3歳児くんの保護者をしています盛田諒ですこんにちは。約1ヵ月半続いた緊急事態生活が終わりました。保育園なしで働くのは大変でしたが海や山のそばに住んでいるので遊びには困らず、都心に比べれば不安や心配は少なかったのではと思います。ピンチといえば子どもと近所で買い物しているときトイレに行きたくなり、どの店も感染予防を理由にトイレを利用禁止にしていたため、「ちょっとお父さん緊急事態だから」と100均でおもちゃを見ている子どもを抱えあげ、「緊急事態だめー!」と言われながら商店街を駆け抜けたことがありました。あれはかなりのピンチでした。
ほとんどの人が自分の家に閉じこめられた1ヵ月半は、人によって何が大変かということが全然違うということにあらためて気づかされた期間でもあったなと思います。人の大変さというのは、暮らしている場所や仕事の内容、家族や隣近所との関係、本人の身体や性格、好き嫌いの差によっても変わります。だからこそ「私ならそれは別に大変じゃないけどな」と思っても「お互い大変ですね」ということができるわけですが、その当たり前のことを忘れていたんだなと気づかされました。
私が大変だったのは、子どもに対していい顔をしてしまうこと。食事中テーブルに乗った子を叱るときも「コラ!」と言わず「テーブルは食べるところだから乗らないんですよ」と言いながら淡々と抱きおろします。寝かしつけのとき子どもに顔をガンガン蹴られても自分の顔ならいいかと「お〜?足が来たな〜?」と言うだけ。子どもと遊んでいるとき「飽きたなあ」と思ってもニコニコ遊び、「見て!」と言われたら「えーっ何なにそれー!」と反射的にリアクションをとっています。
これは親だからとかではなくそういう性格だから。「根気があるね」と言われることもありますが「不平不満を見せてはいけない」という強迫観念が強いだけ。「親なんだからいい顔しろ」とすごむ鬼の顔が自分の内外に向けられているだけで、むしろただの不寛容です。今回のように休みなしで子どもと遊んでいると体がどんどんストレスでパンパンになっていくわけですが、それでもどうしても素直になれないんですよね。たまったストレスを家族にぶつけてしまうこともあり、アタマをしびれさせて何も感じなくしようと酒をぐびぐび飲むようになってしまいました。
酒を飲んでいるとアタマの中から「うだうだ甘えてんじゃねーよバカ。要するにガキに恥ずかしい姿を見せたくないとかいいツラ見せたいってだけだろうが。いま世間では不安な中で訪問介護の仕事しながら自宅で育児と介護のダブルケアやってるような人がいるんだよ。お前はその人の前でも『大変だ』って言えんのか」と厳しい声が飛んできて「そんなこと言われたって自分が大変であることは変わらんし、このしょうもないやつが自分ってことも変わらないんだから仕方ないだろ」と情けなくごにょごにょ言い返したりすることもありました。何やってんだって感じですね。
この1ヵ月半、こうして自分が自分であるがゆえの大変さを抱えて過ごした人は自分以外にもきっといるんじゃないでしょうか。というか個人的にはいてほしいなあと思います。緊急事態生活が終わったからといって社会がすぐに元通りになることはなくしばらく個人的な生活を中心にした暮らしが続くことになるんだろうと思います。そんな中、自分と同じような大変さを抱えている人が世界のどこかにいると信じ、「お互い大変ですね」と思いながら、ええかっこしいの自分と向き合えたらなと思っているところです。お尻をおさえながら子どもの手を引き駅に駆け込んだ自分の姿を思うとええかっこしいも何もないんじゃないかって気もしますが、なんというかそんな気持ちです。
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ。3歳児くんの保護者です。Facebookでおたより募集中。
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