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アスキー的パソコン大解剖 第92回

いきなり小型PCの自作でも大丈夫、最近の自作はとてもお手軽!

Ryzen 3000XTシリーズではじめてのパソコン自作! (1/5)

2020年08月01日 11時00分更新

文● 林 佑樹(@necamax) 編集●北村/ASCII

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 パソコン自作は難しいのか? 2000年代初頭と比べた場合、とてもすごく超カンタンになっている。インシデントに至る要素がていねいに排除されてきたからだ。そのため、パーツの相性問題との遭遇率は下がり、マザーボードのシステムが急に吹っ飛んだりといったこともなく、規格や形状を合わせて組み合わせていくだけになっている。

 また各パーツについても、数値が大きい=性能が高い路線に統一されており、ASCII.jpに並ぶベンチマークの意味が分からなくてもパソコンを組むことが可能だ。本稿では、自作PCがよくわからない人向けに構成例を交えつつ、いまどきの自作PCについて解説しよう。

ソーシャルフィードによく流れてくるライトアップされたPC。パーツレベルで対応しており、ライトアップを考えていなくても光ってしまいがちなご時世だ。ソフトウェアもしくはハードウェアスイッチからオフにもできる

 もちろん、2020年現在ではBTOという選択肢もあり、自作PC同様に細かいカスタマイズができ、かつ組立をする必要はない。いわゆるパソコン自作は、パーツ選びから組立、OSのインストールまで自分の責任で行なうため、BTOと自作の違いは、自分が関与する工程数の違いという認識でもいいだろう。

 またコスト面でも特定条件下で違いがある。たとえば、フルタワーやミドルタワーと呼ばれる大きなケースを中心に同じ構成にした場合、BTOのほうが安くなりがち。とくにシンプルでミドルクラスの構成であるほど、それは顕著だ。

ワンポイントアドバイス
光るPC

 ライトアップ自体は昔から存在していたが、それはLANパーティーで目立つためだったと言われる。LANパーティーとは、みんなでPCを持ち寄りゲームをするなどして遊ぶこと。また一部メーカーが先行してライトアップ機能を採用しており、それに各社が追従し、気がついたら若い世代を中心に「ゲーミングPCは光るもの」になっていた。

 かつて自作PCは、普通にPCを購入するよりも安く済むと言われたが、2020年現在では限定的になっており、何かしらで「自作は安い」と聞いたことがあるのならば、まず忘れたほうがいい。ほとんどの場合で、自分が設定した要件を満たすものとしては「安い」だけなので、純粋な価格で見るとBTOのほうが安く済みがちだ。では、わざわざ自作PCをするメリットはなんだろうか。以下の要素が主だ。

  • 好きなパーツを選べる
  • ケースの選択肢が豊富
  • 見た目を好きに変更できる
  • アップグレードがしやすい
  • 条件次第でBTOより安くなる

 精神的な部分でいえば、自分で組み立てたことによる愛着度のアップも追加要素となるが、自分の好みや都合に合わせられるのがもっともな魅力になる。

気に入ったケースがなければ、ケースを自作してもいい。市販品を使わなかったり、改造したPCをMod PCと言う。どんな見た目でもパソコンとして動作していれば問題ない。自作PCの解釈は人それぞれなので、既製品にとらわれる必要はない

 小型ケースを使用して、かつビデオカードを搭載したゲーミング仕様の自作PCや、予算を削りに削った割り切り構成のPCなどになるほか、最新パーツへのアップデートも積極的に行なえるのもポイントだし、低予算でも段階的なアップデートで性能を強化していく路線もアリと自由度の高さがある。もちろん、高いベンチマークスコアを求めるという人もいて、オープンワールドゲーム的ともいえるだろう。

ワンポイントアドバイス
ベンチマーク

 性能の一定基準値。共通項目を実行することで定量化しやすくしたもので、数値が高い=性能が高いだけくらいの認識でいい。また組み上げたあとの動作確認用途もあるが、知識が身についてきたらスコアを気にするくらいでOK。自分が選んだパーツのパソコンが「サイツヨ」の精神のほうが256倍大事だ。

 BTO PCのラインナップは前述の通り、フルタワーかミドルタワーが多い。これは汎用的であり、もっとも需要があるからだ。また拡張性もあり、多くのカスタマイズに対応しやすいのもあるほか、組立作業のやりやすさもある。作業領域が広く、配線やパーツの取り付けも楽だ。ゆえに、はじめての自作PCの場合は、フルタワー、もしくはミドルタワーが通例。ただし、ケースが大きく、置き場がまずもっての課題になるし、尻込みしてしまう要素でもある。

