ガートナー ジャパンは8月19日、「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2020年」を発表した。
アナリストでバイスプレジデントのBrian Burkeは、「先進テクノロジとは本質的に破壊的なものであり、それらがもたらす競争力は、まだよく知られていないか、市場で証明されていません。ほとんどのテクノロジは、『生産性の安定期』に達するまでに5~10年以上かかるでしょう。しかし、本ハイプ・サイクルで取り上げたテクノロジの中には短期間で成熟するものもあるため、テクノロジ・イノベーションのリーダーは、特にその影響が革新的あるいは多大なものについて、先進テクノロジの機会を把握する必要があります」と述べる。
例えば新型コロナウイルス感染症のパンデミックに関する「ヘルス・パスポート」と「ソーシャル・ディスタンシング・テクノロジー」は過度な期待のピーク期の段階からハイプ・サイクルに初登場する稀有なケースであり、ヘルス・パスポートは市場浸透度が対象ユーザーの5%〜20%だが、中国とインドで何億もの利用者が存在する事から例外的に取り上げられたケースとなっている。また、いずれのテクノロジーも、2年未満で生産性の安定期に達すると見込まれている。
ガートナーは1700を超えるテクノロジーを分析。抽出した知見から、今後5〜10年にわたり高度な競争優位性をもたらす可能性の高い30の先進テクノロジーを以下の5つのトレンドとして簡潔にまとめ、提示している。
「デジタル・ミー」
ソーシャル・ディスタンシング・テクノロジーやヘルス・パスポート、物理空間とデジタル空間の両面において人を表現する個人のモデルを提供する「人のデジタル・ツイン」等、人をデジタルで表現する新たな機会が生まれている事に注目すべきとしている。
「コンポジット・アーキテクチャ」
アジャイルな組織となるためには、急速に変化するビジネスニーズに対応出来るコンポーザブル・エンタープライズやプライベート5G、組み込み型人工知能等のテクノロジーを注視すべきとしている。
「フォーマティブAI」
AIの境界線の探求を目指す企業は、状況の変化に対応して変化可能な先進的なAIと関連テクノロジー、AI拡張型設計・開発、アダプティブな機械学習や自己教師あり学習等を検討すべきとしている。
「アルゴリズムによる信頼」
責任ある権限による信頼モデルは、プライバシーとセキュリティーを確保するためにアルゴリズムによる信頼モデルに転換しつつあり、組織を顧客・従業員・パートナーの信頼を失うリスクとコストを回避するよう保証する上で役立つ。セキュア・アクセス・サービス・エッジ(SASE)、差分プライバシー、来歴の認証等が関連テクノロジーとして挙げられる。
「シリコンの先へ」
40年以上にわたりムーアの法則がIT業界を導き、テクノロジーがシリコンの物理的な限界に近付きつつあった中、新たな先端素材が更なるテクノロジーの加速と小型化を可能とする画期的な機会をもたらしている。検討すべきテクノロジーとして、DNAコンピューティング/ストレージ、生物分解性センサー、カーボンベースのトランジスタが挙げられる。