美環さん免許連載番外編
AT免許だった筆者が限定解除しました
1991年に誕生した普通自動車のAT限定免許。「そんな免許取るやついるのか?」というのはパワハラ級の昔話で、現在は教習所に通う7割以上がAT限定免許での教習を受けているとか。スポーツカーでもパドルシフトATが当たり前でMT車に乗る機会は滅多にありません。
筆者もその一人で、AT限定免許でした。ですが、昨今自動車メーカーからはMT設定のクルマが登場しはじめ、MT復権の兆しが。さらに「MTでなければ車の良さはワカラナイ」という原理主義にも似た話を聞くと「MTでなければダメなんだ……」という気持ちにも。
そんなある日、ニュルブルクリンクFF最速を叩き出したホンダ「シビック TYPE R」終売の話が聞こえてくるではありませんか(東京オートサロン2020で今夏に復活と発表されましたが……)。ならばそのステアリングを握るしかないと思い、AT限定免許解除に挑戦してきました! 今回は美環さんの免許連載の番外編になります。これから限定解除したい方は参考にしてください。
簡単と思ったら大間違いの「限定解除」
限定解除をするには、運転免許試験所での一発試験に合格するか、教習所に通って習得するのかのいずれかになります。一発試験で合格する自信がまるでない筆者は、教習所通学の道を選びました。というのも、一般的に教習所での運転免許取得には学科と実技という2種類を受講しなければなりませんが、限定解除は学科はなくて、4回の実技教習を受講し卒業試験に合格するだけ。
学科がないのは、限定解除が免許を持っている人、つまり交通ルールを理解している人だから。「たった4回の実技と試験だけならカンタンじゃないか」そう思うのは私だけではないハズ。
今回入校したのは、新宿駅からもっとも近い世田谷区にある上北沢自動車学校。入校時に必要となるのは運転免許証と印鑑、写真1枚(無くてもその場で撮影可)、そして教習料の4点で、気になる料金は6万2200円(税抜)。
さて、いきなりMT車での教習が始められるのかというとそうではなく、初回教習前に約1時間の「適性検査」を受けなければなりません。この検査を受けなければ実技教習の予約ができない、というのが昔の教習所と違うところ。そして受講は1日2コマまで可能なのは昔も今も変わらないものの、予約は1日1コマしかできないのは大きな違い。計算上、キャンセル待ちを活用すれば、入校と適性検査、受講2コマ×2日、卒業検定と、最短で4回教習所に通うだけで限定解除できるということになります。
教習は、すべて教習所内で行なわれます。1時限目はエンジンのかけ方と運転中の操作という車両の基本的な操作。2時限目はMT教習の鬼門である坂道発進とクランク、3時限目は方向変換と縦列駐車といったバックが絡むもの。そして4時限目に「みきわめ」という流れで、普段運転している者なら、AT車との違いはクラッチとギアの有無だけですから「楽勝!」と意気揚々の筆者。
ですが、現実はそんなに甘くなく。助手席に座る指導員から「乗車時に後方確認をしていない」「ハンドルの送り方がよくない」「目視確認を怠っている」というような指摘が次々に飛んでくるではありませんか。昔に比べたら指導員も優しくなったとはいえ、さすがにヘコみます。さらに「俺は毎日運転しているんじゃ!」という変な意識が加わるとイライラは頂点に。エンストなどミスを連発し、どんどん悪い方向へ。
昔はできていた「運転お作法」ですが、いつしか忘れていることを痛感。たとえば交差点を右折は、「ルームミラーで後方確認をしてから、ウインカーを点灯。3秒後から進路変更を開始し、ルームミラー、サイドミラー、そして目視確認をしてから停止線または曲がるポイントの30m手前ですべての動作を完了」となります。同じように踏切は一旦停止して渡った後に「窓を開けて音の確認をする」、バックする時は「窓から顔を出してちゃんと後ろを見る」必要が出てきます。ですが、これら普段からちゃんとやっているか? というと、寒いから窓を開けなかったり、バックカメラで後方確認を済ませたり……。
そんな調子ですから、3時限目の教習中「このままですと、卒業できませんよ」というお叱りを受けることに。というのも、限定解除の卒業検定は運転操作だけではなく、運転の作法が含まれているというではありませんか。言い換えるならAT限定解除は、普通の教習生が13時限かけて習得する作法を、わずか4回の教習でマスターしなければならない高難易度教習だったのです。ちなみに不合格の場合、 追加の技能教習と再検定を受けなければならず、その費用や約1万円……。
よって卒業検定と同じ手順を行なう4回目の教習は、コースを覚える必要はないものの「卒業試験では外周を時速30kmまで出して、時速40kmを超えると減点」「一時停止線の2m以内で停止、発着場では路肩に30㎝まで寄せなければならない」「大きく縁石に乗り上げたら検定中止」というポイントを頭に叩き込む必要に迫られました。技能的にはMT車を操作できるものの、お作法とポイントはもう混乱の極みです。
卒業試験は、仮免試験を受ける若者たちと一緒に受験。仮免試験や卒業試験は指導員のほか、後席にもう1名同席した状態で行なうのですが、時間にして10分のドライブの車内は緊張感に満ちたもの。悠久の時のように感じ、生きた心地はしませんでした。
なんとか一度もエンストすることなく終了。1時間後に合格という話をいただき、無事卒業です。翌日試験場に行き免許を更新し、シビック TYPE Rを運転する環境が整いました。
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