昨年ごろまでは、高級機種の代表機能だったアクティブ・ノイズ・キャンセリング(以下ANC)。現在もそれは変わらないが、2020年後半は、1万円程度と買いやすい価格帯の完全ワイヤレスでも、普通に乗っている機能になりつつある。
そんな中、TaoTronicsが発表したのが「SOUNDLIBERTY 94」だ。Amazon.co.jpの価格は9999円の衝撃プライスだ。
TaoTronicsというと、2016年ごろに登場した「TT-BH07」「TT-BH06」の記憶が鮮烈だ。まだ、Bluetoothイヤホンが高価だったころ、2000円台という圧倒的な低価格で登場。しかも、価格の安さを感じさせない高音質を提供した製品だ。市場に大きな話題を提供した。
その後も、低価格Bluetoothイヤホンの注目ブランドとして数多くの製品が登場してきたが、正直言って、いいものもあれば、まあ普通という感じのものも多かった印象はある。しかし、このSOUNDLIBERTY 94は、TT-BH07/TT-BH06以来の衝撃を感じさせる仕上がりと言っていいと思う。
もしあなたが、「ノイキャンいいよね、でも高いよね」と、二の足を踏みがちなピープルのひとりだったとしたら、この製品は“即ポチ”推奨の製品である。その理由をざっくりとお伝えしよう。
ただのANCじゃなくて、ハイブリッドANCだ
オススメ理由その1は、ノイキャン性能の高さである。これは重要にして、最大の推しポイントと言える。
ノイキャンと一口に言うが、実は一様ではない。完全ワイヤレスでは、ノイズ集音用マイクを置く位置によって、フィードフォワード(シェルの外側)、フィードバック(シェルの内側)の2種類の方式があり、さらに、フィードフォワードとフィードバックの両方を組み合わせた方式をハイブリッド式という。
精度で言えば、ハイブリッド式が優れるが、ノイズ成分を取り除くために高い処理性能が求められるため、高価になりがちだ。そのため、初期、あるいは1万円程度のノイキャン完全ワイヤレスでは、フィードフォワード方式のみというものが多かった。
そんな中、SOUNDLIBERTY 94はハイブリッド式ANCを搭載して1万円以下というのがスゴイ点である。
さらに、その性能が高い。最大35dBのノイズ低減効果をうたうが、耳栓をしたときのようなピッタリと耳にはまるフィーリングも相まって、ANCオンの状態では、恐ろしいほどの静寂感が得られる。これは言葉で書くよりも、体験してもらうのが一番だが、人が多く行きかう駅や、タクシーの車内など、もともと強い騒音がある環境はもちろん、もともと静かな図書館やコワーキングスペースといった場所でもその効果はてきめん。ぐっと集中感が高められる。
もちろん騒音が減ることで、音楽や通話時の微細な表情がつかみやすくなるという点もメリットだ。
ヒアスルーのできもいい
ANC機能と切っても切れない関係性にあるのがヒアスルーだ。すでに述べたように、SOUNDLIBERTY 94のノイズキャンセリング性能は非常に高いのだが、逆に騒音をカットしすぎて、周囲の状況が分かりにくいというデメリットがある。
その際に登場するのがヒアスルーだ。で、この製品のヒアスルー、かなりできがいい。左側のイヤホンを2回タッチすると、モードが切り替わるが、無音から一転、周囲の音がクリアに聞こえる。
もうひとつ重要なのが、ヒアスルーのイコライジングだ。単に感度の高いマイクで収音しただけでは、タッチノイズやキーボードをたたく音などが目立ってかえって不快になる。しかし、SOUNDLIBERTY 94では車の近寄ってくる音、あるいは周囲の物音など、聞こえてほしい音は通すが、上述したような聞こえなくていいものはうまく除いてくれる。この調整が優れており、不自然さがない。ここまで高精度なヒアスルーをこの価格帯の機種で体験できるとは思っていなかった。
そして、タッチセンサーの感度が優れ、モード切替が速い点なども好印象である。