半年ほど前、区役所に出かけた。
ハンコを押した書類を提出すると、窓口の男性職員が「この印鑑、そろそろ買い換えるといいと思います」と言った。
見ると、木製のハンコの一部が欠けていた。
この出来事をきっかけに、ECサイトを閲覧し、近所のハンコ屋さんにも出かけた。
店に並んだ様々なハンコの中から筆者が手に取ったのは、チタン製だった。木製より高価だが、死ぬまで欠けてしまうことはなさそうだ。
少し迷ったためリアルの店舗では購入せず、ECサイトでチタン製のハンコを買った。総額で1万4000円ほどだったと思う。
チタンの質感がけっこう気に入っているが、この支出はまもなく無駄になりそうだ。
2020年6月から7月にかけて、官と民の両方の世界で、ハンコがなくなる流れが決定的になったからだ。
●内閣府と経済団体のハンコ見直し宣言
7月8日には政府と各経済団体が連名で、ハンコの見直しを宣言した。宣言のタイトルは、「『書面、押印、対面』を原則とした制度・慣行・意識の抜本的見直しに向けた共同宣言」と言う。
はんこ議連の会長を辞任したことで話題を呼んだ竹本直一IT・科学技術担当相、日本経済団体連合会(経団連)の中西宏明会長、新経済連盟の三木谷浩史代表理事らが宣言に名を連ねている。
宣言は、政府と経済団体の本気度の高さを感じさせる内容だ。
「書面主義、押印原則、対面主義を求める全ての行政手続の原則デジタル化に向けて、恒久的な制度的対応として、各府省に対し、年内に見直しの検討を行い法令・告示・通達等の改正を行うよう求める」
現在、行政機関に対するほとんどの申請で、行政機関の窓口に行って、ハンコを押した書面を職員に対面で渡すことが必要だった。しかし「年内」という期限付きの宣言が出たことで、こうした手続きは1〜2年で過去のものとなる可能性が出てきた。
Web上に一元化した窓口を設け、押印なしで各種手続きが完結するというのが、この宣言などで示された構想だ。
今後、各府省が進める見直し作業で、「書面、押印、対面」を原則とする手続きが、どれだけ「デジタル、ハンコレス」に置き換わるのだろうか。
●法的にもハンコはいらない
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