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松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析 第95回

アップルが10万円以下のMacBookを出す?

2020年05月05日 17時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII

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●なぜAシリーズ Macを作るのか

 Mac向けにAシリーズチップを採用することになるアップル。今度は別の側面から考えてみましょう。

 現在まで、アップルは自社設計のチップについて、次のように扱ってきました。

・ 毎年、最新版のiPhoneに新チップを採用する(例:A13 Bionic)
・ 過去にリリースされたチップをiPadに採用する(例:A10 FusionのiPad、A12 BionicのiPad Air・iPad mini)
・ 直近でリリースされたチップの強化版をiPad上位モデルに採用する(例:A12X BionicのiPad Pro)
・ 3年に1度、その時点で最高のiPhone向けチップを、廉価版iPhone SEに採用する(例:A9、A13 Bionic)
・ リリースから数年たったチップを、Apple TVやHomePodなどのホーム製品に採用する(例:A8、A10 Fusion)
・ Mac向けTシリーズのベースにする(例:A10 FusionとT2)

 iPhone向けに最新チップを開発・実装し、その資産を生かしてMacやアクセサリ以外の製品の心臓部として活用していくモデルを採用しています。このようにして、製品の性能を左右するチップの開発コストを、アップルのMac以外のビジネス全体で賄っているのです。

 ところが、A12 Bionicチップで7nmプロセスを採用したあたりから、変化が必要となってきました。微細化は同じダイのサイズにより多くのトランジスタを搭載し、それはつまり性能向上を意味します。

 もちろんダイを拡大させることで多くのトランジスタを採用でき、iPad Pro向けの強化版はその手法とみられますが、スマートフォンのサイズがこれ以上無闇に拡大しないことを考えれば、大きなプロセッサ化して性能向上を図ることにも限界があるのです。

 そして、微細化を進めるには、製造コストが上昇していきます。A14チップでは5nmプロセスへとコマを進めることが見込まれており、iPhoneの最上位モデルと同等か、オプション次第でさらに高い価格設定を見込むことができるMacへの搭載を通じて、そのコストを回収してこうという狙いが透けて見えます。

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