音楽なのに耳を塞いで「ヤなことそっとミュート」する新感覚のスペシャルMVが楽しい

2020年12月07日 15時00分更新

文● 荒井敏郎　編集●ASCII

【メンバーインタビュー】
メンバーそれぞれがそっとミュートしたいこと

──今回のスペシャルMVの感想を教えてください。

間宮まに（以下、間宮）　まず、こういう企画をやりますって聞いたときに、驚きというか、わくわくして……。サイトが公開されてから実際にやってみたんですよ、家でひとりで。ミュートポーズしている姿がなかなかシュールだなと思いました（笑）。画面からは自分たちの声がずっと流れているし、すごく面白かったです。

なでしこ　こういう特設サイトみたいなものが初めてだったので、すごい楽しみだなという気持ちが素直に最初ありました。Twitterで事前に募集した皆さんの日常での「ヤなこと」を映像で流しているし……。耳をふさぐとそれが消えるっていう、ヤなことそっとミュートっていうグループだからこそできる企画だなと思いました。ただ、実際やってみるまで、どんなものか想像がつかなかったんです。

慎秀範（以下、慎）　テストサイトの段階で、1度みんなにはスタジオでちらっと見せたんですよ。

なでしこ　その時にやっと理解しました。だから、最初は何もわからずに「ヤなこと」を録音するために読んでました（笑）。

慎　公募する前に、テストで文字列をみんなに読んでもらって、一応音をはめてみるっていうことをやったんですね。

なでしこ　私たちの声は何に使われるんだ!? って若干恐怖でした（笑）。

凛つかさ（以下、凛）　テスト用の文面がいきなりプロデューサーから送られてきたんです。「雨が降ったのに、傘を忘れてぴえん」みたいな。私も特設サイトのテストの段階まではどういう仕組みかわからなかったので、なんだろう？って（笑）。サイトが公開されてから実際に自分で家でやってみたら、なかなかうまくいかなかったんです。でも、コツを理解してできるようになりました。耳と肩を出すのがポイントだったんです！髪の毛で隠れているとうまく認識できないみたいです。

南一花（以下、南）　私も一緒で、テスト段階の録音の時は何をやるかわからなくて……。それでしかもプロデューサーに呼ばれて事務所に行って「録ります」って言われて「はい」って言ったんですけど、何も知らずに「ぴえん」みたいなことを話していたら、何やってるんだろう？っていう気持ちになりましたね（笑）。こういうカタチになった時には「すごいな」って思いました。

──それでは、新曲のフィラメントについていかがですか？

なでしこ　フィラメントの歌詞は、コロナの状況が始まる前と起こってからのことを振り返るような内容だと感じていて、だからコロナが起こる前のまだお客さんがたくさんライブに来てくださっていた頃の風景とか、お客さんとのつながりとかを意識しながらレコーディングしました。サビの歌詞に「きっとあなたと結んだから」ってあるんですけど、今のこういう状況の中でやっぱり疲れちゃってる方がたくさんいるだろうなと思うんです。そんな方が曲を聴いて、少しでも温かい気持ちになってくれたらなって思います。

間宮　私も注目していただきたいのは歌詞だと思っていて、歌い出しが「振り返れば思ったよりも遠い昨日」なんですけど、まさに今までの日常が思っていたよりも遠くに行ってしまったことを振り返るようなものになっています。あと、カップリングの「Passenger」も割と歌詞がポイントだなと思っていて、フィラメントに比べると現実的に今の状況を歌っていて、かつ前向きだという印象があります。歌い出しに「いつになれば終わるのだろう窓の外は見知らぬ太陽不安ばかり数えていても仕方ないわかってるんだよ」とあるんですけど、コロナで活動できない状況の中の気持ちはまさに、こういう感じですよね。フィラメントとPassengerは違うアプローチでこの状況を表していて、こういう世の中に対する答えみたいな2曲じゃないかなと思います。

