぞろと新しい料金プランに移行してしまうようには思えない。
オンラインだけでの申込みという点は、これだけでかなりの脱落があるはず。そして、SIMの交換やAPN設定といったスマートフォンの設定を自分でしなければならない。これが大きなハードルでさらに脱落者が出る。SIMの入れ替えはスマートフォンの分解とさほど変わらない認識の人もいるほか、SIM形状の変換アダプターでスロットを壊した話を拡大解釈し、用心しすぎている人もいる。
そしてなにより、携帯電話やスマートフォンは通信契約や電話番号と完全に紐ついたものと思い込んでいる人は意外に多い。キャリアを移行する行為は、すなわち端末の買い替えが必ずともなうと考え、それなら移行しない、または買い替え時期まで様子を見るということになる。
しかも「20GB+2980円」でどのような端末が販売されるのかはまだ公表されていない。最新iPhoneやハイエンド5Gモデルを従来プランと同様に提供する可能性もあるが、やはり最新iPhoneがなければ移行しないという人も出てくるだろう。
これらの誤解をひとつひとつ解いていくことができるかどうか、キャリアショップに駆け込んで相談した場合の対応などで移行数は大きく変わると思われるが、実際には大量に出るほどではないと思われる。
MVNOの格安SIMは、ユーザーの入れ替えの後に再編の可能性
では、MVNOの格安SIMはというと、安いサービスへの移行について理解が進めば、数ある選択肢のなかで、これまでよりも選ばれる機会は多くなるはずだ。
その一方で、MVNOの格安SIMにとって「20GB+2980円」という新基準がある状況では、月3GB以下のプランなど、より単価が低いユーザーが中心になってしまう。そして、今までMVNOの格安SIMを使っていた詳しいユーザーは、通信量の多いユーザーから「20GB+2980円」の各プランへの移行が進むと思われる。
その結果、かなりのユーザーの入れ替わりがあると思われる。1つの事業者内で解約と加入のバランスがとれていればいいが、契約者数の純減が増えてくると淘汰されるサービスも出てくるだろう。
新規加入の際は、オンラインでは同時購入端末の割引、店頭では大量ポイント進呈と、3大キャリア並みの優遇措置を実施しているところも多いので、体力のある会社でないと新規加入者獲得すらままならないことになる。
そして最終的にはMVNOの格安SIMは、大手通信会社の傘下に入ってしまうケースも増えている。MVNOとしての楽天モバイルのサービスは新規契約は終了しているし、LINEモバイルもSoftBank on LINEの開始とともに同様の状況になりそうだ。OCN モバイル ONEは、NTT再編によって体制が変わる可能性が高い。そして、KDDI傘下のBIGLOBEモバイルも動きがあっても不思議ではない。また、IIJmioのIIJはNTTとNTTコミュニケーションズが大株主ではあるものの、現状では自主性を持った経営がなされているが、何か起こらないとも限らない。主要なMVNOのうち、3大キャリアと関係性が薄いのは関西電力子会社のオプテージが運営するmineoくらいだ。
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