「App Clips」に見るリアル市場拡大の可能性
個人的に大きく可能性を感じるのが、iOS 14に導入される「App Clips」だ。
これは簡単に言えば、サイズが小さく機能の一部だけを持つアプリを短い時間でロードする仕組み。店舗でNFCやQRコードを使い、すばやく「ちょっとここで決済したい」「ちょっとこのサービスを使いたい」ときに呼び出せる。アプリストアまで行く手間を省くことで、実質的にアプリ利用とサービス利用の拡大を促進するのが狙いだ。
これは別に新しいものではなく、中国などでも「ミニアプリ」として広がっているものだ。一般的にはウェブ技術で構築するが、App Clipsはネイティブのアプリとして作る。要はアプリの一部機能を切り出したような形だ。サイズは10MB以下で、一般的なアプリと同様のセキュリティモデルで扱われる。
これをどう使うかは難しい。なぜなら、リアルのストアやECサイトなど、従来アプリを「ダウンロードしてから使ってもらう」業種での顧客導線を作り直す必要があるからだ。だが、周知が広がれば、街中でのアプリ利用拡大のきっかけになりうる。日本では「アプリによって生まれる経済圏」が、ゲームなどのデジタルコンテンツ課金やネットサービスの利用に偏っている部分がある。リアルな店舗をいかに便利にするのか、という意味では価値あるものであり、知恵を絞る価値がある。
ただ課題は、「iPhoneのみのもの」であり、Androidユーザー向けの施策を別途用意しないといけない、という店である。「iPhoneユーザーに利便性が高まればいい」と判断するか、それとも「半分のユーザーにしか使われないなら別の方法を」となるのか。そこは難しい選択肢を迫られそうだ。
この連載の記事
-
第25回
Apple
macOS Big Surレビュー「iPadOS化」とは言わせないmacOS独自の進化 -
第24回
Apple
秋まで待てない! watchOS 7の「睡眠」機能を先行体験レビュー -
第23回
Apple
Apple Watch「watchOS 7」パブリックベータを試した! 文字盤交換が楽しい! -
第22回
Apple
アップル「watchOS 7」パブリックベータ版を公開 -
第21回
Apple
アップルが「macOS Big Sur」のパブリックベータ版を公開 -
第20回
Apple
macOSに近付いていく? 「iPadOS 14」パブリックベータ・インプレッション -
第19回
iPhone
7月17日は「世界絵文字デー」iOS 14の新ミー文字と絵文字を先行プレビュー -
第18回
iPhone
iOS 14/iPadOS 14にパブリックベータが登場 広くインストール可に -
第17回
Apple
アップル新「マップ」の躍進、Googleマップと真逆のアプローチとは -
第16回
Apple
アップル独創アイデアに敬意「Apple Design Award」受賞者を発表 -
第15回
Apple
Apple Watch新機能「睡眠」こだわりをアップルのテクノロジーVPに聞いた - この連載の一覧へ