次世代の世界最高速スパコンに採用されるAMDのCPU/GPUと「Infinityアーキテクチャ」
“エクサスケール”スパコン/HPCを支えるAMD、ウェビナーで強みを語る
2020年08月04日 08時00分更新
米国の国立研究所が現在構築中の次世代スーパーコンピューター「Frontier」や「El Captian」では、AMDが提供するデータセンター向けx86 CPU「AMD EPYCシリーズ」やディープラーニング処理専用GPU「Radeon Instinctアクセラレーター」が採用されている。これらは“ExaFLOPS(エクサフロップス)”、つまり“1秒間に10億回の10億倍”以上の計算処理が行える「エクサスケールのスーパーコンピューター」として設計されている。
2020年7月16日に開催されたウェビナー「Enabling Success Today while Laying the Foundation for Future HPC Innovations」(主催:HPC Wire)では、AMDからCTOのマーク・ペーパーマスター氏、HPC担当コーポーレートVPのジョン・モリス氏が出席して、FrontierやEl Capitanに採用された背景にある“AMDの強み”をはじめ、一般企業にも利用が広がるHPC領域での将来戦略を語った。
AMDに対するHPCユーザーからの期待が高まっている理由
司会を務めたIntersect 360 Researchのアディソン・スネル氏はまず、HPCユーザーの間でAMDに対する期待が急速に高まっているという調査結果を紹介した。
Intersect 360 ResearchがHPCユーザーに対して行った意識調査によると、AMDのCPUに対して「HPC分野で将来性がある」と好意的に捉えている回答者は「78%」。4年前(2016年)の調査では36%にすぎなかった前向きな見方が、2倍以上に増えている。
その背景には、AMDの大きな路線転換があるという。AMD CTOのペーパーマスター氏はまず、AMDが過去5、6年間をかけてロードマップの修正を行い、それ以降、HPC分野に強くフォーカスした製品開発を進めてきたことを挙げる。
そもそもAMDがこうした路線転換を行ったのは、2010年代前半からHPC市場に変化が生じつつあったからだ。研究機関における計算科学やシミュレーションなど、旧来のHPCニーズだけでなく、たとえば一般企業におけるAI/機械学習といった新しいニーズも生まれている。ペーパーマスター氏は、現在では「あらゆる産業において」HPCやAI/機械学習の需要が生まれていると強調する。
「実際に(米国の)国立研究所や大学研究機関などが所有するスーパーコンピューターでも、商用利用が増えている。また(AI研究を行う非営利業界組織の)OpenAIが発表したデータによると、AI/機械学習分野におけるコンピューティングリソース需要は『2~3カ月ごとに2倍』というスピードで、指数関数的に増大している」(ペーパーマスター氏)
HPC担当VPのモリス氏もペーパーマスター氏の見解に同意し、HPCの高度な計算処理能力はいまや「どんな産業においても必要とされている」と語る。高速データベースからビッグデータ解析、コンテンツデリバリに至るまで、その用途も多彩になっている。
「現在では(冒頭に触れたような)エクサスケールの世界だけでなく、Fortune 2000企業、あるいはそれよりも小規模な企業においてもHPCが利用されている。それが、今日におけるビジネス競争力の源泉だからだ」(モリス氏)
HPCの世界では、コンピューティングリソースに対するデマンド拡大は止まることがない。だからこそ、AMDではR&Dの方針を「HPC分野でのコンピューティング能力拡大とスケーラビリティ向上に向けた基盤づくり」に切り替えたのだと、ペーパーマスター氏は説明する。
もうひとつ、HPC顧客の厳しい要求に応えることによって、AMDのテクノロジーがより洗練されていくことが期待できるという理由もあるという。HPC市場の顧客は要求レベルが最も高く、なおかつ顧客自身も実行するアプリケーションやコンピューターの構成要件を詳細まで理解している。「そうした顧客からの要求が、AMDアーキテクチャのさらなる最適化を促し、シリコン(CPUやGPU)開発のロードマップも加速させている」と、ペーパーマスター氏は証言する。