「うまとろ豚たま牛めし」
松屋
並650円(※プレミアム牛めし未販売店舗では590円)
https://www.matsuyafoods.co.jp/matsuya/news_lp/201201.html
直球と変化球、牛肉と豚肉
野球にフォークという変化球があります。いわゆる「落ちる球」です。このフォークを活かすには、フォークの切れ味を鍛えるのではなくて、ストレート、つまり直球に磨きをかけたほうがよい、という説があります。
なぜかといえば、フォークは、打者にとっては「ストレートだと思ったら落ちていく」球です。ストレートがすごければすごいほど、打者はストレートを意識せざるをえなくなる。そこにフォークを投げれば、ストレートを待っている打者を空振りさせることが可能になる。こういった仕組みなのだそうで。
野球の例えが長くなりすぎました。松屋は新メニュー「うまとろ豚たま牛めし」を12月1日から発売しました。
看板商品である牛めしの肉、特製ダレでとろとろになるまで煮込んだ豚肉、半熟玉子を添えており、1杯で2度おいしいとうたう牛×豚のコラボメニュー。牛めしと特製ダレの染みこんだごはんで食べたり、半熟玉子の黄身をくずして肉と絡めて食べたりと、さまざまな食べ方で楽しめるとうたいます。
価格は並で650円(※プレミアム牛めし未販売店舗では590円。また、単体通常価格より90円引きとなる豚汁がセットになった「“うまとろ”豚たま牛めし豚汁セット」も用意。
豚はおいしいけど、添え物感がある
さっそく食べていきましょう。牛もあり、豚もあり、半熟玉子もありですから、食べ方を考えてしまいますよね。とはいえ、牛肉と豚肉はやはり別の味付けなので、玉子を割って、ごはん部分と絡めるのがオススメでしょう。
ご無体なことを言ってしまえば、牛めしはいつもと同じなんですよ。半熟玉子も、付ける人が多いでしょうから、基本的にはいつもの「半熟玉子を合わせた牛めし」です。
となると、ポイントは豚肉になりますよね。角煮のように、濃い目の味付けで煮込まれています。甘辛い特製ダレがあるため、ごはんと合います。ここに関しては、あまり文句がない。
ただ、牛肉と比べると、豚肉の量が少ないようにも思えます。これをどう考えるべきか。
豚肉自体のクオリティーは悪くないのですけれども、それほどゴロゴロ入っているわけではない。牛肉部分はいつもの味ですから、いつもの牛めしに、豚肉がトッピングのように加わっているように思える。そう考えると、牛めしの添え物的な雰囲気も出てきます。
うまとろ豚たま牛めしを食べていると、不思議な話なんですが、「牛めしっておいしいんだな」と思うわけです。つまるところ、豚肉とごはんを一緒に食べていると、牛めしの牛肉(+玉ねぎ)部分が、いかに白米に合うようにできているか、そして自分が食べ慣れているかを、強烈に実感します。豚が加わっても、牛めしの構造は強固なのです。
プレミアム牛めしを提供する店舗には、黒胡麻焙煎七味があります。当然、これだって、薬味として悪かろうはずがない。でも、それは「うまとろ豚たま牛めし」に絶妙に合うというよりは、「牛めし」に絶妙に合うわけです。
悪くはないのですが、豚肉が牛めしの添え物感もあって、ちょっとスペシャルな感じには乏しいかと。豚肉があってもなくても、という感じ。
また、並650円(※プレミアム牛めし未販売店舗では590円)。牛めしが並盛320円、プレミアム牛めしが並盛380円。半熟玉子は70円です。この値段で、豚肉をプラスしたいか、というと悩ましいところ。
豚肉という変化球、フォークが効いているような気がしますが、それは松屋の牛めしというストレートがいかに絶対的なものであるか、ということの裏返しなのでしょう。牛めしがしっかりしているので、豚肉を添えても味は不変。一方で、牛×豚のコラボによるマジックのようなものは薄いかなと。
1杯で牛と豚、2度うまい! というよりは、いつもの牛めしにちょっとアクセントを付けたという点で、1杯で1.5度うまい、という感じでしょうか。「牛めしはよくできていたんだな」と、なんだかぼんやりした感想で終わります。
モーダル小嶋
1986年生まれ。担当分野は「なるべく広く」のオールドルーキー。編集部では若手ともベテランともいえない微妙な位置。一人めし連載「モーダル小嶋のTOKYO男子めし」もよろしくお願い申し上げます。
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