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グローバル調査からCX成熟度とビジネス成長の相関性を指摘

“顧客体験=CXチャンピオン企業”になるには? 5つのコツをZendeskが解説

2020年11月09日 08時00分更新

文● 五味明子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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CXチャンピオンになるための「5つのコツ」を解説

 マクダーモット氏は続けて「CXチャンピオンになるための5つのコツ」として、以下のキーワードを挙げ、それぞれがなぜ重要なのかを説明していった。

・セルフサービス ・メッセージングチャネル ・AI ・データ ・ローコード開発

◇問い合わせ対応はセルフサービスに …チケット処理は例外へ
 CXチャンピオンは、顧客からの問い合わせ対応にセルフサービス(FAQサイト閲覧などの自己解決型サポート)をうまく活用しており、エージェントによるレスポンス率が高い。とくにパンデミックや高齢化社会の進行といった社会的事情を考えれば、セルフサービスの導入によって顧客が自分自身で解を探しあて、問題解決までの時間を短縮するほうが望ましいと言える。

 マクダーモット氏は「顧客からの問い合わせの量は、社内リソースの拡張よりもはるかに速いスピードで増加している」というForresterのコメントを引用しながら、ハイパフォーマー企業の76%がセルフサービスを提供しており、顧客サポート用の問い合わせチケットは「今後、例外処理的な存在になる」と語る。

 さらに、セルフサービスの拡充がCX成熟度においてキーポイントである以上、FAQなどのコンテンツ戦略を確立しておく必要があると、マクダーモット氏は強調している。「情報を提供する側がうまくコントロールすれば、セルフサービスを通じてCX向上につなげることができる。セルフサービスの仕組みは時間の経過とともに改善されていくものであり、ナレッジが増え、精度が高まれば、顧客とエージェントの対話も増え(質が向上し)、チケットの発行は減る。より良いコンテンツを蓄積していくためには、マシンラーニングなどAIの活用も効果的だ」(マクダーモット氏)

セルフサービスの改善はCX向上に直結しやすい。ZendeskはAIを活用したツールなどでセルフサービスの向上を推奨している

◇メッセージングアプリは若者だけのものではない … 新たなチャネルとして導入する
 マクダーモット氏は、全世界のスマートフォンユーザの85%がメッセージングアプリ(LINE、WeChat、WhatsAppなど)を使っているというデータを引用し、CX向上においてもメッセージングはデフォルトのコミュニケーション手段であることを強調する。調査によれば、メッセージングアプリの顧客満足度(CSAT:Custromer SATisfaction)は98%と、どのチャネルよりも高いという。マクダーモット氏はその理由として、「エージェントとの会話の記録が残るので、より効率的なコミュニケーションが可能」であることを挙げている。

 当然ながら、CXチャンピオン企業はメッセージングチャネルの活用にも長けており、たとえばエージェントがチャネルからチャネルへとスムースに移動できるように設計されているCXチャンピオン企業は、スターター/ライザー企業比で2.3倍となっている。

 メッセージングチャネルの今後についてマクダーモット氏は「単なる会話を超えた、トランザクションとしての活用がより求められるようになる。メッセージングチャネルのトレンドをキャッチアップすることはCXチャンピオンになるための重要な要素」と語り、CX成熟度を高めるにはメッセージングチャネルの進化に引き続き注目していく必要があるとしている。

普及しているメッセージングアプリを通じたつながりを求める顧客は多い。単なるチャット/会話以外のさまざまなやり取りも可能だ

◇AIはもはやガラクタではない … AIを適材適所に使う
 先に挙げたセルフサービスやメッセージングチャネルも含め、いまやAIは顧客対応のあらゆるシーンで使われている技術だが、アルゴリズムのバイアス(偏り)がレコメンドや回答などにおける正確な判断を妨げるケースも少なくない。また日本企業にとっては、AIによる日本語の解析は英語ほど精度が高くないという問題もある。しかし、マクダーモット氏は「パンデミック以降、AIをCX向上に採用する企業は急激に増えている」と指摘しており、それを示す定量的なデータとして以下を挙げている。

