ファッションから金融まで「倫理的な考え方」が次のキーワードに

知ってた?「エシカルな行動」が地球の未来を変える

文●石井英男 編集●ASCII

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エシカルな暮らしを実現する7つの「R」

―― エシカルという概念は、日本ではまだポピュラーにはなっていないと思いますが、「わからないので簡単に教えてください」と言われたとき、どのように説明されていますか?

末吉 エシカルとは、人や地球環境、社会や地域に配慮した、また思いやりのある考え方や行動のことだと説明しています。エシカルというのは形容詞で、いろいろな名詞と組み合わせることができるので、エシカル消費のほかファッションから金融までさまざまな分野におけるエシカルな取り組みがあります。

―― エシカルな行動のなかでも、フェアトレードを含むエシカル消費は比較的わかりやすいと思いますが、それ以外のエシカルな行動とはどのようなものがあるのでしょうか?

末吉 私たちはお金を使わずにできるエシカルな暮らしとして、7Rというものを伝えています。それは、Rethink、Refuse、Reduce、Repair、Reuse、Repurpose、最後がRecycleです。

 Rethink、考え直すというのは、自分自身の暮らしを見つめ直すということです。自分がお金をどんな分野に一番使っているかとか、自分自身の暮らしとまずは向き合うところからスタートします。Refuseは断るという意味で、最近はレジ袋も無料で付いてこなくなりましたが、石油由来のプラスチックのストローを出されたら、ちゃんと理由も添えて断るということです。相手にその理由が伝わることがとても大事だと思っていますので。

―― たとえばコンビニのスプーンとか、使わないならミルクや砂糖をもらわない、というのもRefuseですね。もらって捨てちゃったら意味がないですから。

末吉 はい、そのときにただ断るのではなく、なぜ必要でないかを相手に伝える。Reduceは減らす、という意味ですが、(この場合は)全体の生産量、消費量、廃棄量を減らすことです。つまり、どうしたら地球一個分の暮らしができるのか。私たちはこの考えが一番大事だと思っています。

 Repairは持っているものを修理をしながら大切に使っていくということです。Reuseは皆さんご存知の通り、再利用です。

 RepurposeはUpcycleと同じ意味で、もともとあったものに付加価値を付けて新しいものをつくる。例えば、これはアルミ缶のプルタブを組み合わせて作ったポーチです。Recycleも大事ですが、ぜひ上から順に、暮らしのなかでできることを実践してほしいとは伝えています。

 消費以外のところでは、エシカル金融は銀行にお金を預ける場合に、その預けたお金が何に使われているのかを生活者として知ることです。ある銀行は、もしかしたらそのお金を運用して、サステイナブルではない事業に融資をしているかもしれない。その銀行の融資先まで確認した上でお金を預けましょう、と。悪いところにお金を貸している銀行からお金を引き上げる行為をダイベストメントと呼びます。個人だけでなく、企業や自治体もできることで、たとえばニューヨーク市はダイベストメントを実施しています。

大久保 あとは電力の切り替えもそうですね。

末吉 家庭から出ているCO2の排出量の半分は電気ですので、電力会社の選択も大きく影響を与えます。

Repurposeの一例。アルミ缶のプルタブを組み合わせることで、ポーチとして生まれ変わった

ヨーロッパを中心にエシカルが広まっている

―― エシカルという考え方は、すでに海外では広まっているのでしょうか?

末吉 今の文脈でエシカルという言葉を使うようになったのは、当時のブレア政権が「我々はエシカルな政権を作り、外交もエシカルにしていきたい」という主旨の発言が始まりだと私は聞いています。

 当時イギリスではボイコット活動がすごく盛んで、フロンガス缶の廃止運動などさまざまな活動が続くなか、1989年に「Ethical Consumer(エシカル・コンシューマー)」という雑誌をイギリスのマンチェスター大学の学生たちが立ち上げたんです。それは、どんなボイコット活動が有効かを説明する超マニアックな内容でした。現在も続いており、エシカルな消費について企業の取り組みなどを取り上げる専門誌になっています。

 彼らは「Ethiscore(エシスコア)」という、全世界のあらゆる企業が販売する製品にエシカル度合いのスコアづけをしています。イギリスの消費者は買い物をするときに、そのWebサイトを見て製品を決めると言われているくらい信頼が厚い媒体です。

―― ではイギリスが最もエシカルな国といえるのでしょうか?

末吉 発祥の地であり、今でもフェアトレードは進んでいますけれども、エシカル消費というもっと幅の広い視点で見れば北欧が進んでいますね。たとえば、日本と比べてスウェーデンは25年くらいエシカル消費が進んでいると言われています。

エシカルのムーブメントはこの「Ethical Consumer」から生まれたと言われている

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