他社を凌駕する性能と消費電力
スループットのみならずレイテンシーも低い
では性能はどうか? というのが下の画像だ。Nvidia V100とNVidia T4、それとHabana Labs/IntelのGoyaを対象として、性能と性能/消費電力比のどちらも圧倒的に高いとしている。
動作モードは5つほど用意されており、25Wから276Wまでの範囲で、性能比も6.2倍に達する。この25Wや50Wというモードは、単にAlibaba Cloudだけではなくエッジ向けに組み込む場合も想定してのものだろう。
Efficnency Modeは4つのコアを全部有効にするが、Low Power Mode 1~3はおそらく有効コア数も減らしていき、Low Power Mode 3では1コアのみが稼働する状況と思われる
スループットのみならずレイテンシーも低い、というのがHanguang 800の特徴でもある。Batch Sizeに関係なく画像処理のスループットは一定であり、しかもレイテンシーは0.11ミリ秒と圧倒的に低いとされる。
Batch Size=1の場合はまだそれほどレイテンシーの差がないが、ただNvidia T4やHanabaのGoyaでは十分な性能が出ない。フル性能を出そうとするとBatch Sizeを128程度にする必要があり、これだとHanabaのGoyaで1ミリ秒、NvidiaのT4では24ミリ秒までレイテンシーが悪化するというのが彼らの主張だ
ResNet以外でもこうした特徴は変わらないという結果も示されている。
NVIDIAのV100やA100との比較が下の画像で、スループットと性能/消費電力比もNVIDIAのGPUを圧倒しているとする。
このHanguang 800、昨年9月の発表時の説明では、すでにAIを利用するさまざまな事業で利用されているという話だった。具体的には製品の検索やレコメンデーション、eコマースにおける自動翻訳、広告、カスタマーサービスなどである。
実はこうした自社ビジネス向けを従来のCPUやGPUから置き換えるだけでコスト(主に電気代)を大幅に削減できるというあたりである程度開発コストは償却が済んでいるだろう。
現状のAlibaba Cloud上でユーザーが直接Hanguang 800を利用できるインスタンスそのものは存在しないが、例えば分析のData IntegrationやImage Searchなどで、内部的にHanguang 800が動いているだろうというのは容易に想像がつく。
なんというか、使い方がすごく限られ、これまで説明してきた推論向けプロセッサーに比べて柔軟性がだいぶ劣る気がするとはいえ、そのあたりをわかったユーザー(つまりAlibaba Cloud自身)が使う分には問題ないということだろう。こうしたプロセッサーは、今後も増えていくと思われる。

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