このページの本文へ

キヤノンITSの数理エンジンを転用、調査員の最適な割り当てや効率的な巡回ルートを自動決定

キヤノンMJら、東京海上日動と共に広域災害時の立会調査を効率化

2020年03月06日 11時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)とキヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は2020年3月6日、東京海上日動火災と共同で「立会最適マッチングシステム」を構築したことを発表した。キヤノンITSが物流業向けに展開する「RouteCreator」の数理エンジンを転用し、損害保険業務において広域災害発生時に行う立会調査対応を効率化するもの。東京海上日動では昨年(2019年)から段階的に同システムの利用を開始しており、台風19号の被災地における立会調査でも効果を上げたという。

キヤノンMJとキヤノンITS、東京海上日動が共同開発した「立会最適マッチングシステム(広域災害立会管理システム)」の概要

 近年、地震や台風、豪雨といった広域災害が多発するなかで、損害保険会社においては、いち早く契約顧客の損害状況を確認し、保険金支払いを迅速化することが求められるようになっている。この「損害状況の確認」プロセスに当たるのが、災害が発生した現地での立会調査対応だ。一般的には現地に臨時拠点を構え、複数の損害鑑定人(立会調査を行う専門担当者)が並行してその任務に当たる。

 この現場で課題となっていたのが、顧客の指定日時に担当者を割り当てる「立会のマッチング」だという。契約顧客の希望スケジュールだけでなく、調査対象の物件構造、担当者のスキルや経験といった情報も加味してマッチングを行う必要があるためだ。さらに、広域災害では1日に複数件の巡回調査を行うが、通行不可区間も発生する災害後の道路状況のなかで、効率的な移動ルートも判断しなければならない。

 今回のシステムでは、これまで“人手”と“紙ベース”に頼っていたこの立会のマッチング作業を自動化している。具体的には、スマートフォンサイトやコールセンターを通じて契約顧客から受け付けた予約情報と、東京海上日動が保有する対象物件の情報、担当者のスキル情報などをクラウド上で統合管理する。さらに、物流業界向けに輸配送計画の自動化ソリューションとして提供しているRouteCreatorの数理分析エンジンを転用し、上述の管理システムと組み合わせている。これにより、対象物件の調査に必要なスキルを持った担当者を、巡回ルートも加味しながら顧客の希望日時に効率良く割り当てられるという。

 東京海上日動では昨年から同システムの利用を段階的に開始しており、立会マッチングやルート立案の自動化/最適化を通じて立会調査件数を増やしている。また、契約者自身でスマートフォンサイトから予約できるようになったことから、広域災害発生時につながりにくくなるコールセンターを回避し、立会調査の日程確定が早期化することで、保険金支払いの迅速化につながるという。

 なおキヤノンMJによると、今回のシステムはクラウド上に構築されているため、突発的な大規模災害発生に対応できるスケーラビリティや地理的な冗長性にも優れているという。今後さらに幅広い損保会社での採用が見込めると考えており、サービス型での提供も含めて展開の拡大を検討していく方針。

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