AIによるアクションプラン推奨や結果予測を組み込んだ経営ダッシュボードなど6つの新サービス
アクセンチュア、幅広い業務を支援する「AI Poweredサービス」拡充
2020年10月26日 07時00分更新
アクセンチュアは2020年10月21日、AI技術を活用した業務支援ソリューション「AI Poweredサービス」のラインアップ拡充に関する記者説明会を開催した。AIがアクションプランの推奨と、プラン実行時のシミュレーションやリスク指摘を行い意思決定を支援する経営ダッシュボード「AI Poweredマネジメントコックピット」など、6つの新サービスを紹介した。
精度のばらつきや属人性を排除した経営意思決定を支援する経営ダッシュボード
アクセンチュアでは昨年6月から、AI Poweredサービスの第一弾として4つの業務ソリューションを提供している。オムニチャネルのコンタクトセンターでAIの自動応答と人(エージェント)による柔軟な対応を連携させる「AI Poweredコンタクトセンター」、AIコンシェルジュとバックオフィス社員(BPO含む)の協業を実現する「AI Poweredバックオフィス」、対面接客時の音声を認識/理解して会話内容に応じた情報を提示する「AI Poweredコンシェルジュ」、サプライチェーンにおける需要予測や最適化、作業の自動化などをAIが支援する「AI Powered SCM」の4つだ。
これらのAI Poweredサービスは、2016年から提供している「AI Hubプラットフォーム」をベースに構築されている。このプラットフォームは、それぞれに得意分野を持つAIエンジン群を組み合わせ、適材適所での活用を可能にするものだ。そして今回、このAI Poweredサービスのラインアップに、新たに6つのサービスが追加された。
今回の説明会では特に、AI Poweredマネジメントコックピットが詳しく紹介された。
従来からあるマネジメントコックピット(経営ダッシュボード)は、経営判断において最新のKPIを可視化し、それに基づいて人間(経営層)が意思決定を行うためのものだった。AI Poweredマネジメントコックピットでは、そこにAIによる予測やアクションプランの推奨、プラン実行時のシミュレーションといった能力を付加している。
発表会で紹介されたデモではまず、マネジメントコックピットに、ある事業の売上が数カ月後に目標を下回るという予測(アラート)が表示された。ここで「AIレコメンデーション」画面に切り替えると、AIが推奨するいくつかのシナリオと、それを実施した場合のシミュレーション(予測KPI)、さらにシナリオ実施時に考えられるリスクが表示される。人間はこれを参照しながら迅速に、より的確な意思決定を行うという仕組みだ。
これにより、担当者ごとに生じる予測精度のばらつき、意思決定基準の属人化、意思決定までにかかる時間といった課題を解消し、経営者と担当者の意思疎通も図りやすい早期の経営判断ができる。
そのほかの新サービス概要は次のとおりだ。
●AI Poweredナレッジシェアリング:企業のナレッジ管理にAIを適用、蓄積されたナレッジの意味をAIが理解したうえで、横断的な検索や提示を可能にする。
●AI Poweredプロダクツ&サービス:販売した製品から収集したデータに基づき、ユーザー一人ひとりにパーソナライズされた機能やサービスを提供するバックエンドプラットフォームを実現する。
●AI Poweredセールス:営業活動にかかわる社内外のデータをAIが分析し、対話型で営業担当者への情報提供(顧客情報、過去の商談経緯など)を行う。
●AI Poweredアセットメンテナンス:ドローンやセンサーにより収集した設備や建造物の映像/音声などのデータをAI分析し、点検業務の効率化と異常の早期発見、劣化傾向の予測による計画点検/補修を実現する。
●AI Poweredタレントイノベーション:データに基づいて、従業員体験(EX)を向上させるきっかけ(MOT)を分析、それを作り出すことで優れた人材の確保と維持につなげる。
“AIはもはや当たり前”時代の到来と、AI本格導入を阻む“障壁”の解消
説明会に出席したアクセンチュア ビジネスコンサルティング本部 AIグループ日本統括 AIセンター長 マネジング・ディレクターの保科学世氏は、現在は「DIGITAL IS EVERYWHERE(デジタルはもはや当たり前)」から「AI IS EVERYWHERE(AIはもはや当たり前)」へと移行しつつあり、「仕事や生活、あらゆる側面でAIが浸透し、なおかつ活用も進んできている状況ではないか」と分析する。
アクセンチュアによる企業経営者へのグローバルサーベイでも、84%が「成長目標を達成するためにAIを活用するべき」と回答し、さらに75%は「次の5年間にAIをビジネス全体で活用しない場合、倒産してしまうリスクがある」と危機感を持っている。しかしその一方で、ビジネスへのAI適用には“障壁”があることも事実で、76%の経営者が「パイロットの方法は分かるがAIをビジネス全体で活用させることに苦労している」と回答している。
保科氏は、さまざまなAI導入プロジェクトでの体験もふまえ、こうした「AI活用への障壁」が生まれる原因を3つ挙げた。
「まずは『AI活用そのものが目的になっていませんか』ということ。AIを手段として実現したい顧客体験がイメージできていない、業務改善ならば業務の全体像や理想像が思い描けていない、ぶれてしまっている。2つめは、現在のAI技術は機能特化型なので、実業務に適したAI技術、またその組み合わせを選定するのが難しい。そして3つめは、対象業務にひも付いた既存の基幹システム、業務システムにAI技術をどう組み込むのか、どう変えていくのかを描けない」(保科氏)
そのため、アクセンチュアにおいては、AI活用プロジェクトを進めるうえで「あるべき業務、あるべきシステムに対する理解」「AIとヒトとの協調」「AI技術の適材適所な配置と組み合わせ」を重要視していると説明する。
保科氏は、今回発表したAI Poweredサービスだけでなく、アクセンチュアはあらゆる業務領域におけるAI活用を支援していると説明した。AI技術やAIサービスの提供だけでなく、データ活用を最大化するための業務設計やシステム設計の見直しと再構築、またAIの業務活用にむけた人材育成や定着化といった部分での支援も行っている。
また、そうした支援を行う国内拠点として、アクセンチュアでは「イノベーション・ハブ東京」「イノベーションセンター福島」「インテリジェント・オペレーションセンター福岡」を展開しており、さらに10月には「AIセンター」も赤坂に開設している。
「われわれは幅広いAI Poweredサービスを開発しているし、さまざまな人材もそろっている。方法論も拠点も持っている。こうしたものすべてを駆使して、日本企業におけるAI活用をサポートしていきたい」(保科氏)