AppDynamics関連で3つの新製品/新機能、COVID-19対策の無償プログラムも提供へ
シスコ「AppDynamics」新製品発表、「ビジネスアプリこそが事業継続を支える」
2020年04月28日 07時00分更新
シスコシステムズは4月21日、同社のアプリケーションパフォーマンス管理(APM)ソフトウェア「Cisco AppDynamics」に関連するアップデートとして、3つの新製品/新機能リリースと国内テクニカルサポートセンターの開設、さらに新型コロナウイルス「COVID-19」対策支援として本番環境用ライセンスの無償貸与を発表した。
同社 代表執行役員社長のデイブ・ウェスト氏は「新型コロナウイルスの感染拡大が続く中にあって、デジタルによる事業継続はどの企業にとっても重要な課題。そして、事業継続においては『ビジネスアプリケーションこそがすべて』と言ってもいい。ユーザ、顧客、IT担当者などすべてのステークホルダーにエンドツーエンドの可視性を提供するAppDynamicsを、この機会に満を持して紹介できることを嬉しく思う」と語り、日本でも急激に需要が伸びているAppDynamicsの、さらなる市場拡大を狙う姿勢を見せている。
今回発表されたAppDynamicsアップデートの概要は以下のとおりだ。
●AppDynamicsに関連する新ソリューションとして「AppDynamics Experience Journey Map」「Cisco Intersight Workload Optimizer」「Cisco HyperFlex Application Platform」の3製品/機能をリリース
●国内パートナー向けにAppDynamicsの技術的な質問に日本語で迅速に回答する「AppDynamicsテクニカルサポートセンター」を開設。従来の英語による24時間365日サポートに加え、平日午前9時から午後5時まで日本語のサポート専属チームによる技術支援を4月21日より提供
●「AppDynamics COVID-19プログラム」として、AppDynamicsの本番環境用ライセンス(100エージェント)を2020年7月31日まで無償貸与
新たに発表された3つのAppDynamics関連ソリューションについて、それぞれの概要を示す。
■AppDynamics Experience Journey Map(2020年第2四半期中に提供開始予定)
アプリケーション内でユーザがたどる主要な動線を“カスタマージャーニー”として把握し、パフォーマンスのボトルネックや障害部位を直感的に認識できるAppDynamicsの新機能。
シスコシステムズ アップダイナミクス事業 カントリーマネージャーの内田雅彦氏は、AppDynamicsはAPM製品として市場から高い評価を受けているが、決して開発者だけがターゲットではなく「開発者、運用担当者、さらにはビジネス担当者までを対象にした“共通言語”として企業のデジタルトランスフォーメーションを推進する存在、いわば全社規模の“BizDevOps”を実現する存在」だと説明する。
そのなかで、今回リリースされたAppDynamics Experience Journey Mapは、とくにビジネスユーザのエクスペリエンスに訴求する機能となる。AppDynamicsがモニタリングしているアプリケーションにおいてユーザがどのように動線をたどっているかを自動で追跡し、カスタマージャーニーのチャートマップを生成、どのステップでボトルネックが発生しているのか、それがビジネスにどのような影響を与えているのかをリアルタイムに察知できる。
「動線の把握ができていない新規に投入されたアプリなどでとくに有効。顧客やビジネスユーザがトラブルに陥りやすい場所をいち早く把握し、アプリケーションパフォーマンスとビジネスパフォーマンス、ユーザエクスペリエンスの相関関係を、単一の画面で確認することができるようになる」(内田氏)
■Cisco Intersight Workload Optimizer(2020年第2四半期中に提供開始予定)
クラウドベースのインフラ管理製品「Cisco Intersight」の新機能で、IntersightとAppDynamicsをAPI経由でダイレクトに連携、マルチクラウド環境におけるインフラリソースをリアルタイムで自動最適化し、コスト削減を実現する。
シスコシステムズ 執行役員 データセンター/バーチャライゼーション事業担当の石田浩之氏は、インフラ視点のIntersightとアプリケーション視点のAppDynamicsが互いの相関データを共通のビューで確認し、コストやパフォーマンスの問題点を可視化/共有することで、インフラリソースとコストの最適化を同時に図ると説明する。
