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時計デザインの基本文法を超えた「Eco-Drive Riiiver」デザイン

2020年05月22日 10時00分更新

文● 渋谷ヤスヒト 編集●飯島恵里子/ASCII

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2020年5月21日に発売された「Eco-Drive Riiiver」の第3弾となる新デザインモデル

 シチズン時計が2019年11月28日から発売している「Eco-Drive Riiiver(エコ・ドライブ リィイバー)は、時計の枠を超えた画期的な機能を持つアナログ針タイプのスマートウォッチだ。ファーストモデルは時計の枠を超えた「ライフハックツール」としての機能に加えて、斬新なデザインでも注目された。そして2020年5月21日に、その第3弾となる新モデルが発売された。

左からBZ7015-03E、BZ7014-06L、BZ7016-01X

 時計ジャーナリストとして、一部ファーストモデルと比較しながら、新しいモデルのデザインを読み解いてみたい。

1. アナログ針式時計のデザインの「基本文法」とは?

 ただその前に一応、時計デザインの基本について、確認をしておきたい。

 どんな工業製品にも基本の機能があり、その機能をしっかりと実現するための「デザインの基本文法」がある。現代の時計のデザインにも、もちろん基本文法がある。

 では、現代の時計に求められる基本の機能とは何だろうか。それはまず視認性。そして操作性。さらに審美性だ。

 視認性とはつまり、時刻の読み取りやすさのこと。時計の基本であり最大の機能は、正しい時刻を表示すること。だから大切なのは、ひと目見て即座に時刻がわかることだ。だから時計のデザインでは、どんな環境でも確実に時刻が読み取れる「視認性」を確保することがまず最初に求められる。

 アナログ針式の時計のデザインには、この「そんな環境でも確実に時刻が読み取れる」視認性を追求・確保するために、懐中時計に代わって腕時計が道具として普及し初めた70年以上も前、つまり1940年代から現在まで守られてきた、視認性を確保するための不動の「基本文法」がある。それは針とインデックスと文字盤の「基本文法」だ。それは具体的には、どのようなものだろうか。まずは、視認性に関する針のデザインの「基本文法」から話を始めよう。

 現代のアナログ針式の時計。その針はすべて「担う機能の違いに応じて大きさや形や色を変える」という基本文法に基づいてデザインされている。具体的には、もっとも重要な情報である「時」を表示する時針は短くて太い針に、次に重要な「分」を表示する分針はそれより長く細く、さらに「秒」を表示する秒針を分針よりさらに長く細く。これが針のデザインについての基本文法だ。

 しかもこの基本文法は、時計業界ばかりでなく、時計を着ける人の間でも長い年月の間に定着している、世界的な常識でもある。だからこの文法を守れば、針の数や種類がとても多いモデルを除けば、特別な説明をしなくてもそのままで、購入者が即座に時計の機能を理解して、すぐに使いこなすことができる。

 そして「時刻を知る道具」よりも「腕に着けるアクセサリー」であるハイジュエリーウォッチやアートウォッチ、また特別なデザインウォッチを除けば、現代のアナログ針式の時計のほぼすべてが、この文法をしっかりと守っている。

 では次に、インデックスのデザインの「基本文法」とは何だろうか。

 アナログ針式の時計では、文字盤のインデックスの視認性はとても重要だ。なぜならインデックスは、針の情報を読取るときの絶対的な基準になるものだから。この「基準」があいまいでは、針が示す時刻を正確に読み取ることはできない。だから、針と同様の高い視認性が求められる。

 ただ注意しなければいけない、針とは違うのは、針よりも控え目であること。バー(棒型)インデックスにせよアラビア数字インデックスにせよ、インデックスが針以上の存在を主張しないことだ。インデックスが、いちばん重要な情報、つまり現在時刻を示す針の視認性を妨げてしまっては、それでは本末転倒ということになる。

 だからインデックスは、針とは違う形や色で、針よりも控え目に、だがはっきりとその存在を主張するデザインでなければいけない。

 そして、時計の視認性に関して文字盤は、針とインデックスの存在を際立たせる「背景」の役割を果たしている。だから、あえて「針やインデックスを目立たせないデザイン」を追求するものでなければ、針ともインデックスとも違う、その2つを浮かび上がらせるテクスチャーや色であることが求められる。

 この3点が、視認性に関するアナログ針式時計のデザインの「基本文法」だ。

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