国内エンタープライズ顧客のクラウドシフトを支援し、アジアへの進出も視野に
CTCとMegazoneのプレミアコンサル同士の提携はコロナ禍を乗り越えた“国際結婚”
2020年10月12日 10時30分更新
7月に発表された伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)と韓国でAWS導入実績No.1を誇るMegazone(メガゾーン)の業務・資本提携。AWSで最上位となるPremier Consulting Partner同士の海を越えた提携は、どういった意図で、なにを目指して生まれたのか? CTC 常務執行役員 粟井 利行氏とMegazone 代表取締役Max Lee Joo Wan氏に話を聞いた。(以下、敬称略 インタビュアー アスキー編集部 大谷イビサ)
韓国でAWS導入実績No.1を誇るMegazoneとは?
-まずはMAXさん、Megazoneの会社概要とビジネスの成長について教えてください。
MAX:MegazoneはAWSインテグレーションを提供しており、アジアで最大の8個のAWSコンピテンシーを保有しています。2020年はAI関連のコンピテンシーを取得する予定です。売り上げに関しては、2018年は2000 億ウォン(約200億円)でしたが、2019年は4200億ウォン(約420億円) と倍以上に伸ばしています。今年はコロナウイルスの影響もあり、成長率は鈍化すると思いますが、それでも5500億ウォン(約550億円) を超えると見込んでいます。
-こうした高い成長を支えるMegazoneの強みを教えてください。
MAX:総合的にサービスを提供しているのですが、過去8年間の実績を見ますと、ゲーム業界に強いということが挙げられます。ゲーム業界の拡大にあわせて弊社も成長してきたと言えます。ここ2~3年はエンタープライズの業績が伸びています。最近ではグローバルのトレンドですがDXの流れに乗っています。今まで50人かかっていた仕事をAI化して、8名でできるようになったような事例もあり、エンタープライズ企業からも注目されるようになっています。
-韓国でもAWSへの関心は高まっていますか?
MAX:はい。韓国は2016年にソウルリージョンができあがったので、日本から3年くらいは遅れているという認識です。でも、そこから年々ダブル成長を遂げていると聞いています。
-日本市場についてはどういった認識ですか?
MAX:これまで韓国やアジア市場を中心に事業を展開してきました。日本でも韓国企業向けのサービスは提供していましたが、日本市場についてはあまり知らなかったというのが正直なところです。
グローバルでの先進的なクラウド利活用を、日本のお客様へ拡めたい
-次にCTCとして今回Megazoneとの提携に至った経緯を教えてください。
粟井:前提として、クラウドの利用がわれわれのお客さまであるエンタープライズに拡がってきたという点があります。AWSも、当初は日本ではゲーム業界やEコマース、ベンチャーなどの企業がアーリーアダプターとして採用していましたが、今ではエンタープライズ企業が当たり前のようにAWSを使っています。AWSはもちろん、Azure、GCPなどのパブリッククラウドの波が確実にやってきているという認識です。
こうした中、他社に比べた競争力をいかに維持成長させていくかをしっかり考える必要が出てきました。クラウドインテグレーションにおける競争力を高めつつ、クラウドとオンプレミスを共存的に活用したい、複数のパブリッククラウドを使い分け・組み合わせたいといった日本のお客さまの多様なニーズにお応えするため、今回のMegazoneとの提携に踏み切ったという背景です。
-CTCが技術力の高い老舗のSIerであることは業界では認知されています。当然、独力で展開するという道もあったと思うのですが。
粟井:われわれはオンプレのSIを長らくやってきましたので、会社全体としてみると、まだこのビジネスは重要な位置づけです。一方でクラウド案件は急速に増え続けています。クラウドの成長にあわせたリソース確保や協力体制の構築は、すべて自前でやるのではなく適切なパートナーと共創していく、これがCTCの答えです。
-会社の規模の違いは問題なかったのでしょうか?
粟井:われわれは普段はシリコンバレーの会社とおつきあいすることが多く、ベンチャーの商材を日本で展開するのは手慣れています。むしろMegazoneは大きいくらいなので、やりやすかったと言えます。
まさか資本提携にまでつながるとは思わなかった
-具体的にはどのようなステップを踏んで提携に至ったのでしょうか?
粟井:Megazoneが日本でのビジネスを本格展開するという噂を耳にし、すぐに連絡をとってお話をお伺いしました。その際のお話からすぐにMegazoneを視察し話を進めるべきだと即断判断し、昨年の10月、エンジニアチームを韓国のMegazoneに派遣して、どんな会社かを調べてもらったのですが、とても先進的な会社であることがわかりました。11月には社長が日本に来てくれたのですが、すべての質問にきちんと回答していただき、とても誠実な方という印象を持ちました。私は「この方だったら、いっしょになにかできるのではないか」と感じました。
-MAXさんは最初に会ったとき、どんな印象を持ちましたか?
MAX:お会いしたCTCの方々は、とても誠実に悩んでいました。国が違えど、その悩みはクラウドサービスの事業者として同じだったので、とても共感できました。CTCは日本で40年以上ビジネスを手がけてきた大手SIerですし、きちんと検証されたソリューションを提供しているという点においても、弊社にとって理想的なパートナーです。だから、提携のような形になるかはわかりませんでしたが、いっしょに仕事をしたら、シナジーが出るという直感はありました。
韓国では、CTCのような大企業への提案の場合、ポリシーがあったりするので私たちの意見をきちんと聞いてくれなかったり、尊重してくれないケースもあったりしますが、CTCは大企業でありながら、私たちを尊重し一緒にやろうという気持ちを態度で示してくれました。もちろん、CTCとしても最初にお会いした段階では、具体的な目的やプランがあったわけではなかったと思います。ですから、まさか資本提携にまでつながるとは想像できませんでした。
-今回は単なる業務提携ではなく、Megazoneへの資本提携にまで踏み込んでいるのですが、ここらへんは期待の表れということでしょうか?
