GPUクーラーが窒息しやすい垂直設置での効果も試してみる
魅せるPCケースの定番ギミックのひとつで、魅せるPCを組むうえで積極的に狙っていきたいビデオカードの垂直置き。ただ、そのスロット配置の関係上どうしてもGPUクーラーとサイドパネルの間が狭くなる。結果、GPUクーラーへのエアフロー悪化→GPU温度が上昇→GPUクーラーファンの回転数上昇/騒音値上昇→GPUコアクロックの低下という負の連鎖が起こることもある。
実際、比較的横幅のあるDefine 7でも、2.5スロット厚となるZOTAC GAMING GeForce RTX 3080 Trinityを垂直配置すると、GPUコア温度こそ通常設置時から3度アップに留まるが、1800rpm前後(72%前後)だったGPUクーラーのファン回転数が700rpm程度アップの2500rpm台(87%前後)になって、騒音値も35.8dBAから机の上に設置する魅せるPCとしては、結構厳しいと言える43.7dBAまで上昇してしまった。
Fractal Design純正ライザーケーブルの「Flex VRC-25」を使って、ZOTAC GAMING GeForce RTX 3080 Trinityを垂直配置した状態で、排気ファンを標準搭載ファンから、NF-P14s redux-1500 PWMに変更。再びCONTROL ULTIMATE EDITIONを1時間程度プレイし、各種温度やGPUコアクロックなどを抽出した。
また、Define 7シリーズなどの一部ケース向けオプショとして、ビデオカードとサイドパネルの間隔を空けつつ、垂直配置するライザーブラケット「Flex B-20」も販売されたので、NF-P14s redux-1500 PWM+「Flex B-20」の状態もチェックしてみた。
GPUクーラー窒息状態の影響度は大!
ビデオカード垂直配置時の温度などは、10分間の平均値と1時間ゲームプレイした際の最大値をまとめた。
排気ファンの強化ではGPUコア温度に大きな差は出ないが、NF-P14s redux-1500 PWM+交換時はGPUクーラーのファン回転数が低下しているほか、PC内部のエアフロー改善により、PCIe×16スロット(PCIEX16)や、CPU(CPU Package)、チップセット(PCH Temperature)、電源回路(VRM MOS)部の温度がダウンしている。
また、GPUコアクロックへの影響も大きく、1時間程度プレイした際のGPUコアクロックのログから、後半10分間の推移を抽出すると、デフォルトファン+垂直配置時のGPUコアクロックは100MHz近く下がった1700MHz台で推移し、NF-P14s redux-1500 PWM+交換時も平均値で50MHz程度ダウンしている。
ビデオカードの垂直配置時も排気ファンを強化した際のメリットは得られる。ビデオカードのGPUクーラーとサイドパネルとの間隔が広くなるFlex B-20の効果が抜群で、フロントファンからのエアフローも影響してGPUコア温度は平均、最大ともに約10度ダウンした。
さらにGPUコアクロックは平均1860MHzと、通常配置とほぼ同じクロックまでブーストされたうえ、GPUクーラーのファン回転数が1500rpmまで下がり、PC動作音は気にならないレベルにまで改善した。
パフォーマンスや、動作音を気にせずにビデオカードを魅せる(愛でる)なら、サイドパネルとの間隔を確保しながら、垂直配置できるFlex B-20などの製品を使うのがベストだ。もちろん、構造的に使うのが難しいPCケースでは吸排気のバランス改善で、冷却性能アップを試してみよう。
吸排気のバランスを整えてPC環境を各部の温度をダウン
十分なエアフローが確保されているFractal Design「Define 7」でも、排気を強化することで冷却効率がアップした今回のテスト。PCケースでその効果は異なるが、吸排気のバランスを整えることでCPUなどのPC各部の温度が改善するのは明らかなので、試してみる価値は十分ありだ。
PC一式の相談、購入時にショップスタッフから、PCケースファンの追加を提案されたら、しっかりとその理由に耳を傾けて、追加投資を検討しよう。