2020年7月9日、有楽町駅と新橋駅の中間、JRガード下に「日比谷グルメゾン」が開業。山手線の内側には帝国ホテルや日比谷公園、、外側には銀座コリドー通りや花椿通りが延びていて、気軽に立ち寄れる注目スポットである。イタリアンバルや串焼き店などの6店舗があるが、ラーメン好きには、3店舗のラーメンが味わえる「ラーメンアベニュー」を見逃すわけにはいかない。
人気店「せたが屋」の前島司店主がプロデューサーを務める。ニューヨーク出店時に感じた街の雰囲気を味わってほしいとの事で、内装もニューヨークの街角をイメージしたものとの事。ガード下なので頻繁に電車が通るが、「ニューヨークの地下鉄みたいでしょ」と笑顔を見せた。
まずは、「ラーメンアベニュー」で食べられる3軒のラーメンを紹介します。
「せたが屋」のネクストブランドとして、環七沿いに2006年開店した「中華そば ふくもり」初の支店。「中華そば」「肉そば」「塩中華」「辛ネギ中華」などのラインアップ。アジ節をメインに、煮干しも強めた力強いスープが印象的。本店とは異なり、茹で時間の短い細麺を使用。濃厚なスープを力強い細麺でガッツリと堪能できる。
金沢市で2003年に創業した人気店「神仙」が、人気メニューの「味噌ラーメン」で出店。看板メニューは、濃厚に味付けした豚バラ肉を炙ってからのせたこの一杯。濃厚な豚骨スープに加賀味噌を使ったタレも負けずに、炙ったバラ肉からも油が流れて更なるこってり感をプラスしている。中太麺を啜ればそれらの味が立ち上がり、食べ進むごとに舌に旨みが乗っていく。ライスとの相性もよさそう。
豚バラ肉の代わりにチャーシューが乗った基本メニュー。こちらも濃厚な味付け。
福岡市で2005年に開業。両親もラーメン店を営む「ラーメン一家」で育ち、「博多ラーメンに新風を吹かせたい」という思いの元、熊本県人吉市の「好来」で修業。同店の代名詞とも呼ばれる「マー油」と濃厚な豚骨スープをあわせたのこのメニューが人気を集めた。イベント出店などはあったが、東京での店舗出店は初。細麺を啜るたびに、スープに絡むマー油の存在感が楽しめる。
シンプルな豚骨スープに絞った一杯も、もちろん濃厚。辛味を加えた「うま辛豚骨」もメニューにある。
集合施設では、「あっさり」と「こってり」をバランスよく配置するケースが多い。しかし、「ラーメンアベニュー」に出店している3店舗は「煮干」「味噌」「豚骨」の違いこそあれ、いずれも「濃厚」な味を提供。集合施設では濃厚なラーメンが人気を集めている事を実感している、前島さんらしいチョイスと言える。
ここで「ラーメン店集合施設」の歴史を振り返ってみたい。長い歴史を持つ「元祖さっぽろラーメン横丁」が有名だが、1994年に開業した「新横浜ラーメン博物館」が大きな人気を集めた。それを見てか、2003年~2004年の2年間で、全国に30ヵ所の集合施設が開館した。
一方で、急増した上に、定期的に店舗を入れ替える施設も多かったため、出店できる店舗が限界を越えてしまった。同じ店が各地の集合施設を渡り歩く現象もあって差別化が難しくなり、これまでに全国で50ヵ所の集合施設が閉鎖されている。
複数のラーメン店を集めるスタイルとして、「ラーメン横丁」や「ラー博」のように、独立した店舗が軒を並べる形が多く採用されている。その場合、来場客は複数ある店舗から食べるラーメン店を選択する事になる。
一方、「ラーメンアベニュー」は、ラーメン3軒と酒類販売ブースが並び、共通の客席を利用する「フードコートスタイル」になっている。複数人で来場してそれぞれに違うラーメンを頼んで、それらをシェアしながら食べる事も可能である。
その「フードコートスタイル」を更に楽しめるのが、ラーメン以外の豊富なメニュー。「ふくもり」では煮干しカレー・水餃子・ジャコ天などを用意。「神仙」では唐揚げ・ブリ竜田揚げなどの揚げ物、「博多新風」は鶏もも・手羽先・一口ぎょうざなどの焼き物を揃えているので、ガッツリ呑んでそれぞれの店のつまみを楽しみ、ラーメンで締める一連の流れを楽しめる。
銀座と日比谷に挟まれた場所ながら、気軽に飲めてガッツリ食べられる。ラーメンだけじゃない新名所として注目を集めるのではないだろうか。
山本剛志 Takeshi Yamamoto (ラーメン評論家)
2000年放送の「TVチャンピオンラーメン王選手権(テレビ東京系列)」で優勝したラーメン王。全国47都道府県の10000軒、15000杯を食破した経験に基づく的確な評論は唯一無二。ラーメン評論家として確固たる地位を確立した現在も年に600杯前後のラーメンを食べ続けている。
百麺人(https://ramen.walkerplus.com/hyakumenjin/)
本人Twitter @rawota
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