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JAIPA Cloud Conference 2020の経産省講演レポート

2025年の崖を指摘した経産省DXレポートの筆者が「DX推進の本質」を語る

2020年09月04日 09時30分更新

文● 大河原克行 編集●大谷イビサ

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トップの一声で変わったコロナ渦の霞ヶ関の働き方

 新型コロナウイルスの感染拡大が及ぼす影響についても触れた。

DXへの取り組みと新型コロナウイルスの影響

「新型コロナウイルスという不幸な脅威によって、否応なしに大きな変化に対応することになっている。休校要請や緊急事態宣言などによって、多くの企業がテレワークを採用し、東京都の調査によると、4月時点で62.7%の企業がテレワークを実施している。東京オリンピックに向けて、何年も前から、テレワーク推進を行ってきたが、なかなか進まなかった。4月7日に、安倍晋三首相が、出社を7割から8割控えてほしいといったところ、右習えで一気に浸透した」

 経済産業省内でも、かねてからテレワークの推進を進めていたが、省内では「テレワークでは仕事にならない」といった声もあり、ルール化されていた毎月1回のテレワークの際にも、午前中は自宅でテレワークを行ない、午後からは出勤するといった「テレワーク実績の水増し」ともいえる状況が起きていた。また、月3日以上、テレワークを行なうと、逆に職務専念義務に問題があるとされ、秘書課の面接を受けなくてはならないというルールもあったという。

 だが、安倍首相の発令以降、大臣や局長も積極的にテレワークを採用。Skypeで会議を行なうようになり、「同じ省庁内にいても、Skypeで会議をするといったほどになり、出勤の意味が少なくなり、在宅勤務が増えた」という。「人命第一でという判断のもと、在宅勤務をするようにというトップの一声により、ルールなどの優先順位が一転し、急激な変革につながっている。いまは3日以上テレワークをしても、秘書課の面接は不要になっている。トップがなにを優先するかで、全員が必要と思っていた内規も不要になる」と述べた。

「多くの企業において、以前のビジネススキームでは事前に想定できなかった変化が起き、勤務や報酬、ルールを見直す企業が増え、その結果、社内規程や業務ルールの無駄を可視化する動きが出てくるだろう」

 ここでは、「情報サービス産業は二極化が加速する」とも指摘。大手SIerは大規模案件の受注残が継続するとしたほか、ゲームソフトが2020年4月には前年同月比280%と大きく成長したことを示しながら、「これは、在宅中心のライフスタイルに急激に傾いていることを示す事例である」とした。

捨てられない企業がDXを攻めあぐんでいる

 経済産業省では2019年7月に、DX推進指標を策定し、指標への到達度を自己診断できるようにしたが、300社の結果をまとめたところ、上位5%の企業と、それ以外を比べると、先行企業は、危機感や必要性を強く認識していることがかわったという。

「先行企業では、危機感が具体化されており、ディスラプションに対する危機感が強いという特徴もある。また、ビジョンを共有しているだけでなく、IT資産を評価した上で、価値創出に貢献していないシステムを廃棄している企業こそがDXができている。IT資産を診断したり、評価したりしていても、捨てられない企業がDXを攻めあぐんでいる」

DX先行企業の特徴

 さらに、「日本の企業のIT導入は、データの入れ物をカスタマイズするが、そこから取り出してちゃんと使っているのかどうかが疑問である。カスタマイズのコストは、データを取り出して、経営層が見るところにかけるべきである。これがDXを推進する上では重要である」とした。

 ここではカルビーの事例を紹介。「カルビーは、経営層が着目すべき指標として、仕掛在庫と店舗鮮度の2つに集中した。ポテトチップスも鮮度が大切である。大量発注する店では、最終的には鮮度が悪いポテトチップスを販売することになるが、少しずつ入庫すれば、鮮度が高いポテトチップスを販売できる。おいしいポテトチップスを販売している店舗は売上げが高いという結果が出ている」などと述べた。

 また、「データは鮮度が大事だと言われるが、データの劣化を心配している経営者は少ない」と指摘。「かつて収集した使い物にならないデータを、大事に使っていないだろうか」としたほか、「自分が持っているデータだけを使うといったようにデータのサイロ化も課題である。自分が見えているところだけのデータでは限界がある。夜、鍵を落とした際に、落とした場所とは違うのに、見やすい街灯の下を探しているようではいけない。自社製品を売るためには、自社が持っているデータに固執するのではなく、他社が持つデータも活用することが得策である」とした。

 最後に「DX推進の目的は、ダイナミックな変化への対応である。これからのゲームチェンジを見越して、ニューノーマル時代の勝者となるべく、DXを推進してほしい」と述べてセッションを締めた。

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