2019年を振り返るのは少々早いが、通信業界の関心事が5Gなら、そのインフラとなる機器を供給するファーウェイにまつわるニュースはやはり重要度が高かったように思う。そのファーウェイ、日本での存在感を高めていることを数字でアピールした。同社が日本経済にもたらす効果は2018年の1年間で、実に7660億円とのことだ。
創業者の娘の逮捕から早くも1年が経過
“ファーウェイ問題”が大きな話題になったのは、1年前、創業者である任正非氏の娘で同社CFOを務める孟晩舟氏がカナダで逮捕されたことからだろう。容疑は制裁国であるイランとの取引、それに企業秘密の窃盗など。その孟氏は、カナダで来年に予定している米国への強制送還についての聴講会をいまだ待っている状態だ。
ファーウェイ排除を呼びかける米政府の主な根拠は、同社の通信インフラを利用すると中国政府に盗聴される可能性があるというもの。同盟国に同調を呼びかける米政府のやり方に対し、ファーウェイは比較的冷静な対応をしてきた。
その際たるものが、2月の「Mobile World Cogress 2019」での、輪番会長を務める郭平氏のスピーチだろう。MWCは欧州や中東、アジアからの参加者が多いこともあり、追い風もあった。それでもファーウェイが見出しを飾らない日はないような時期であり、プレッシャーは相当なものだったはず。
そのステージで郭氏は、「(ファーウェイは)通信事業者のデータを所有していない」「政治家ではなく技術の専門家が安全性について判断すべき」と述べた。「PRISM(米政府による監視プログラム)」を揶揄するなどの場面もあったが、語り口は冷静。郭氏が語り終えると拍手も起きた。
GDPへの貢献の年平均成長率は製造業平均の15倍
ファーウェイの技術と品質、コストは、通信事業者には魅力だ。だが、それだけではない。ファーウェイが事業展開することは、その地域、そして世界の経済に好影響を与えている。これが、最近のファーウェイのキャンペーンだ。
11月21日に、ファーウェイが都内で開催した記者向けの説明会は「ファーウェイの日本市場への経済的効果」についてだった。中国からは代表取締役会長の梁華氏が来日し、特別スピーチとして竹中平蔵氏がわずか5分ではあるがステージに立った。
2018年の1年で7660億円という日本への経済効果は、独立調査機関の英Oxford Eonomicsの調査によるものだ。その規模の比較は難しいが、Oxford Eonomicsの在日代表、長井滋人氏は、同社の国内GDPへの貢献での成長率である年平均24%(2014~2018年)について、「参考までに、製造業全般で同じような計算をしてGDPの貢献を割り出すと、2014年から2018年に年平均1.6%しか増えていない」とのこと。
そのほかの数字としては、雇用は4万6000人、税収は2080億円などが上がった。詳しくはこちらにレポートがあるので参照されたい(https://www-file.huawei.com/-/media/corporate/local-site/jp/pdf/theeconomicimpactofhuaweiinjapan_nov2019.pdf?la=ja)。
こうした経済効果をアピールするファーウェイのキャンペーンは日本で3ヵ所目。ファーウェイは英国、欧州でも、Oxford Economicsと組んで同様の趣旨のレポートを作成している。
ちなみに欧州版では、2018年のGDPに129億ユーロ(約1兆5500億円)の貢献を、雇用では17万人近くをもたらしている。2014年から2018年の間の年平均成長率は、経済貢献で19%、雇用は13%成長してきたという。ずいぶん前に同社がドイツ・ミュンヘンに構えるリサーチセンターを訪問した際に、一緒だったオランダの記者がつぶやいたのが、以下のような内容だ。「欧州の技術企業はこの規模の研究者を雇えない。ありがたい存在だよ」。
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