非常に頭のいいEcho Studioの音質調整機能
Echo Studioについては、米国本社でAudio Technologyを担当するフィリップ・ヒルメスディレクターが説明した。Echo Studioの特徴は、すでに紹介したように、ワンボディーでありながら、豊かな3D音響の再現ができる点にある。これは5つのスピーカーとDSP処理を組み合わせ、空間に合わせた音を自動調整することによって実現している。
外側と上方に設置したミッドレンジスピーカーは広い音場を提供する。指向性については、1基しかないツィーターを広めに、複数あるミッドレンジはせまめにしている。また、ツィーターは前方のみだが、壁面などの反射もうまく利用しながらステレオ感やサラウンド感が出せるよう工夫しているそうだ。
トレンドになりつつある、設置場所の環境に合わせた再生機能も取り入れている。再生音とマイクで収音したデータを比較、インパルス応答を調べることで、部屋の大きさや設置位置、壁面や天井の素材などに合った、適切な音が作れるようになる。さらに、機械学習の手法も用いながら、精度を高めているそうだ。Echo Studioは、周波数特性の調整だけでなく、DSP処理と組み合わせながら、音を出す方向を調整したり、最適な位相にする仕組みも持っているそうだ。
構成としては高域・中域・低域用にそれぞれD/Aコンバーターとアンプを独立して用意した3ウェイ3アンプ構成。ミッドレンジは300Hz~2.5kHzを担当、これを高域・低域用のユニットで補う。ヒルメス氏の話によると、ツィーターは60kHzまでの再生が可能なものを使用し、ウーファーは密閉型で正確な数値は示しにくいが、30Hz台の音も出ているのではないかとする。D/AコンバーターはTI製で、192kHz/24bitのPCMに対応しているという(DSDの再生には対応しない)。Echo Studioはワンボディーながら、なかなか充実した構成になっている。
従来のサラウンドシステムは、とかく大掛かりになりがちだったが、Echo Studioであれば、テレビ台などに置いてシンプルに使える点も特徴だ。上方にもスピーカーが付いているので、高さ方向にも広がりが出せる。Echo Studioでは、ドルビーアトモスやドルビーデジタルの音源を3.1.1chの信号にミックスダウンして再生する。360 Reality audioのソースは5.1.4chだが、これも同様に3.1.1chにミックスダウンして再生するという。
部屋の環境に合わせて音質を最適化する技術は、アップルのHomePodなども採用している注目の技術だが、ヒルメス氏はサラウンド技術で有名なAudyssy社の創業メンバーでもあるとのことで、そのノウハウが生かされているはずだ。Echo Studioでは後方からの音は感じにくいが、水平方向だけでなく、天井方向の反射も利用した垂直方向の広がりも重視しており、このサイズとは思えないほどパワフルな低域、そして音に包まれながら、歌手や楽器の位置が空間にピッタリと定位する感覚が得られる。
実際にサウンドを聞いてみたが、Amazon Music HDで配信中のビートルズ「Come Together」ではキックドラムの風圧感なども感じさせ非常に臨場感があった。また、ドルビーアトモスを始めとしたオブジェクトベースオーディオは、ボーカルや各楽器の位置をオブジェクトとして個別に決め、空間に自由に配置することが可能だ。こうした特徴を再現するにはこれまで、AVアンプとたくさんのスピーカーの組み合わせが必要だった。ワンボディーでも十分に音の動きや楽器と声の分離感が感じられるという点はスゴイのひとこと。
しかも2台を同時購入して、ステレオペアにしても5万円を切る価格というのだから、とてもお買い得だ。