オンラインで開催となった今年のアップル年次開発者会議「WWDC20」。注目はなんといっても、MacのCPUをインテル製からアップル独自開発の「Apple Sillicon」に切り替えるという発表だろう。
ティム・クックCEOによれば、今後、2年をかけてプラットフォームを切り替えていくという。また、年内にもApple Sillicon搭載のMac製品を発売する計画だ。
Macのセルラー通信対応、外出先で高速で使い放題のネットに期待
今後、Apple Silliconを搭載することで、Macはどんな風に変わっていくのか。ちょっと早いが、あれこれ妄想してみたい。
Apple Silliconは、これまでアップルが培ってきたiPhoneやiPad向けのチップセットがベースとなっている。省電力設計にすぐれながらも、パワフルな処理能力が魅力だ。
個人的にまず期待しておきたいのが、Macのセルラー通信対応だ。4Gもしくは5Gに対応し、外出先でも、高速で使い放題のネットが体感できるようになれば最高だ。コロナ禍の影響で、出先でもオンラインの記者会見を取材する機会が増えてきた。また、モバイルでビデオ会議アプリに参加することも珍しくなくなった。5G対応のMacBookがあれば、出張先でも長時間のビデオ会議があっても安心なはずだ。
MacBookが5G通信に対応すれば、将来的にはNTTドコモやau、ソフトバンクのショップでもMacBookが買えるようになるかも知れない。
新しいMac向けOS「Big Sur」では、iPhoneやiPad用のアプリも動くようになるという。そこで、ちょっと疑問なのが、それらのアプリをどうやって操作するのか、という点だ。
トラックパッドやマウスなどで操作できるだろうが、やはりiPhone向けアプリであれば指、iPad向けアプリなら指に加えて、ペンでも操作したい。しかし、Big SurはmacOSである。
となると将来的に、iPhoneアプリやiPadアプリをできるように、MacBookでもタッチパネルやペンが使えるようになるのではないか。
これまでアップルは、MacBookのタッチパネル化を頑なに拒んできた。なぜなら、「ノートパソコンの画面を押すという行為は、安定性に欠けて使いづらい」という考えがあったという。果たして、この考えをアップルはBig Surで改めることになるのか、注目だ。
「セルラー通信が使えて、タッチやペンも使える」となると、iPad ProとMacBook Airのあたりの商品展開が、難しくなってくるのではないだろうか。
MacBook Airでセルラー通信が使え、タッチやペンが使えるとなれば、iPad Proの存在が危うくなる。どちらも、同じアップル開発のCPUが搭載し、使えるアプリも同じようなものであれば、ますます二つの製品の違いが見えなくなってくる。
実際のところ、ここ最近のiPad ProとMacBook Airあたりは悩ましい存在であった。iPad Proは、文字入力の反応もよく、最近はライブ変換とMagic Keyboardの組み合わせが心地よく、使い勝手はかなり向上していた。動画の編集などでもサクサクと動き、動画を書き出す際も実にスムーズだったりするのだ。
「いつでもどこでも通信できる」という点において、MacBook AirよりiPad Proの方が出番が多い印象すらある。
今後、MacBookがApple Silliconに対応していくことで、アップルとしてもこの辺りの製品ラインナップを整理してくるのではないか。
iPhoneやiPadで成功した「アプリ経済圏」をMacの世界に
今回、アップルがApple Silloconに取り組んだ背景にあるのは、iPhoneやiPadで成功した「アプリ経済圏」をMacの世界に拡大したというのが一つありそうだ。
iPhoneやiPadにはたくさんのアプリ開発が存在する。彼らがMac向けにアプリを供給するようになれば、Macの利便性も格段に向上する。iPhoneで使っていたアプリがiPad、さらにはMacBookで使えるようになれば、学生さんなどはiPhoneでアップル製品にデビューしつつ、iPad、さらにはMacBookを買う流れができるかも知れない。
アプリの経済圏をiPhone、iPadからMacに拡大できれば、結果として、アップル製品のユーザーを増やせるだろう。今回のApple Silliconへの取り組みは、アップルが大成功を収めているiPhone、iPadが抱えるユーザー層をMacに誘うための、一つの戦略と言えそうだ。
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