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佐々木喜洋のポータブルオーディオトレンド 第18回

コロナ禍に揺れる世界、音楽シーンにも少しずつ変化が

2020年04月13日 14時35分更新

文● 佐々木喜洋 編集●ASCII

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クラウドを利用した、新たな試みも進む

 4月7日付の「New Statesman」誌の記事では、"ライブストリーミングはロックダウンの音楽産業を救えるか"として、もう少しビジネスの問題に突っ込んだ解説をしている。つまりこの新しいオンラインでの動きが持続的で収益に結び付くかということだ。

 上述したライブストリーミングの動きは、さまざまなミュージシャンが試みているが、有名ミュージシャンのように余裕があれば、チャリティーということでいい。しかし、貯金もなくライブツアーで稼がなければならないミュージシャンのリアルな事情はどうなのだろうか。

 アメリカのシンガーソングライターDent Mayは、インディーロックやニューウェーブなどマイナーな分野のミュージシャンだ。彼が同じスタジオでつながっている13人のミュージシャンたちと家で演奏した音楽を集めた"live stream rager"は、「Crowdcast」を使ってストリーミングがなされた。

Crowdcastのウェブサイト

 Crowdcastを選んだのは、それが課金可能なサイトで、最低5ドルは支払う必要がある(つまり無料から可能な「投げ銭」システムではない)システムだからだそうだ。ただ実際の視聴者はもっと課金してくれ、1350ドルを稼いだということだ。参加した人数で分ければ大した収益にならないかもしれないが、彼が言うには「ローカルライブで稼ぐ金くらいにはなる」ということだ。

 イギリスのバンドBig MoonのJules Jacksonは、ZoomかSkypeでの個人ギターレッスンを30分20ポンドで請け負ったところ、これが人気となり3週間先まで予約が埋まったそうだ。

 彼女は友人から「あんたなら3倍は取れるでしょと、言われたけれども他の人々のことを考えるとこれ以上は取れない」と語っている。

配信の売上をライブハウスに還元する試みも

 また、日本ではハイレゾ配信サイトのototoyがライブハウス支援のために「Save Our Place」を提案している。これはミュージシャンがototoyで音源配信して、その売り上げを特定のライブハウスに寄付するというシステムだ。

ototoyのSave Our Place

 ミュージシャンも、スタジオも、音楽産業のほかの人々も、ビジネスである限りは活動を続けるうえで収益を得ることが求められる。さまざまな試みが始まっているが、まだ混沌とした状況である。

 新型コロナ禍が1~2ヵ月で済めば、一時的なもので済むかもしれないが、「数ヵ月も続くものではない」と断言できる人もいない。いまが普通の状況となって、しばらく続いて行く可能性もあるだろう。1年も経てば、ワクチンが完成するだろうが、封鎖が続けば、世界の経済損失は計り知れない。新型コロナウィルスの影響が収束したとしても、従来と同じような世界に戻れるのかはわからない。

 いまわれわれが直面しているのは未曾有の出来事であり、あらゆる面においてそれを一人一人が意識して考えていかなければならないのだろう。

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