発表した新種のビフィズス菌は、ビフィドバクテリウム属ロンガム種に所属するもので、菌株は「AuB-001」と命名
元浦和レッズ鈴木啓太氏起業のAubが新ビフィズス菌発見の成果発表
2020年09月04日 15時00分更新
サッカー元日本代表で、浦和レッズのキャプテンを務めた鈴木啓太氏率いるAuBが9月2日、新種のビフィズス菌を発見したことを発表した。アスリートの腸内環境を調べようと起業してから5年、鈴木氏は「もっと早く会社を成長できると思っていたが、研究は数年がかることがわかった」と苦笑しつつも、成果を喜んだ。
AuBが発表した新種のビフィズス菌は、ビフィズス菌(ビフィドバクテリウム属)ロンガム種に所属するもので、菌株は「AuB-001」と命名した。現在、国際特許として出願済み、2020年中に審査の結果がわかる見通しだ。
ビフィドバクテリウム属ロンガム種は腸に有効なビフィズス菌とされるが、AuBが発見したAuB-001はいくつかの特徴を持つ。まずは、酢酸の産出。リンゴなどに含まれるソルビトールを栄養源にでき、糖を分解する過程で一般的な同種の菌よりも約11倍多く酢酸を作るという。酢酸は感染症を予防する機能と免疫機能が過剰に働くことを抑える機能の両方を有し、健康において重要な腸内細菌とされる。酢酸と同じく短鎖脂肪酸に分類される乳酸についても、一般的な同種の菌と比較して12倍多く産出するとのこと。
次に耐酸性。一般的なビフィズス菌は胃のなかで死滅するが、胃液に強いことから腸まで生きて届きやすいという。
なお、「ソルビトールを資化能(エサにできる)を持つビフィドバクテリウム属ロンガム種はこれまで未発見」(同社 取締役兼研究統括責任者 冨士川凛太郎氏)とのことだ。
このような特徴から、サプリメントのように直接摂取することに加え、プロバイオティクスであるAuB-001とソルビトールなどプレバイオティクスを一緒に摂取する「シンバイオティクス商品開発に適した菌素材」と冨士川氏。天然と人工の両方のソルビトールを組み合わせた商品の可能性があるとした。自社での製品化だけでなく、外部にも菌を提供する可能性もあるという。
AuBは鈴木氏が浦和レッドダイアモンズ(浦和レッズ)の退団、引退と同じ2015年10月に共同で立ち上げたベンチャーだ(現在代表取締役を務める)。調理師の母から腸の大切さを教わっていた鈴木氏は、サッカー選手時代もコンディション確認の一部として腸内環境を意識していたため、AuBの立ち上げは「セカンドキャリアというより、次のキャリア」と鈴木氏は説明する。アスリートのサポートをしたいと思って立ち上げたが、「アスリートが抱える課題は一般生活者のコンディション課題と通じている。一般の人の健康にも貢献できるのではないか」と設立時の思いを振り返る。
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その後、知人を通じてアスリートから検体(便)を集めて研究を進めた。現在までに集めた検体は1400以上、700人以上のアスリートが参加した。その中には、ラグビー選手の松島幸太朗氏、ランナー神野大地氏などもいるという。競技種類は28にも及ぶ。トップアスリートの検体数としては世界ナンバー1レベルと胸を張る。
AuB-001はその中から見つかったものだが、「元オリンピック選手」以外の情報(競技や選手名)は現時点では非公開。商用化後に、その競技に売り上げを還元するようなことを考えているという。
アスリートの腸内環境は一般生活者と比べて多様性が高く、酪酸菌を2倍以上保有するなど腸内環境が優れているなどのこともわかった。AuBは2019年末、初の製品となるコンディショニングサプリ「AuB BASE」を発表、自社ECで販売しており累計の販売数は「まもなく1万個に達する」とのことだ。
香川にラボを持つ他、2019年には東京日本橋にもラボを開設した。大正製薬などから3億円の資金調達にも成功しており、今年から京セラ、京都サンガF.C.と共同開発契約も締結している。
「これまでアスリートは感動を与えるなどエンターテインメントにフォーカスが当たってきた。これからはアスリートが持つデータをどのように社会に還元するか」と鈴木氏、「健康に関するデータで貢献できることがたくさんあるのではないか」と述べた。