ハイパワー化が進むゲーミングPCは水冷が当たり前になっています。しかし、CPUやチップセットを冷やさなくてはいけないのはPCだけではありません。5Gのサービス開始でそのインフラ、すなわち5G対応の基地局が増えていますが、その基地局も今や水冷システムを搭載する時代になっているのです。
ノキアが日本で10月に開催したイベント「NOKIA Future Connected 2020」では、開発中の水冷に対応した5G基地局「リキッド冷却5G AirScale基地局」の展示がされていました。スマートフォンの利用になくてはならない携帯キャリアの基地局、それも水冷式になっているというのです。
スマートフォンの電波はアンテナから飛んでいます。そのアンテナは電波を送受信し、それを処理するのが基地局です。基地局の中には基板があり、その上にはチップセットなどが搭載されています。構造は違えどPCの基板と同じようなものが乗っているわけです。5G時代の基地局は処理するデータも多く、発熱量が増大しています。これまで基地局は空冷ファンなどで冷却していました。
つまり基地局を動かすためには内部動作だけではなく、冷却のための電力も必要になります。ところがその電力エネルギーのうち、90%が廃熱として放出されてしまうとのことです。
リキッド冷却5G AirScale基地局は、内部基板の上に水冷ユニットを取り付けることで基板を冷却します。使用されるのは水ではなく特殊な冷媒液です。水冷式は冷却能力が高いため消費電力を抑えることができます。ノキアによると冷却に必要な電力は、従来の冷却方式に比べ10%程度で済むとのこと。また、冷却ユニットを小型化できるため、基地局の小型化も可能になります。
PCでも水冷式には「高冷却能力」「静音」「小型化」といったメリットがあります。リキッド冷却5G AirScale基地局も同様のメリットを持っているわけです。また冷媒の交換は基本的に不要なので、メンテナンスにかかる費用も削減できます。
さらに基板を冷やした冷媒は屋外の熱交換器を通して廃熱されますが、その廃熱を利用することも考えられているとのこと。このあたりは環境対策を重視する北欧企業らしい設計でしょう。
ノキアは現在、フィンランドのキャリア・Etisalatと協業して水冷式基地局のテストを行なっています。これから各国で5Gエリアの拡張が続きますが、静かで低消費電力な水冷基地局が増えていくことでしょう。
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