なでしこ　私もPassengerはお客さんの心情とも重なる部分があって、今の状況のことを歌っているなっていうのは感じました。コロナでライブがなかなかできない状況は、悔しい気持ちはありますけど仕方ないって思っていて、今できることをやって頑張っていこう、負けないぞっていう気持ちでずっといます。フィラメントが応援してくださっている皆さんを包み込むような曲だとしたら、Passengerはお客さんを私たちが引っ張っていく──みたいな曲ですね。

──ライブなどができない中でのモチベーションの維持って、難しくはないですか？

間宮　SNSや配信での活動がコロナの影響で多くなっているんですけど、そこでコメントだったりをいただく中で、ファンの皆さんが支え続けてくださっていることをいっそう実感した期間でもありました。それがモチベーションですね。もちろん会えたら一番いいんですけど、正直コロナになってツアーとかが全部なくなってしまった時、飽きられてしまうんじゃないかみたいな不安が私は大きくて……。お客さんだってライブが見たいのに行けないストレスってあるわけじゃないですか？にもかかわらず、ずっと温かい言葉をかけてくれて、私も頑張ろうって思いますね。

なでしこ　私はコロナの自粛期間中、逆にモチベーションが上がっていった感覚がありました。以前のようなライブがいつできるかなんてわからないんですけど、絶対にやらないなんてことはないじゃないですか。だからこの期間、どれだけ自分がレベルアップできるかっていうことを考えていて、それが逆にお客さんを安心させることなんじゃないかなとも思っています。いろいろ自分を見つめ直したりとか、自分と向き合ったりする期間だなって思いました。

凜　個人的にうれしかったのは、配信活動をとおしてファンの方にいろんな一面を見せることができて、結構新しいアプローチができたことです。英語の配信を始めてみたり、なにか作ってみたり、毎週工夫して配信して、その反応がモチベーションになっていました。今は月に1～2回ぐらいしかライブができないんですけど、ライブ配信をしているんです。それで遠方の方とか海外の方が見てくれるようになったのは、不幸中の幸いかなと思っています。

──それでは最後に、それぞれがミュートしたい「ヤなこと」を教えてください。

間宮　害虫です。家にすごいゴキブリが出るんですよ……。ここ数年悩み続けていて。本当にミュートしたい！

なでしこ　私は雨の日に見る、傘を横にして持つ人をミュートしたいです。先端恐怖症とかではないんですけど、前を歩いているとすごく怖いですよね。それこそ近くに子供とか歩いているとハラハラしちゃって……。ミュートというより、皆さん気をつけてください、縦に持ちましょう！っていう。注意になっちゃった（笑）。

凜　お店に入った時に店員さんに話しかけられることをミュートしたくて……。おだてられていい気になって買っちゃうんです。今日ジャージを着ているんですけど、これもちょっと丈が長かったんです。でも店員さんに「これぐらいなら靴はいたら大丈夫ですよ」って言われて買って履いたら床にすってて。騙されやすいのかも。

南　私はインターネットをミュートしたいです。インターネット全部が嫌いとかじゃないんですけど……。TwitterやInstagramもやってるし。ただとくにコロナ期間中、いろんなものに対する心ない言葉をたくさん見てしまって。そういうのがとても嫌だったんです。ミュートというか、インターネットとの付き合い方はしっかり考えなくちゃって思います。

ヤなことそっとミュートプロフィール

　「ヤなことだらけの日常をそっとミュートしても何も解決しないんだけど、とりあえずロックサウンドに切ないメロディを乗せて歌ってみる事にする」をコンセプトに活動する4人組アーティスト。オルタナティブ・ロックを主体とする楽曲で、2016年から活動をスタート。2020年3月25日、シングル『Afterglow / beyond the blue.』にてユニバーサルミュージックよりメジャーデビュー。10月28日にはメジャー2ndシングル『フィラメント』発売。12月23日にはメジャーファーストアルバム『Beyond The Blue』をリリースする。