オーストラリアのAtlassianと米Slack Technologiesは2020年8月18日、両社SaaS間の機能連携を強化したと発表した。既存の製品連携を深化させるもので、両社製品を利用するユーザーの利便性を高める狙い。これまでの製品連携は成功しており、これを利用する月間アクティブユーザーが100万人に達していることも報告した。
両社は2018年以来提携関係にあり、プロジェクト管理ツール「Jira Cloud」、チームワークスペース「Confluence Cloud」、Gitコード管理「Bitbucket Cloud」、タスク管理「Trello」、運用チーム向け会話型チケット「Halp」などのAtlassianの製品と、Slackとの機能連携を可能にしてきた。Atlassianの共同創業者兼CEO、マイク・キャノンブルックス氏によると、「両社の製品連携を活用する月間アクティブユーザーは100万人」とのこと。Slack上でConfluence Cloudのリンクプレビュー利用件数は毎月50万件以上、Jiraの通知は毎月4200万件を上回っているという。
「(両社製品間の)連携は成功している。Slackから利用をスタートしてAtlassian製品を受け入れたり、その逆に、TrelloやConfluenceからスタートしてSlackを受け入れるというケースがたくさんある」(キャノンブルックス氏)
今回は提携をさらに強化し、Jira、Confluence、BitbucketなどのAtlassian製品をSlackのチャンネル、DMなど全般にわたって機能統合する。これにより、たとえばWebサイト構築プロジェクトがSlackに専用チャンネルを開設してやりとりをしながら、Jiraチケットを受け取ったり、Trelloのタスク進捗についての情報、Confluenceのコメントなどをリアルタイムで受け取り、アクションを起こすことができるようになるという。Slackを離れることなくAtlassianのツールを活用できることから、さらなる作業効率化が期待できる。
また、AtlassianのIT運用管理ツール「Opsgenie」との連携も実現した。運用管理に関するアラートを、Slackのチャンネル上で受け取るといったことが可能になるとしている。
両社ではさらに、アプリと統合レベルでの共同開発、プラットフォームレベルでのプロダクトデザインといった領域でも協業を進める計画だ。
SaaS連携の強化で「ベスト・オブ・ブリードのツール選択を支援」
この発表に合わせてオンライン対談したSlack 共同創業者兼CEOのスチュワート・バターフィールド氏とAtlassianのキャノンブルックス氏は、両社に共通するビジョンを語った。ソフトウェアの重要性が高まる中で、人々はさまざまななSaaSソフトウェアを適材適所で使う“ベスト・オブ・ブリード”の状況に移行しつつあるという。そのために必要なのが、異なるベンダーのSaaS間連携というわけだ。
「SlackとAtlassianの協業を通じて、顧客が2社の製品を様々な方法で使えるように支援している。SaaSベンダー間でこのような提携は今後もっと増えるだろう」(Atlassianのキャノンブルックス氏)
「ユーザーはさまざまなソフトウェアを使って仕事をしており、企業が管理するソフトウェアベンダーの数も増える。企業は選択肢を提供する必要がある」「Slack社内でも、多くの場合は1つのワークフローに5~6社のベンダー製品を利用している」(Slackのバターフィールド氏)
さらにバターフィールド氏は、SlackやAtlassianのようなSaaSベンダーは、アプリケーションやシステムから別のアプリケーションへと情報をプッシュしたり、境界をまたぐワークフローを実現するチャンスがあると続ける。こうしたベスト・オブ・ブリードのSaaS選択は「まだ早期段階」だが「風向きは“追い風”」であり、「(ベンダー各社が)連携に取り組むほど、ユーザーにとってツールは望ましいものになる」と述べた。
またキャノンブルックス氏は、今後、マシンによりあらゆる業務の自動化が進むことで、SaaS間の連携とオーケストレーションの機能がますます重要になると強調した。
なお今回、両社では提携強化に合わせて割引プログラムも発表している。