本連載は、IT記者であるオオタニがユーザックシステムのデスクトップ型RPA「Autoジョブ名人」を用いて編集部の業務自動化を進めていくという内容だ。前回は編集部で利用しているシステムでスクリプト作成を試してみたが、今回はどんな作業がRPA化できるかを編集部のメンバーにヒアリングしてみた。
進行アラート、発注確認メール、PV更新って自動化できない?
さて、今回は編集部で自動化したい作業を聞いてみることにした。ユーザックのセミナーを聞く限り、「塵も積もれば山となる」ということで、まずは小さい作業からRPA化して実績を積んだ方がいいようだ。もちろん、個人的にも自動化したい作業はあるのだが、編集と営業のメンバーからネタを募集してみることにしてみた。
募集の前に注意したのは、「期待値コントロールをあわせる」ということ。いろいろな話を聞くに、自動化を進めたいユーザーとRPAのシナリオを作成する開発者のギャップが大きいと、プロジェクトが頓挫してしまう。あまり期待が高すぎると実現は難しいが、期待が低すぎるとたいした自動化ができない。そのため、ヒアリングに際しては「RPAでこんなことできますよ」といった具体例を出すようにした。
チャットで募集したところ、さっそく上司から来たのは、「スプレッドシートに記載した内容を日付に合わせてメールしてほしい」という進行アラートの内容だ。編集部では、記事の締め切りをスプレッドシートで管理しているが、締め切りに差し掛かっている前日に担当者がアラートを出している。Excelのスケジュールシートにある締め切り日を定期的にチェックして、定型の文面でメールを出せるようにすれば実現できそう。
同僚の大塚から来たのは「発注確認メールの確認」の送付だ。これはライターやカメラマンなどに編集部から発注した記事本数、単価、総計などをメールで送付して、確認メールをいただくというフロー。いわゆる原稿料処理の一部だが、確かに自動化できたら楽だなあと思う作業の1つでもある。その他、発注確認メールのやりとりのPDF化や請求書のファイル名変更、Googleドライブへのアップロードなどの作業があるのだが、これがまとめてボタンポチでできたらどれだけ楽だろう。ほかの編集者も喜びそうなので、これはぜひ実現したい。
サイト分析担当から来たのは、週次のPVレポートの数値更新作業。アスキーでは現在、60以上のマイクロサイトを運営しており、編集者と営業が定例ミーティングでPVなど各KPIをチェックしている。そこでの最新の数値更新は現状スプレッドシートからレポートに手動でコピペしていて、けっこう工数をとられているとのこと。やっていること自体はシンプルなのだが、コピペ作業の連続は心が折れるので、チャレンジしてみたい。
「RPA操作レシピ」を知らないのはもったいない!
この連載もすでに5回目。RPA導入の経緯を説明し、セミナーに参加し、試作にチャレンジし、今回は自動化の対象になりそうな業務をヒアリングしてきた。この間、マニュアルを参照しながら操作を数時間試したものの、壁にぶち当たりの連続で、なかなか本番業務で使えそうなスクリプトが作れない。試用期間も決まっているので、そろそろ焦ってきた。
エンジニアと異なり、私のような現場担当は普段の仕事の合間でRPA開発を進めるので、もともと捻出できる時間が少ない。しかも知識も足りていないので、効果的に情報収集を行なう必要がある。Autoジョブ名人の開発は、個別の操作をつなげることで、1つの作業を自動化するというスクリプトを作ることになるので、現状は知識が「点」の集まりにとどまっていて、点をつないだ「線」になっていないのが個人的な感想だ。
もっと効率的に情報収集したいという気持ちでAutoジョブ名人のサイトを調べていたら「RPA操作レシピ」というページを見つけた。「Internet Explorer上での操作」「Windowsアプリでの操作」「Google Chrome上での操作」「Excelでの操作」「キーボード・マウス操作」「分岐のチェック処理」「ファイルとフォルダ」「これは便利!応用編」という8つのジャンルに分かれており、操作ごとのスクリプト作成が動画で説明されている。レシピという名前だが、実際は「野菜の切り方」や「調味料の分量の量り方」に近い基礎的な説明で、これらの知識を使って処理をつなげていくとスクリプトになるという感じだ。
