国内VDI活用事例も紹介、コールセンターを“全面在宅勤務化”したチューリッヒ保険も登壇
デル、「VDI当たり前時代」に取るべき戦略や技術トレンドを紹介
2020年09月04日 07時00分更新
チューリッヒが“コールセンター全面在宅勤務化”の要諦を紹介
続いて、VDIを活用して「在宅勤務型コールセンター」へ移行した事例として、チューリッヒ保険が紹介された。同社からはIT運用部 ITS - テクノロジーサービス ITインフラサービスマネージャーの山内栄二氏が登壇した。
ダイレクト自動車保険を取り扱うチューリッヒ保険では、緊急事態宣言の発令にあわせて、カスタマーケアセンター業務を在宅勤務に全面移行。そのためのクライアント端末として、「Dell Wyse 5470モバイルシンクライアント」を採用しているという。
同社では2010年代の初頭から、BCP(事業継続計画)対策の一環として全社的な在宅勤務化の実現に取り組んできた。まずは本社管理部門の一部や保険金支払い業務の在宅勤務化を先行実施し、カスタマーケアセンターは2013年からその構想をスタートした。その結果、2019年の台風15号、19号上陸時には、プロジェクトチームが中心となって在宅勤務を実践した実績もある。
このVDI環境のベースとなっているのはシトリックス製品であり、その専用クライアントとしてWyseシリーズを採用してきた。現在では在宅勤務化をさらに促進するために、ノートブック型で持ち運びやすいWyse 5470の導入を積極化しているという。
従来のこうした積み重ねがあったため、新型コロナウイルスの感染拡大に向けた取り組みも早かった。2月には在宅勤務を推奨し、さらに最悪の事態を想定して、カスタマーケアセンターについても2月中旬から一斉に機器調達を開始。その手配に一定の見通しがついた2月下旬から、在宅勤務への移行に向けた事前研修を開始した。
こうした準備をふまえ、4月8日には東京本社オフィスと大阪オフィスを、さらに4月20日には長崎オフィスを在宅勤務化。これにより、コールセンター業務や保険金支払い業務を含む、全部門の業務を在宅勤務に移行した。4月30日時点での在宅勤務率は約95%になり、700人規模の社員が在宅勤務を行ったという。
在宅勤務においては、オフィス勤務と同等のセキュリティレベルを保つことに配慮した。たとえば、VDIで画面表示している顧客情報などは、PC本体にはコピーできない仕組みとしている。また電話の接続でも、個人が特定できないコールルーティングを実装しており、顧客とスタッフ双方の電話番号が相手に伝わらないよう保護している。
山内氏は、同社がWyseシンクライアント端末を採用してきた理由について、次のように説明する。
「ノートPCの場合は、端末の置き忘れや盗難などを想定してハードディスク上のデータを暗号化しなければならない。また、Windows Updateの適用や利用開始時の操作ステップの多さなど、ユーザー(コールセンタースタッフ)にとっても利便性が悪い部分がある。シンクライアントはセットアップ作業が楽であり、ユーザーからヘルプデスクへの問い合わせも減る。(Wyseシリーズについて)今後は在宅勤務の増加を想定して、軽量モデルや大画面モデルの投入も期待したい」(山内氏)
さらに同社では、配布したWyse端末をクラウドで管理する「Wyse Management Suite(WMS)」の導入も検討している。山内氏は、遠隔地にある端末も含めてGUIで一元管理でき、設定変更も容易になるため便利だと評価した。なおWMSの管理対象OSは、Wyse ThinOS、Windows10 IoT、Linuxとなっている。
チューリッヒ保険では、同業他社を含む幅広い企業に対してこの在宅勤務型コールセンターの仕組みを公開している。同社CEOの西浦正親氏は、「少しでも多くの企業がコールセンターのリモート化を実践できるよう支援したいと考え、プレスリリースや問い合わせ対応などを通じて、運用方法などを公表してきた」と語る。また山内氏は、実際に同業他社からの問い合わせもあり、情報公開にはポジティブな反響があったと述べた。