 一方でゲーム配信などを見ると、コンパクトなゲーミングPCを見かけることがある。ミドルタワーよりも小さいケースを採用したものだ。拡張性は低くなるが、小さくて邪魔にならないのがポイント。また昔のようにあれこれパーツを内蔵する必要が減っており、USB接続できるアイテムが増えたため、最小限の構成でも十分に使えるPCを組める。

 ただケースが小型であるため、細かい作業が増えたり、パーツ同士の干渉があったりとすんなりいかない。そのため、ベテラン向けと言われるのだが、2020年現在の事情を見るに、そうでもなくなってきている。よって、次ページから紹介する3つの構成案のうちふたつは、小型ケースを採用したものにした。

小型ケースはデザイン性が高い製品が多く、見た目で欲しくなることが多い。好きなケースを選べるのが自作PCの醍醐味。PCに対して愛着が湧くので、結果的に長く使うことになる

Ryzen 3000XTシリーズを軸に組む

 2020年7月23日に発売されたばかりのCPU、Ryzen 3000XTシリーズを軸に今回のサンプル構成を見ていく。CPUが決まると自動的にマザーボードの候補が絞り込まれる仕組みで、Ryzen 3000XTシリーズを選んだ場合、AMDのチップセットX570を搭載したマザーボードが対象になる。X570以外のチップセットでも動作可能なるのは2020年後半の予定だ。

Ryzen XTシリーズ。従来のRyzenを改良したモデルで、より性能が良くなっている

 CPUはインテルとAMDの2社のラインナップから選ぶのに対して、マザーボードは展開するメーカー数が多く、種類も豊富だ。そのため、ビジュアルで惹かれたなら、そのマザーボードに搭載できるCPUを選ぶのもアリ。発売時期の関係で最新のRyzen 3000XTシリーズを推しているが、自作PCは前述の通り自由度の高さが大事であるため、別にインテル製CPUを選んでもかまわない。

発売されたのは、Ryzen 9 3900XT、Ryzen 7 3800XT、Ryzen 5 3600XTの3製品

 Ryzen 3000XTシリーズに触れておくと、2019年7月に登場したRyzen 3000シリーズの性能を強化したものだ。Ryzen 9 3900XT、Ryzen 7 3800XT、Ryzen 5 3600XTの3製品が投入される。スペックシートは以下の通りだが、これもすでに触れたように性能が高い=数値が高いになるが、ゲーム中心であればRyzen 5 3600XTで十分なので、とりあえずはRyzen 5 3600XTから考えていくといいだろう。

Ryzen 3000XTシリーズと、従来のRyzen 3000シリーズとのスペック比較

 Ryzen 3000XTシリーズは従来のRyzen 3000Xシリーズより、最大ブーストクロックがわずかに引き上げられている。つまり限界性能が高くなっているということだ。では、どれほど強化されているのか、CPUの演算速度を測るベンチマークソフト「CINEBENCH R20」のスコアーで比較してみた。

「CINEBENCH R20」のスコアー

 XTシリーズの効果はシングルスレッドスコアーの伸びに表われている。10ptsないし14ptsとわずかだがXシリーズよりXTシリーズのほうがスコアーが高い。比率にしてせいぜい2.6%と極めて小幅な増分だが、ベンチマークでその差を確認できた。

 XTシリーズとXシリーズの価格差は2000~4000円強。数千円も価格が上がっているのにわずか2.6%の性能アップと捉えるか、わずか数千円足すだけで2.6%も性能が上がると考えるか、評価は買い手次第といったところだろう。

 予算によっては、XTでもXでもないRyzen 3000シリーズを選ぶのもアリ。性能重視でいくか、予算に収めていきたいかで検討するといいだろう。ちなみに、Ryzen 3000シリーズ(XとXT含む)はX570だけでなくB550チップセットでも動作する。

Ryzen 5 3600XTのみ、AMD純正の空冷CPUクーラーが付属している。Ryzen 9 3900XTとRyzen 7 3800XTは、別途CPUクーラーを購入する必要がある。

ワンポイントアドバイス
欲しいときが買い時

 スマホと同様に電子製品は発表の瞬間から劣化が始まる。そのため、欲しいときが買い時のマインドを大事にしたい。その時点で自分にとって最良のパーツを選ぼう。身近に高い確率で「いまはタイミングが悪い」というおじさんがいるだろうが、無視していい。使うのは誰だ? 君だ!

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