・63%の顧客が人間とのチャットよりもボットにメッセージを送ることを好む ・ZendeskでAIの利用を選択する顧客数は過去2年間で95%増加 ・ハイパフォーマー企業はローパフォーマー企業に比べて2倍以上AIを活用

 これらのデータを踏まえ、マクダーモット氏は「AIは正しく使えば非常にパワフルな存在であり、十分に継続投資の価値がある」と結論づけており、とくに「(アンサーボットによる)自動化」「レコメンデーション」「予測」という3つの領域で、AIの適用を進めていくことを推奨している。

◇データがあなたを自由にする … データを味方に付ける
 現在の企業が扱う顧客データ量は「5年前の約3倍」とも言われているが、データを使いこなしている企業は少ない。マクダーモット氏は「データを駆使してCXトレンドを理解することが、これからますます重要になってくる。CXチャンピオンの多くはデータから引き出されるCX関連のレポートを、スターター/ライザーに比べて8.4倍も多く読み込んでいる」と、データのハンドリングにおいてもCXチャンピオンはすぐれていることを強調している。

 企業にとって顧客データを含むデータのハンドリングが難しい理由としては、「データおよびデータソースが社内外に分散している」「データにノイズが多すぎて重要なインサイトの抽出が困難」「データを扱うツールが使いづらい」といったことが挙げられる。

 この中でもっとも改善しやすいポイントが「ツール」だ。マクダーモット氏はデータを使いこなせる専門人材を「データニンジャ(忍者)」と呼ぶが、「(CX成熟度を上げたいなら)データニンジャでなくとも使えるツールに投資するべき」だとコメントしている。ツールの使いやすさはデータの民主化にも直結する要素であり、CXチャンピオンのように日常的にデータを駆使しながら顧客サービスを改善していくためにも、いま一度、使用しているツールを見直すべきだろう。

ツールの使いやすさはCX向上に必須ではあり、取り組みをスタートしやすいポイントでもある。AIやローコード開発など、ほかのポイントとも関連してくる

・開発者を解雇する(冗談!) … ローコード開発の一般化
 マクダーモット氏は、調査会社のガートナーが発表した「2024年までにローコード開発がアプリケーション開発全体の65%以上を占めるようになる」というデータを引用し、「開発者を解雇しよう――というのはもちろん冗談だが、今後は、専門の開発者でなくともソフトウェアを開発できるローコード開発が主流になる」と語る。

 ソフトウェア開発に投入できるリソースの割合は、CXチャンピオンもスターター/ライザーもそれほど変わらない。ただしCXチャンピオンは、その他の企業と比べてかなり包括的に各顧客チャネルの戦略を立てている。その背景には、自社内の顧客データを集約/統合するシステムを自分たちで構築しているという違いがあるという。

 マクダーモット氏は「ローコード開発の普及により、開発者はこれまでより20倍速くコードを書けるようになる。今後はローコード開発者、いわゆる“シチズンデベロッパ”が開発人員のほとんどを占めるようになる」という見通しを示した。ローコード開発のメリットを活かして「より良く、速く、簡単に」ソフトウェアを開発していくことがCX成熟度向上のカギになるとしている。

* * *

 Zendeskの今回の調査レポートは、パンデミックの状況下にあっても高いカスタマーエクスペリエンスを提供し続けている企業はビジネスも順調であることの相関性を定量的なデータを用いて示している。とくにCXチャンピオンに共通して見られる5つの特徴は、パンデミック前から続けてきたCXへの投資が、困難な時代にあっても有効であったことを裏付けているといえる。5つの要素をすべて実現するのは難しくとも、ツールの見直し/導入など取り組みやすいところから始めることで、日本企業のCX成熟度にも良い変化の兆しが見えてくるかもしれない。

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