粟井:今回の提携が、どこまで踏み込んだ資本提携なのか?は、よくご質問を受けます。
米国のMegazone Corporationへの出資契約は、CTCが米Megazone Corporationの日本法人MEGAZONE株式会社に出資をするもので、CTCは米国のMegazone Corporationから該当株式を購入しました。一言でいうと合弁事業の立ち上げです。出資金額や比率等は非公開とさせて頂いていますが、日本拠点であるMegazone株式会社を中心に今後のビジネス開発を進めていくことを描いています。
-実際の提携への話し合いはスムーズに行ったのでしょうか?
MAX:コロナ渦の中、お互いに行き来できず、すべてオンラインでのやりとりで、特に誤解もありましたが、粟井さんはもちろん、CTCのさまざまな方が、 とても誠実に接していただいき、感動を受けました。
コロナ禍で会えない中でも、困難を乗り越えて国際結婚にこぎ着けたカップルのようです(笑)。これも片想いだったら、ダメでしたが、なんとか両想いで提携を実現できたのが今回のポイントだと思います。
Premire Consulting Partner同士が組むシナジーとは?
-今回、特徴的なのはAWSのパートナーとしては最上位となるPremire Consulting Partner同士のパートナーシップということです。
MAX:提携でシナジーが出ると感じたのは、両社がむしろPremire Consulting Partner同士だったからということが挙げられます。どちらかがPremire Consulting Partnerでなければ、持っている方が持っていない方を教育する必要があるので、やはり時間がかかってしまいます。でも、両社ともトップクラスの実力を持っているのであれば、シナジーを出しやすい。両社がトップスピードのままビジネスを展開し、互いに得た知見、経験、ノウハウなどを共有し合い、強みを活かし弱みを補いあえる関係性がとても重要だと思っています。
粟井:Premire Consulting Partnerは基本、国ごとに取得するもの。だから、お互いが切磋琢磨し、強い部分を伸ばしていくのは、まったく問題ないです。さらにその知見などを共有し合ってお互いのビジネスに反映させていくわけですから、これほど強力なパートナーシップはありません。
MAX:Megazoneはどちらかというとクラウドネイティブな会社。その分野では競争力を持っていますが、ITというより大きなくくりになると、SIが重要になると思っています。ですから、クラウドネイティブなわれわれと日本国内ですでにお客さまから信頼を勝ち得ているSIerであるCTCが手を組むことで、競争力を高めることができます。
-CTCとしてMegazoneに期待するもの、逆にCTC側の強みはどうお考えですか?
粟井:Megazoneに期待するのは価格競争力の源泉ともなる圧倒的なバイイングパワーとすばらしいポータル、グローバルでの先進的な事例への取り組みです。ポータルはインスタンスがどこでどのように使われているかだけでなく、どうすれば効率的に使えるかまでわかります。最近は、LOBが利用しているクラウドを、情報システム部門がきちんと運用・コントロールしなければならないという動きも出ているのですが、そこにフィットするのがまさにMegazoneのポータルなんです。
一方で、われわれが抱えているのは日本でのエンタープライズの顧客基盤。そしてマルチベンダーのSI力です。オンプレの時代からずっとマルチベンダーを強みとし、ノウハウを重ねてきました。だから、ネットアップのストレージやアバイアのコールセンターをクラウドで利用したいというお客さまの声にも対応できます。MegazoneのバイイングパワーとポータルをCTCが持つ日本のエンタープライズの顧客に提案しつつ、あわせてマルチベンダー・マルチクラウド的なアプローチも提供できます。これはなかなかいい組み合わせだと思います。
圧倒的なNo.1インテグレーターになり、アジア市場も狙っていく
-提携を受けて、今後は具体的にはどのような活動になりそうでしょうか?
粟井:重要なのはこれから半年間です。どのように結果を出せるのかを両社で相談していきますが、基本的にはやりながら、軌道修正しながら進めていくのが、今の時代のやり方だと思っています。とにかくいっしょにやれることが楽しみでしようがないです。
MAX:すぐに結果を出せそうなのは、日本やアジアのエンタープライズ企業に向けた価格的競争力です。費用を低減できるというのはわかりやすいし、顧客にとってもインパクトがあります。次の展開としては、韓国のエンタープライズ企業で検証を受け、効率的に利用できるとわかっているソリューションを日本で展開することです。CTCさんといっしょに検証・ローカライズを行ない、日本のお客さま向けにいいものに仕上げていくのが重要だと思っています。
-最後に今回の提携の目標や今後の展開について教えてください。
粟井:Megazoneの技術やノウハウを吸収しながら、早くクラウドインテグレーターとして日本でも圧倒的No.1になりたいし、Megazoneといっしょにアジアの市場も目指していきたいと思っています。
今後の展開を考えれば、日本よりアジアの方がクラウドの普及は早いかもしれません。われわれはシンガポールやマレーシア、タイ、インドネシアなどに事業会社を持っていますが、CTCとMegazoneでシナジーが出せれば、おそらく現地法人でも提携のメリットを出せると思っています。
MAX:CTCだけではなく、Megazoneの持っているブランチにおいても、日本や韓国で検証できているソリューション、経験、組織を提供していきたいです。
粟井:今後の展開は正直、なんでもありなんじゃないかと思っています。Megazoneが開発したものをアジアで同時に展開していくとか、提携の効果が大きいと踏んだ段階で、もう1歩深い提携に進むかもしれません。
-ありがとうございました。