今必要なのは操作手順を一から理解するためのマニュアルより、やりたい操作の自動化をピンポイントで知りたいので、こうした動画の説明はありがたい。ただ残念ながらユーザックサイトのかなり奥まった場所にあるので(笑)、既存ユーザー向けにはもう少しアピールしてほしいところだ(RPA操作レシピ:https://www.usknet.com/services/autojob/movie/)。
それにしても、みんなどのように情報収集して、どのように時間を捻出しているのだろうか? つまずいたときにはどうしているのだろうか? そんなことを考えていたら、ユーザックシステムから、ちょうど別のメーカーのRPA製品からAutoジョブ名人に乗り換え、スクリプト作成にチャレンジしている会社があるという情報を得られた。せっかくなので、ぜひお話を聞きたい。次回はそんなAutoジョブ名人の初心者ユーザーにインタビューしてみたいと思う。
コラム 必要性はわかるが、興味のない作業はRPA化すべき
先日、不動産管理会社に勤めるかみさんから「前任者から保険手続きの業務を引き継いだのだが、前任者の説明が要領を得ないのでストレス」という話を聞いた。簡単に言えば、前任者が利用するシステムのメニューの操作しか理解していないので、この作業がなんのために必要なのかはわかっていないという内容だ。
具体的には、保険会社ごとのシステムにログインして、契約や解約、更新などの手続きを行なうのだが、前任者からの説明が単純に操作手順をなぞるだけで、不要では?と思える操作も多かったという。「なぜこの操作が必要なのか?」という質問に対して、前任者からは「こういうものなの」という答えしか返ってこない。説明も操作を追っているだけなので、「だったらマニュアル読めばいいじゃん」という話になる。
みなさんはこういった「業務の引き継ぎ」は経験したことはあるだろうか? 私は、かみさんの愚痴を聞いて、これこそRPA化すべき作業だなと思った。正直、「業務の中身を理解してから、作業を進めたい」というかみさんの方がたぶんレアケースで、世の中の多くの人はあまり考えず、この手の操作をマニュアルに則って淡々とこなしている。
たとえば、筆者への原稿料の支払い登録という作業は、発注書のメール送付や請求書名の書き換えなどいろいろ面倒な操作が発生している。私も「面倒くさいな」と思いつつ、あまり考えずに淡々とやっているし、部下にこの作業を引き継ぐ場合は、前述したように操作手順をなぞるように説明するだろう。筆者への大切なお支払いなので、作業の必要性は理解しているのだが、作業自体にはまったく興味はない。裏を返せば、操作マニュアルがあるのなら、そんな作業はさっさとロボットにやらせてしまったほうがよい。
そして私のような記者・編集者は読者が喜ぶ企画や制作に集中した方がよいだろう。営業マンは顧客のヒアリングや企画書作りに、マーケティング担当者は潜在ユーザーに関心を持ってもらう施策やイベントの立案に専念すべきだろう。きちんとスクリプトが動作すれば、RPAは速いどころか、ミスなく、正確にこなしてくれるはずだ。
この連載の記事
-
第7回
sponsored
RPAコミュニティ「名人+(Plus)」に参加して質問してみた -
第6回
sponsored
ついに完成!誰しも面倒くさがる交通費精算を省力化するRPA -
第5回
sponsored
現場での開発でRPAに再チャレンジするサワーコーポレーション -
第3回
sponsored
エンジニアでなくてもRPAのスクリプトは作れる -
第2回
sponsored
Autoジョブ名人のセミナーでログインの自動化を試してみた -
第1回
sponsored
そろそろ自動化しないとやばい? 編集部がRPA導入を試すわけ
この記事の編集者は以下の記事もオススメしています
-
sponsored
そろそろ自動化しないとやばい? 編集部がRPA導入を試すわけ -
sponsored
Autoジョブ名人のセミナーでログインの自動化を試してみた -
sponsored
エンジニアでなくてもRPAのスクリプトは作れる -
デジタル
RPA導入前に知っておきたい投資対効果の考え方 -
デジタル
ユーザックシステム「Auto名人シリーズ」のユーザーが1000社を突破