「Intersightはもともとデータセンターからパブリッククラウド、他社製品までを含めたマルチクラウド環境下のインフラリソースを、一貫したポリシーとAIによる分析/診断をもとにシンプルかつセキュアに管理する製品。AppDynamicsと連携することで、インフラに起因するアプリケーションパフォーマンスのリスクを排除し、ビジネスにおいてクリティカルなアプリケーションに優先的にリソースを割り当てるアクションも自動化できる」(石田氏)
加えて石田氏は、パブリッククラウドへのアプリケーション移行においても、この新機能によって適切なサイジングが可能となり、「移行プロジェクトにおける期間とリスクを最小化しやすくなる」と述べた。
■Cisco Hyperflex Application Platform(2020年第2四半期中に早期アクセス開始予定)
ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)製品の「Cisco HyperFlex」を、マルチクラウドでのコンテナ(Kubernetes)活用にフォーカスさせたアプリケーションプラットフォーム。パブリッククラウドからデータセンター、エッジに至るまで、あらゆる環境を横断するKubernetesプロビジョニング/運用をターンキーで実現する。
同製品は、Kubernetesアプリケーションをエンタープライズグレードで運用するために必要な3つのティア――ネイティブKubernetes(100%アップストリーム)の品質維持、ハードウェア/コンテナ/ハイパーバイザのリソース統合管理、IstioやRockなどオープンソースのKubernetesエコシステム――を、シングルプラットフォームで一貫してサポート。さらに、AppDynamicsおよびIntersightと組み合わせることで、アプリケーションからインフラスタックまでを一気通貫でリアルタイムに監視/最適化できる。
「2021年には全アプリケーションの40%近くがコンテナ化されると予測されているが、Kubernetes運用に長けたオープンソース人材は多くなく、またほとんどのコンテナは実際にはハイパーバイザ上で稼働しているため、ハイパーバイザのコストが代替されないという課題がある。HyperFlex Application Platformはこれらを単一のプラットフォームで解決するシンプルなソリューションであり、AppDynamics/Intersightと組み合わせることでマルチクラウドにおけるインフラからアプリケーションまでのフルスタック管理を可能にする」(石田氏)
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今回発表されたAppDynamicsのアップデートは、いずれも“アプリケーションをコアにした事業継続”を念頭に置いたものであり、さらにマルチクラウドでの運用が前提となっている。緊急時における事業継続を“ビジネスアプリケーションの最適な運用”という視点からサポートしつつ、パブリッククラウドやKubernetesといったモダンなインフラへの移行にも対応している点が特徴だ。
2008年に米サンフランシスコで創業したAppDynamicsは、クラウドの普及やデジタル化のニーズ拡大とともに急激に成長を遂げたユニコーン企業として知られていたが、2017年2月、IPO直前にシスコによる37億ドルもの高額での買収が発表され、多くのIT業界関係者を驚かせた。もっとも、その後のシスコにおけるAppDynamicsビジネスの成長は著しく、グローバルはもちろんのこと、国内でもすでに100社を超える企業が導入しており、対前年比で150%の成長を遂げているという。
急成長の理由には、デジタル化へのシフトが進むにしたがってアプリケーションへの注目度も高くなり、アプリケーションのパフォーマンスが事業継続に大きな影響を与える存在としてクローズアップされるようになったことが挙げられる。
「この緊急事態だからこそ、デジタル化への変革は“Nice to Have(あったほうがいいもの)”から“Must Have(なくてはならないもの)”になった。移動や対面が制限される状況下にあって、事業活動を継続するにはアプリケーションの活用が必須」と内田氏。新型コロナウイルスという緊急事態から多くの企業がデジタル化を“Must Have”とした事業継続に向き合わざるを得なくなった現在、アプリケーションの存在感がいちだんと大きくなることは間違いない。