「第2回 メドテックグランプリ神戸」レポート
「涙で乳がん検知」が受賞 医療改革を目指す企業を育成するコンテスト
2020年04月28日 09時00分更新
既成製剤の多様化につながるナノ化技術
株式会社ナノ・キューブ・ジャパン サントリー賞
水などに溶けにくい難溶性医薬を外力や熱を加えず、分解や変性を起こさずナノ化分散させる技術を開発。製剤の吸収が劇的に向上するので、たとえば服用薬を鼻の粘膜に塗るなどこれまでとは異なる使い方ができるようになり、注射剤、吸入剤、パップ剤など既成製剤の多様化にもつながる。マイクロリアクターでトン単位のナノ化処理が可能で、加速試験では50度で3ヵ月沈降しないことが証明されている。サントリーは受賞理由として、お茶などの飲料にも同技術が応用できるのではないかとコメントしている。
精密ゲノム編集技術、PODiR
Nexuspira株式会社 神戸医療産業都市賞
外来タンパク質を使わずにオリゴ核酸のみで、標的遺伝子の特定部位の欠失と挿入を行なう精密ゲノム編集技術、PODiR(Partly Overlapped Direct Repeat )システムを開発。先行技術が抱えるオフターゲットリスク、編集の選択性、デリバリーの課題を解決し、新たな医薬品の開発を目指す。
サンプル数が少なく治療薬の開発が難しい希少疾患治療の分野では、95%の疾患に治療薬が存在しない。だが一方で、世界の患者数は3億5000万人にものぼる。PODiRシステムは、遺伝子配列情報から医薬品のオーダーメイドが可能になり、根治できる可能性も高まるという。ゲノム創薬で一緒に研究開発ができるかもしれないという期待から神戸医療産業都市賞に選ばれ、来年秋に設立されるベンチャー支援施設の入居補助と海外で開催されるバイオピッチイベントへの招待が副賞として贈られた。
脳卒中専門の脳外科医が目指す 治療方法の限界突破
株式会社RAINBOW 荏原製作所賞/DNP(大日本印刷)賞
治療に限界があるとされ麻痺が残ってしまう脳梗塞患者に対し、患者本人の幹細胞を利用して脳内移植による新しい治療方法を開発する脳神経外科ベンチャー。創業者は脳卒中専門の脳外科医で、現在の治療に限界を感じていたことから、自家幹細胞製品「HUNS-001」の開発に着手した。
慢性期に効くのが特徴で、安全性に対する治験を始めている。自力歩行が不可能だった麻痺患者に自家幹細胞を移植し、7人中6人が自力歩行が可能になるという効果を出している。培養から手術までで包括的知的財産を取得することで、簡単に模倣できないシステムを作り出す。2026年の承認に向けて動いており、課題は培養コストの圧縮と事業体制づくりだとしている。
荏原製作所は受賞理由として、脳梗塞に効果があることと同社が開発しているCMP装置(IC製造工程における技術)を利用するなど何らかの形で医療分場に協力できるのではないかという点を挙げた。またDNPも実は再生医療にも取り組んでいることから、ぜひ実用化に協力したいとコメントしている。

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